第十二話「働く女性に理解のある男性は――たいそうおモテになるでしょうね」
「どうしてオムレツが血の滴るレバーのような色をしているのかと――莉於は小一時間ばかりあなたを問いつめたい気分です」
悠の誘拐騒動が終わり、事後処理に奔走していた翌々日の朝――莉於はペントハウスのキッチンで、新米メイドが作った朝食に厳しい評価を下していた。
「トマトケチャップは使いませんの?」
フリルがたっぷりと付いたメイド服を着たエリカが、くいっと可愛らしく小首を傾げる。
大鳥財閥から勘当された彼女は、昨日から悠のペントハウスで一緒に暮らすことになったのだ。
「まさかとは思いますが、卵の中に混ぜたのですか?」
「とんでもない――既製品のケチャップを使うだなんて当たり前のこといたしませんわ。ちゃんとホールトマトを一缶まるごと潰して入れましたの」
「…………」
莉於は無表情のまま絶句した。
まさかこれは大鳥エリカの精神攻撃?
動揺している――この私が?
「よく、形になりましたね、このオムレツではない別の何かは」
冷静さを取り戻せ。メイドの矜恃を忘れるな――莉於は精一杯の理性を働かせ、辛抱強く問い質す。
「ええ、火を通してもなかなか固まらなかったのでゼラチンパウダーを入れましたの。見栄えは少々アレですが、ちゃんと形にはなっていますでしょう?」
「いまハッキリしました。断じてこれはオムレツではありません!」
ガシャン、と身を乗り出してオムレツ(?)の乗った皿に莉於は掴みかかった。
「ちょっと何を――まさかお捨てになるつもり!?」
「当然です。こんな食品サンプルにも劣るまがい物、悠様の前に出すわけにはいきません!」
「なんですって――そもそも朝食を作ってみろとのオーダーは貴女が言ったことではなくて!?」
「莉於が愚かでした。もしかしたらと淡い期待を寄せたのがそもそもの間違いだったのです。形だけは綺麗な猫目型になっているのが微妙にムカつきます」
「ぽろっと本音が出てましてよ、せめて一口だけでも食べてから判断してくださいな!」
「こんなデスクリーチャー、食べたところでどうせ――」
スプーンでひとすくい、莉於はすぐさまはき出すつもりで口に入れた。
「ん、んん?」
「どうですの?」
甚だ不本意だが――不味くはなかった。
むしろこれは冷やせば美味いのでは――と莉於は思った。
オムレツに入れようとしていた挽肉がトマトの酸味でさっぱりと味付けされている。弾力のあるゼラチンが卵の風味と合わさりつつ絶妙な食感を出している。要するに神の悪戯か悪魔の奇跡か、トマトと挽肉のオムレツ風煮こごり――のような料理になっているのだった。
「小すっぱメイド一号、ちなみに料理の経験は?」
「誰がこすっぱですか。――当然ありません。セレブたる者は厨房に立つものではありませんもの。幼少の頃から現在に至るまで調理実習の時間はティータイムと決めていますの。というかそもそもどうして私がメイドで、しかも貴女なんかの部下なんですの!?」
納得いきませんわ、と文句を垂れるエリカ。
断じて認めたくはないが、こいつはまさか料理の天才なのか――
どんなに調理の知識はなくとも、己の勘とセンスのみで、食べられるものをこさえてしまうという。
「大鳥エリカ――恐ろしい子」
「はい? 何かおっしゃいまして?」
――褒めるような言葉は間違っても口にできず、莉於はそっと赤いオムレツにラップをして冷蔵庫にしまうのだった。
「働かざる者食うべからずです大鳥エリカ。不満もあるでしょうが貴女は『悠様の専属メイド』になったのです。他の誰でもない『悠様だけの女』になったと思えば労働意欲が湧いてくるのではありませんか?」
「悠様の女――私が悠様の所有物……」
