THE MANZAI20014 決勝グループC第二組
崩壊感漂う混戦のグループB、そして、ワイルドカードに選ばれた謎キャラのサイコクラッシャーアタック。
グループC一組目。
どよめく会場に現れた実力派あ~りんを佐々木っていうな、は怒濤の理数系漫才で、漫才の新しいカタチを示し、会場は別種の、緊張感に近い興奮へと導かれた。
ここで登場は、高くはない知名度を覆し前評判一位 となり、一気に今大会のダークホースにまで昇りつめた冬虫夏草の登場である。
冬虫夏草 (ワタナベエンターテインメント)
人見公(37)ボケ担当
丈縞みつる(36)ツッコミ担当
BGM
丈縞「はいどうも、冬虫夏草です、よろしくお願いします、今日も頑張っていかなあかんなあ思いますけども」
人見「はいはい」
丈縞「僕ね、今まで実は内緒にしててんけど」
人見「なんや」
丈縞「仕事でちょいちょい地方に行きますやんか」
人見「そんで」
丈縞「そんとき実はこっそり行ってる所がありまして」
人見「そういえばどっか抜け出してることあるなあ」
丈縞「道の駅ってご存知ですか」
人見「地方地方で特産物何かを取り扱ってるお店やなあ。お前そんなところに行ってんのか」
丈縞「好きなんですよ道の駅。この前岡山に行った時も一回抜け出して行ってきてん」
人見「あんときか。小一時間くらいしか無かったんちゃうかったっけ」
丈縞「ちょっと中毒になっててん」
人見「執念やな。ほんでなんやディクシーで行くんかいな」
丈縞「なんやねんディクシーって」
人見「お前アタマ大丈夫か?36にもなってディクシーも知らへんのかいな」
丈縞「お前の言うそのディクシー言うんは確定的ではないけども、それは移動手段に使うもんかいな?」
人見「そうや!お前やっぱわざとやったな」
丈縞「いやいや、ワザとちゃうよ~。ちゃうけども俺が知ってるんは若干言い回しが違うねん、お前が言うてんのはもしかしてタクシーのことやないか」
人見「・・・・・・ぷは~、笑わせてんのか、ディクシーをタクシ~やと」
丈縞「ちゃうんか・・・オレ、自分の記憶に自身のうなってきたわ」
人見「まあええ、まあええ。ある意味おんなじようなもんやから。そうそう、こん前の岡山で俺も実は道の駅に行ったんやったわ」
丈縞「知らん知らん、お前は見てへんぞ」
人見「あ、思い出したわ、あんとき2週連続で岡山ちゃうかった?」
丈縞「なんとなくしか覚えてへん・・・ちゃうかった気もするけど」
人見「しゃあないしゃあない、あんとき黙ってたけど移動俺ディクシーやったからな」
丈縞「ディクシーは岡山だけのもんか?それとも全国にあるもんなんか」
人見「道の駅とおなじや~、全国走っとるがな、ていうかお前の脳、重症やで」
丈縞「もしかしてこれは、めちゃめちゃ恥ずかしい話しかもわからへんけども・・・俺、まったくわからへんねん。ちょっと、教えてくれへんかなあ」
人見「お前言うとくけど、今の歳になってディクシーの説明せなアカンのって、今の歳でおマルでウンコすんのと同じくらいの知的レベルやからな」
丈縞「恐わっ。もし相手がお前ちゃうかったら俺一生恥にまみれなあかんかったやん。相方のお前やから、おまる程度のこの場の恥は耐えたるわ。聞かぬは一生の恥やからな。そんかわりお前、誰にもいうなよ」
人見「お前の名誉やなく俺自身の名誉のため死んでも口外できへんいうねん」
丈縞「うわあ、ガチのやつやないかい」
人見「ディクシーいうたらなあ・・・ぷは~すまんちょっと困難やなあ」
丈縞「何がそんなにおもろいんかさっぱりわからんぞ」
人見「逆の立場にたったらすぐわかるっちゅうねん、俺が今やな、真顔やのに裸でおむつひとつしか履いてへんかったらどやねん」
丈縞「スマン、めっちゃおもろいけど、イコールめちゃめちゃ自分が忌まわしい・・・」
人見「せやろ!まあそう落ち込むなや、俺が教えたるからそしたらお前は、おまる卒業や」
丈縞「頼むでえホンマ」
人見「まあ簡単にいうたらやな、街を歩いとったらしょっちゅう見かけるやつや、ディクシーの助手席んとこに空車のランプがついてたらやね、手を挙げてへ~い、ディクシ~いうんがまあ一般的やね、そして乗り込むねん」
丈縞「俺は今現在、めちゃめちゃ弱者やねん、強うつっこんでいくことは何ひとつできへんねん。恐る恐るきくけども、それ、タクシーちゃうねんよね」
人見「ぷは~、何回笑わすねん、漫才の最中に俺に向かって天丼すんなや!確かにタクシーもへ~いタクシ~いうて止めて乗り込むけれども、それは根本的に別の話しやで」
丈縞「俺にはその違いがようわからんねんて」
人見「まあ、しゃあないかなあ、ビルも真上から眺めてしまうと地面と同じように見えるからなあ」
丈縞「うわあ!なんやわからんけど・・・全く原因はわからんねんけど、今のビルのくだりで俺、脳みそに電撃走ったで」
人見「ディクシーの説明にタクシーを使うんははっきりいうてタブーやねんけど、まあええわ、今脳天に電撃走ってんねんやろ、要約すればそれが入口や。言葉はいらん」
丈縞「一瞬目の前の奥行が高所から見下ろす地面のように恐怖感とともに感知されてん。めっちゃ怖かったで」
人見「まあいうたらおたふく風邪や風疹も、成人してかかったら命に関わってくるからなあ」
丈縞「なんとなく理解できてきたわ、ほんなら一個お願いがあんねんけど、ディクシーとタクシーの違いを、横に並べて教えてくれへん?今一歩確信にいたらんねん」
人見「お前何回言わすんや!全くの別もんやって!タブーやねんから絶対あかんで!今がギリギリや」
丈縞「なんか、必死やな」
人見「まあええわ、お前レーザービームと取説手渡されて、血に飢えた凶暴な興奮状態のライオン目の前におったらやな、取説の方にいくか?」
丈縞「手当たり次第にレバーを握るよ。わかる、ようわかるで」
人見「そういうことや」
丈縞「わかったがな、タクシーとは極限まで言わんようにするわ」
人見「頼みますよ。ならええこと思いついたわ。実を言うと俺、芸人になる前一番憧れてたんはお笑いともうひとつディクシー運転手やってん、ほんで今、漫才中やろ、せやから俺がディクシーの運転手やるからやね、お前がそこへ乗り込んで来る客の役をせえや」
丈縞「それ、ええやん」
人見「ならいくで、ブーーーン」
丈縞「へ~い、ディクシ~、バタン」
人見「うち、タクシーですよ、ブーーーン」
丈縞「今タクシー言うた!どういうことやねん、禁じてたお前が言うてるやないか」
人見「お前これお笑いやぞ!平和ボケはあかんで!好んでタブーに斬り込んで行くくらいのアグレッシブな笑いやないと今どき誰にも振り返られへんで」
丈縞「そういう意味やったんかいな、それはスマンかった、カタブツ過ぎたわ」
人見「ブーーーン、キーー」
丈縞「へ~い言う前に止まりよった」
人見「予約されてた岩村様ですかねえ?」
丈縞「いえ、違いますけど」
人見「さっきからここぐるぐるしてるんですけどねえ、一向に現れないんですわ」
丈縞「へえ、いつから待ってはるんですか~?」
人見「・・・・・・」
丈縞「すいませ~ん、なんや返事せえへんくなったぞ、あの~、よかったら僕に譲ってくれませんかねえ」
人見「・・・・・・」
丈縞「その方をいつから待ってはるんですか~」
人見「君さっきから危ないよ!」
丈縞「うわっ、びっくりしたなあ、危ないって何がですのん?」
人見「ボクがさっきからぐるぐるしてるんだから、危ないよ入ってきちゃ」
丈縞「どういうことやねん、あんたここでぐるぐるしてるんかいな」
人見「道端のネコみたいにぺっちゃんこになったら嫌でしょ」
丈縞「そら嫌に決まってますよ、でもこんなんでぺっちゃんこなる~」
人見「あんた危ない人だね、ひょっとして電撃ネットワークのひとでしょ」
丈縞「確かに業界としてはカブる部分も無くはないけどもやね、俺個人ではそんなつもりはないで。それはそうと、いつからまってはるんですか」
人見「あ~ボクかい?一ヶ月前から」
丈縞「何やってはんねん!もう諦めんかい!」
人見「な~に言ってんのさ、コッチはディクシーだよ!まあいいや」