エリカは一瞬、へらっとふしだらな顔をした。セレブにあるまじき表情筋の緩さだった。
だがすぐさま顔を引き締めると、今度は唇を尖らせて莉於を憮然と見つめる。
「ふん。悠様の専属メイドなら目の前に越えられない壁があるのを忘れるところでしたわ。ぬか喜びさせておいて、腹の中で私をバカにするおつもりなんでしょう。いいご趣味ですわねメイド長様」
「そんなこと――しません。莉於はあくまでメイドですので」
エリカはすうっと半眼になると口の端を釣り上げた。
「へえ、メイド長様は、私が一つ屋根の下なのをいいことに悠様を誘惑しても一切気にしないというのですね?」
「もちろん、この家のメイドとして規律や規範は守ってもらいますが、貴女の恋愛にまで口を出すつもりはありません」
「そうですか、わかりました。ではでは私、早速悠様を起こしに行ってきます。よろしいですわね、メイド長様?」
「まったく問題ありません。ただし――」
新たな朝食を作るため莉於が文化包丁を手にする。ごくごく普通の包丁のはずなのに、莉於が持った途端、血に濡れたランボーナイフのように見えた。
「常識的で理性的な行動が貴女の命を繋ぎます。あくまで中学生らしい恋愛を心がけてください」
「お、おーきーどーきー、ですわ」
背中に冷たい汗をかきながらギクシャクと厨房を出て行くエリカ。莉於はふう、と息を吐いた。
「旦那様はああ言っていましたが、いまさらどうしてそんなことができましょう」
メイドではなく、女として――
無理だ、と莉於は即座に首を振った。
エリカと頬を張り合いながら告白した気持ちは紛れもない真実。
悠の側に居続けるために犠牲にしてきたものがあった。
いまさらどうして、かつてあったはずの自分を取り戻せるというのか。
そも、悠の気持ちを優先するなら、莉於の想いは邪魔以外の何ものでもない。
かと言って大鳥エリカのような極端な覚悟もない――
どっちつかずの自分。このような思考に陥っていること自体迷っている証拠だった。
ダンっ――気がつけば大根もろともまな板が真っ二つになっていた。
「……安物はいけませんね。人間国宝が削りだした青森ヒバのまな板を取り寄せましょう」
パキン、と今度は包丁が根本から折れた。
「長年使っていたから金属疲労でしょう。関の刀匠に特注しますか」
ガダンッ――シンク台がまな板の真下から裂けていた。
「なんてことでしょう。ドイツ製のシステムキッチンを導入します」
認めよう。莉於は今朝から――正確にはトモエの言葉を聞いたときから動揺していた。
あの言葉には希望と絶望が混在していた。嬉しい反面、悲しさも押し寄せてきた。
メイドとして、少女として。それはまさにいまのエリカのような立場だ。
大鳥という力を失いながらもエリカはむしろ生き生きとしている。
立場に縛られず、ただただ自分の気持ちに従って素直に行動できるようになったからだ。
「羨ましくなんかありません。莉於はメイドです。いまさらどうして自分の気持ちを出せましょうか。あり得ません。あり得ないのです」
どこから取り出したのか、本物のランボーナイフでまな板をざくざくと削っていく莉於。
千切りなった木くずをナイフの腹でひょいとすくい、煮立った鍋の中に放り込んでいく。
大根のつもりで手ふきんまでスライスし始めたところで、悠の部屋のほうからエリカの悲鳴が上がった。
「何事ですか、大鳥エリカ!?」
「ひいい、何で刃こぼれしたランボーナイフ持ってますのおおお!?」
ナイフの刃先をエリカに突き出しながら莉於は構わずに問うた。
「そんなことはどうでもいいのです、悠様の部屋で無様で豚のような悲鳴を上げたその理由を述べなさい!」
「こ、この状況を見れば一目瞭然でしょう!」
「な――これは!?」
「ふわあ……あれ、莉於? エリカさん?」
ぽけぽけとした寝起きの悠である。
乱れたパジャマから鎖骨の浮いた細い肩が露出している。
それだけならいつもの悠だ。何の問題もない。
だが今朝の悠にはとんでもないアクセントが付加されていた。
「失礼します悠様」
「莉於?」
つかつかと歩み寄った莉於が、両手の五指を悠の頭に突き立てた。丁寧に、それでいて素早く頭皮を調べていく。
「なになに、どうしたの莉於ってば。くすぐったいよ。ていうかおはようふたりともー」
ニコニコと、無駄に愛らしい笑顔を振りまく悠。
エリカは顔を逸らして肩を震わせ、莉於はやれやれと肩をすくめた。
「どうやら無事なようですね。悠様からのものではないようです」
「悠様、落ち着いてこちらをご覧になってくださいな」
淑女のたしなみとばかりにエリカがコンパクトを取り出す。
鏡を向けられた悠は「わっ」と悲鳴を上げた。
悠の頭は血に濡れて真っ赤になっていたのだ。
「なななな、何これ、どうしちゃったの僕!?」
「ご心配なく。悠様のものではありません。犯人はこいつです」
莉於がシベリアのブリザード地獄にも勝る目つきでベッドを見下ろした。
悠の脇っちょで鼻血の海に沈む野球バカが幸せそうに高いびきをかいてた。
「十志郎? あ、そっか。昨夜は僕、十志郎と一晩中――」
「一晩中……、なんでしょう悠様?」
「何でそこでナイフを構えるの!? ゲーム、ゲームしてたの! 十志郎が眠れないっていうから!」
「悠様、先ほどのご様子は、遊び疲れてそのまま寝落ち、などという生やさしい状態ではありませんでしたわ」
エリカが見たものは、十志郎の腕枕で眠る悠の姿。それだけなら眼福なのだが、ふたりで血の海を遊泳していてはホラーなだけだった。
「ん――あれ、もう朝飯か?」
シックスパックの腹をぼりぼりと掻きながら、十志郎がむくりと起きあがった。
「うおお、何だ何だ……身体が超だりぃぞ。まるでニンジャ・ウォーリアの全コースをクリアしたときのような倦怠感が残ってやがる」
「え、十志郎、アメリカ版のSASUKEに出たことあるの!?」
「ああ、チームメイトに誘われてな。半分お遊びみたいなもんだったが、何とかクリアできたぜ」
「すごいなー、ねえねえ、それってテレビで放送されたのかな、YouTubeで僕も見られる?」
「そこまでにしてください」
ふたりとも血だらけ――特に十志郎は鼻から下がドロドロの有様なのだ。というかいい加減に気付けとばかり、エリカは十志郎に手鏡を向けた。
「うおお、なんじゃこりゃあ――なんじゃこりゃあ!」
「何で二回言いましたの。マカロニ?」
「エリカさん、そこはジーパンだよ」
「あらやだ。私としたことが……」
淑女にあるまじき間違い。エリカは頬を赤くしてチラ目で熱っぽい視線を悠に送った。
「はいはいはい、話が進まないのでそこまでにしてください。大鳥エリカ、悠様を湯殿に。シャワーを浴びさせてください。大至急です」
「了解しましたメイド長様。ささ悠様、エリカが背中を流してさしあげます……はあはあ」
「うわー、十志郎のでカピカピのごわごわだ。髪にまでベットリついてる」
「悠様、いまの台詞もう一度お願いできませんこと?」
そこはかとない不安を感じる莉於だったが、いまはエリカに任せるしかないのだった。
部屋に残されたのは莉於と鼻血まみれの十志郎。
寝起きと出血でほげら、としている十志郎に莉於は無造作に距離を詰めた。
「――ッ、うわわッ!」
その途端、十志郎はバッタのように跳び上がりベッドの端っこへと逃げた。
「十志郎――様?」
「ああ、いやすまねえ。なにやら身体が勝手に」
「ふむ」
莉於はランボーナイフを投擲した。
「うおおおおッ!?」