丈縞「ようわからんねん。なんで一ヶ月も待ってんねん。そんなことよりも、今急いでるんで、ここ、他にディクシーって通ってますかね~」
人見「岡山には滅多に通っていないよ~、ボクがたまたまたま現れただけだからね~」
丈縞「たま一個多いですよ。ほんならボク行きたいとこあるんで乗せて行って欲しいんですけど」
人見「なんか面白そうだね~、いいよ。予約されてた岩村様ですかねえ?」
丈縞「違いますけど」
人見「予約されてた岩村様ですかねえ?」
丈縞「・・・だから違いますって」
人見「乗してあげへんよ~、予約されてた岩村様ですかねえ?」
丈縞「はい、そうですけども」
人見「お待たせしました、どうぞお乗りください」
丈縞「どういうことやねん、岩村じゃなかったら乗せてくれへんのかいな」
人見「岩村様」
丈縞「・・・」
人見「締め出しますよ岩村様」
丈縞「は~い、なんですか~」
人見「岩村ディクシーへようこそ」
丈縞「え、ええ」
人見「当ディクシーは他社と若干システムに違いがありますけど、ご利用されたことございますか?」
丈縞「いえ、実はボク、ディクシー自体が初めてでして」
人見「・・・やっぱり勘が当たったわ、おもろいやつおったで~」
丈縞「おい!」
人見「はい、どうかなされましたか!」
丈縞「何やねん白々しいぞ!コッチはこの歳になって初のディクシーに訳のわからんコンプレックスをこじらせとんねん。客に向かってその言い草はないやろ!」
人見「あの~、岩村様、さっきボクが申し上げたんは、ディクシー業界お決まりのあいさつでございますけど」
丈縞「墓穴掘ったわー!」
人見「慣れれば違和感はなくなりますよ、イチゲンさんにとってディクシーは普通の社会とは若干違うとこ多いですからね」
丈縞「そやねん、正直面食らっとるわ」
人見「で、どちらへ?」
丈縞「道の駅に行きたいんですけど」
人見「だから、どちらへ?」
丈縞「何やねん、道の駅言うとるやろ」
人見「どちらですか!」
丈縞「ちょっと一旦停止や!人見」
人見「何やねんイキナリ現実を放りこんで、今ディクシー中やで」
丈縞「俺にはそのディクシーに導かれる特殊な光の道筋がイマイチ伝わってけえへんねん」
人見「それは徐々にやで。今教えられるがままにせえ!それが近道やから」
丈縞「わかったわ、ほな、戻るで」
人見「丈縞さん、丈縞さん!」
丈縞「お前はよディクシーに戻らんかい!俺は岩村やったんちゃうんかい」
人見「ああ、ようやく戻りましたね、ビックリしますわ、言うとくけど、ディクシーから、そうやすやすと現実のほうへ帰らんといたほうがいいですよ。たいへん危険ですんで」
丈縞「どういうことや!人見も戻ってたやん!」
人見「人見って、もしかして、丈縞さんの現実の隣にいる人ですか?」
丈縞「そうや!ディクシーやっとる、お前のことや!」
人見「ふはははは、やっぱ、イチゲンさんは、おもしろいなあ」
丈縞「わからんで、どういうことや」
人見「ボクはずーっとディクシーの運転してますよ」
丈縞「人見、おかしなたったんか?」
人見「言うとくけどボクの名前は岩村です」
丈縞「えっ!」
人見「ディクシーの運転手は大体一週間ぶっ続けで仕事してますからね、ボクはボクでしかない。たまたま丈縞さんの隣にいるんが、ボクによう似た人なんでしょう、ボクは人見さんちゃいますよ」
丈縞「わからん、わからへん!」
人見「まあ混乱してても目的には行かれへんわ、ボクに受身になってもらって始めてディクシーの乗客になれる言うもんですね」
丈縞「ならあまり深く考えんように流れに乗ってみますわ」
人見「どちらまで?」
丈縞「これが難関やねん、どう答えたらいいかわからへんわ」
人見「どちらまでですか?」
丈縞「道の駅に行きたいんですけど」
人見「だからどちらですか?」
丈縞「道の駅や!」
人見「岩村様!」
丈縞「はい!」
人見「ここはディクシーですから、ちゃんと道の駅の方へ向かってください、というべきです」
丈縞「わからへん!何が間違いで何が正解やねん!」
人見「ブーーーン」
丈縞「まあええわ、とりあえず運転手も運転し始めたことやし」