十志郎は素晴らしい反射神経でナイフを躱した。だがそれは誘導で、避けた先には莉於が待ちかまえていた。
「うぇるかむ」
「ひいいいいッ、離せ真咲、後生善処するから離してくれ!」
「この世の借りはあの世ではなく現世で返すものです。借りっぱなしで天寿は全うできませんよ十志郎様」
まともに組み合ったところで力では十志郎に敵わない。だが莉於は巧みに動きをコントロールして十志郎を決して逃がさない。
「動悸息切れ、発汗とじんま疹。まさか十志郎様?」
「そうだよ、そうなんだよ! 女が恐いんだよぉ!」
パっと手を離す莉於。十志郎は部屋の隅まですっころぶような勢いで逃げた。そして頭を抱えてガタガタと震え始めるのだった。
「お労しや。まさかこのような厄災が身近な方に降りかかるとは。十志郎様、心からお悔やみ申し上げます」
悄然とした莉於の謝罪に十志郎は絶叫した。
「ふっざけんな! 誰のせいだと思ってるんだ!」
「はて、誰のせいでしょう」
悪びれもせず、莉於は眼をぱちくりとさせた。きょとん顔の真咲は可愛い――などと思ったのは内緒だ。
「お、おま――おまえが俺を生け贄にするから! 俺があのときどんだけ恐い思いをしたと!」
それは一昨日、豊葦原女学院で男の身体に飢えた女の子たちに十志郎が揉みくちゃにされたときのことだ。さながら十志郎は食虫植物に絡め取られ、内部で少しずつ咀嚼されていく羽虫の気分を味わったことだろう。
「情けない。あの状況は殿方にとってまさに両手に花。普段からおもてになる十志郎様のこと、女の子の扱いも手慣れたものと思っておりましたのに」
「ひとを女好きみたいに言うんじゃねえ! 言っただろう、俺はおまえが好きなんだ! おまえ以外の女になんか、俺はこれっぽっちも興味はねえんだ!」
「十志郎様」
「ひいいいッ!」
莉於が近づいただけでこの有り様である。十志郎はイレギュラーバウンドしたピッチャーライナーのように部屋中を転げ回った。
「じゅーしろーさまー」
某地上最強の生物よろしく、両手を掲げジリジリと距離を詰める莉於。
「やめ、やめて――って、絶対楽しんでるだろおまえ!」
「何を言うのですか、メイドである前に莉於もひとりの女。あんなに男らしい告白をされては、多少は心を打たれてしまいます」
「ほ、本当か。それってどれくらいだ?」
「水のひとしずく――くらいでしょうか」
「少な!」
「炭酸カルシウムも積もれば鍾乳石になります。水滴だけが板に穴を穿つのです。水のひとしずくを甘く見てはいけません」
「それってどっちも何百年ってかかるじゃん! 脈なしじゃん!」
「寝起きで大量出血なのにテンション高めですね。さすがは脳筋。少しでも心配した莉於が愚かでした」
なんだかもうふんだり蹴ったりだった。
「もーなんとでも言ってくれ……」
十志郎は打ち上げられた魚みたいに寝転がり、そのまま動かなくなるのだった。
「さて、本題に入りましょうか。悠様の抱き心地はいかがでしたか?」
「よかったよ。ふにゃふにゃのぽちゃぽちゃで、まろんまろんと甘い香りが――あっ」
「ほう……やはり寝付けないなどとは大嘘で、最初から悠様の身体だけが目的だったのですね」
莉於は床深くにまで突き刺さったナイフを引き抜くと、切っ先を向けるようにゆらりと半身に構えた。
「ままま待て、俺は決してやましいことはしていない。悠にイタズラなんてこれっぽちもしてないぞ!」
「悠様を抱きしめながら鼻血を流していた男の言葉など信じられません。女性が恐いなどといいながら、実は男色ディーノに走ったのではないのですか?」
「ディーノは関係ないだろ! 俺はゲイでもレスラーでもねえ!」
「そうですね、十志郎様は空気の抜けたヨシヒコのほうですね」
「おまえ、本当は俺のこと大嫌いだろ?」