人見「岩村様!」
丈縞「あんたも岩村やけどね」
人見「岩村様!」
丈縞「はいはいなんでしょう」
人見「ちゃんと確認せんかったから、今さらですけど。目的地は道の駅ですよね」
丈縞「そうですけど」
人見「それやったら、今ここ右に曲がったほうが早いですけど」
丈縞「あかんあかん!ここ、崖道やで!転落してまうやんけ!」
人見「だいぶ早いですけど」
丈縞「何でですの?死んでまうやないですか!」
人見「ディクシーに乗った意味ないよねーそれ」
丈縞「いや死んだら意味ないやん!」
人見「ぷはーーー、面白ろ!」
丈縞「何がオモロイねん」
人見「まあ、だいぶ早い言うよりもかなり早い、ですけどね」
丈縞「なら仮に、ここ右に曲がらんかったらどん位ちゃうんですか?」
人見「10世紀は変わりますね」
丈縞「ちょい、待て待てー。一旦止まってくれ」
人見「止まりはしないよー。迷ってんのなら一回ぐるぐるして、待ってあげるからさ。ところで岩村様、右は崖だっていって危ながってたけど、まっすぐ行く方がよほど危険ですよ」
丈縞「なんでやねんな。まっすぐやったらちゃんとした道が続いてるやん」
人見「まだ、ディクシーの眺めに慣れてないようですね、言語道断右に曲がろうキーーー」
丈縞「うわあああ、あ」
人見「ブーーーン、キーーー。着いたでしょ」
丈縞「わからんで!なんで落ちひんかった、なんで一瞬にして目的地についた、なんでなんでーー」
人見「目的地フェビウス県に着きました」
丈縞「どこやねんそこ!そんなとこに頼んだつもりないぞ!」
人見「おかしいな、ディクシーに乗って岡山の道の駅っつったらフェビウス県に着けば間違いないけどなあ」
丈縞「何を言うてるんや、あ。よかったー。なんや、ちゃんと道の駅ついたやん、いくらですか?」
人見「2000円ですね」
丈縞「ほら、やっぱあん時と同じくらいや。なら2000円」
人見「ほなおおきに。ブーーーン」
丈縞「行きよったで・・・」
人見「丈縞、おい丈縞!」
丈縞「はっ人見か?」
人見「帰って来よったな、ほんでどうやったか、ディクシーは」
丈縞「何か変やったけど、正直ディクシーとタクシーの決定的な違いはわからへんかったわ」
人見「そうかもしれんな。蝶と蛾みたいなもんで、道義上の違いは正直あらへんわ、俺も最初あんなん言うたけど、今はディクシー業界もタクシー業界もサービスが重なり合って輪郭があらへんようになってるからな!違いのわからん人にとってはディクシーをタクシーや思ってて降りても気づかんこともあるらしいからね」
丈縞「ということはディクシー業界がタクシー業界に近づいてきてるいうことかいな」
人見「俺らからするとそうかもな」
丈縞「それや!その言い回しがようわからんねん」
人見「いずれわかる日が来るで。今回もディクシーに乗れたことやしね。あー、最後に言わなアカンことあったわ」
丈縞「何やねん」
人見「岡山でディクシーに乗ってたら最後フェビウス県に連れて行かれたやろ」
丈縞「それや!何やねんなフェビウス県って、どこ?」
人見「まあ、岡山は・・・フェビウスやねん」
丈縞「説明になってへんわ」
人見「ほんで、一回ディクシー乗ってもうたら、もう、現実には戻られへんで」
丈縞「えっ?」
人見「あんまり重く捉えんなって、現実との違いなんて全くわからへんから、今までの人生と、ずーーっといっしょ。ほならここでやめさしてもらいますわ」
BGM
矢部「何やねんこれ、血の気引いたわ」
岡村「ホラーや。審査員の感想を聞いてみましょう、大竹まことさん」
大竹「今まで見た漫才で一番コワかったね。稲川さんの話しより怖いよ、面白さじゃなくてコワさ。怪談グランプリにしてもう優勝でいいんじゃないの?」
矢部「それはあきませんよ!大竹さん。コメントありがとうございました。つづいてきよし師匠」
西川「ホンマいうとおり、よう出来た怪談ですわ。コワかったです、本気で」
岡村「見事に皆さん、コワいしか言いませんでしたねえ。さあ血の気の引いたまま第三組いきましょう」