「とんでもない。悠様の大切なご友人をどうして莉於が嫌いになれましょう」
表情筋を微動だにせずにそんなことを言う莉於からは、やっぱり冷たい印象しかない。
こんな目にあっても好きな女には振り向いてもらえず、そもそも女の子が恐くなっちまうなんて――十志郎は泣き出したい気分になるのだった。
「なあ、思ったんだけど――ちょっと変なこと質問していいか?」
「唐突になんでしょうか。まさか悠様の精通の有無のことですか」
「違うわ! そのネタはもういい!」
十志郎は袖口でぐしぐしと顔を拭く。乾燥した鼻血はなかなか落ちない。まあいっか、と続ける。
「悠ってさ――本当に男だよな?」
「何故、そう思うのですか?」
何をバカなことを。
そう一笑に付すことをせず、莉於は素早く鋼鉄の仮面をかぶり直した。
「いや、これは前々からずーっと思っていたことなんだが、悠って体格も女みたいだし――その、うまく言えないけどよ」
長い前置きをしながら、十志郎は必死に言葉を探しているようだった。
表情にこそ出さないが――莉於は固唾を呑んで続きを待った。
「なんつーか、俺といるときは弟みたいなんだが、ちょっとでも離れると、たとえばクラスの女子やなんかと並べて見てみると、本当に女の子っぽいって言うか……」
雌雄共鳴体である悠は十志郎といるときは紛れもなく男の子で、十志郎のいないところではその殆どを女の子の身体で過ごしている。
正鵠を射た十志郎の指摘に、莉於は顔には出さず目を見張った。
身体を動かすこと以外、頭脳労働などは並外れて苦手なはずなのに、恐るべき感の鋭さだった。
「悠様は紛れも無く男性です。本人もまたそうあろうと願い、努力をしています。そもそも莉於が近づいただけで拒否反応を示す今の十志郎様が一晩中、女性と寝所を同じくして正気を保てるものでしょうか」
「う――確かにそれを言われると辛いんだが。でもなー、悠が女の子だったとしても、多分俺は平気だと思うんだよなあ」
十志郎はしばらく考える素振りをしてから「うん」と大きく頷いた。
「あいつはなんか特別なんだ。例えば――あくまで例えばの話なんだけど、俺とおまえが結婚してさ」
「…………」
「そんな嫌そうな顔するなよ。あくまで例えなんだからよ。本気で傷つくだろ」
「例えば――ですよね?」
「そうだよ! いい加減泣くぞこんちくしょー!」
大きい身体で十志郎はだだをこねる。莉於はますます鬱陶しそうな顔をした。
「あまねく三千大千世界を探したところであり得ない設定でしょうが、莉於と十志郎様が仮に夫婦だったとしてなんでしょう?」
「仮に夫婦だったとして、それでもおまえだったら悠のことを最優先にしそうで、俺も悠だったらいいかなーって許しちまいそうで、ああもうとにかく――あいつは俺たちにとってなんかそんな感じの奴なんだよってこと!」
「十志郎様」
呟く莉於はそっと十志郎に歩み寄った。
「女性が恐いとは悲しいですね。いまの莉於、十志郎様になら接吻のひとつくらいならするのもやぶさかではない気分ですのに」
衝撃の告白だった。
唐突になにを――などと疑問を呈する前に、好きな女の子の唇に十志郎の全神経は注がれた。所詮は脳筋エロ中学生だった。
「マ、マジでか――!?」
「それどころか学校をさぼってふたりで海岸デートなんかもしてみたいですね」
「超青春じゃん!」
「なんなら、十志郎様がお褒めくださったメイド服姿に猫耳までつけて、語尾はずっと『にゃん』をつけてご奉仕までしましょう」
「マニアック最高!」
「まあ全部ウソなんですが」
「女こえええええええええええええ!」
十志郎の瞳から再び光が失われた。
そのまま壁に向かい何事かをブツブツと何事かを呟き始める。
莉於は唇を歪めて、そんな十志郎を心底楽しそうに眺めるのだった。




