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異世界鉄道株式会社  作者: 白波
第三十二章
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二百二駅目 実験線の土地探し(前編)

 マーガレットが目覚めてからしばらく。

 朝食を食べ終えた誠斗たちの姿は誠斗が泊まっていた部屋にあった。


 部屋の中心部には宿屋の主人に貸してもらったツリーム周辺の地図があり、誠斗たちはそれを囲んで作戦会議を始めていた。


「まずツリームの周辺には広い平原が広がっているわ。ただし、そこには農地にされている場所も少なくはない……そこで、私たちが狙うのは農地と農地の間の空白地帯、もしくは長い間、農地として使われていない場所。農地が多い分、土地の問題やらなんやらでそういった土地がある程度存在しているはずよ」

「……なるほど。確かにそういうところならある程度、土地が取得しやすいだろうけれど……でも、都合よくある程度の長さと幅があるような土地があるものかな?」

「まぁそれがなかったら、さらにその外郭に広がる平原ね。最初からそこを狙ってもいいのかも知れないけれど、将来的にシャルロからシャラまでの間を結ぶ計画1号線の一部になることを考えると、なるべく既存の町に近い方がいいんじゃないかしら」


 マーガレットがいうことはもっともだと言えるだろう。確かになにもない平原を通したときの方が土地の取得は容易かもしれないが、もし仮に開業時にツリーム駅を設けようとしたときに、駅と市街地が近い方がいいに決まっている。正直な話、一番いいのは町の中心部に駅を持ってくることなのだが、実験線の時点でそれをするのは難しいし、仮に本開業となったところで、今の町の中心部に線路を持ってこれる場所などかなり限られてくるだろう。


 だが、仮にそうだとしても町の中心部と駅の場所は近いにこしたことはない。

 駅の中心部と町の中心部を馬車鉄道なり、乗り合い馬車なりで繋げばいいという考え方もあるかもしれないが、それをすると、どうしても乗り換えが発生してしまう。それが面倒だと思われた時点で幾分かの機会を喪失してしまっていると言えるだろう。


 そんな中でマーガレットが提案した農地と農地の間の空白地帯を狙うというのはかなり魅力的だと言えるかもしれない。

 農地があるということは、そこは人々の生活圏内であり、実験をしていれば、少なからずその周辺で農業を生業としている人の目に入るだろう。


 そうなれば、良くも悪くも鉄道という存在を人々にアピールすることができる。そういった意味でも、マーガレットの案はベストだということができるかもしれない。


「うん。ボクとしてはマーガレットの案で行きたいと思うけれど、二人はどう?」


 そこまで考えたところで、残る二人にこの案の是非を投げる。


「私はいいと思いますよーそんな都合のいい土地があればでーすーけーれーどー」

「私もいいと思うわ。というか、それ以上の案は出せなさそうだし」


 賛成一と条件付き賛成一といったところだろうか。いずれにしても、オリーブがいうことはもっともなので、そこを問題視する必要はないだろう。


「よし。それじゃあ、早速出発しようか」


 とりあえず、方向が決まったと判断し、誠斗が立ち上がる。


「そうね。まぁ行きましょうか。これ以上は考えるよりも、動いた方がいいでしょうし」


 それに続くような形でマーガレットが立ち上がる。


「早く行こ!」


 次にノノンが立ち上がる。


「さぁてぇ行きましょうかー」


 最後にオリーブがのんびりとした声をあげながら立ち上がると、誠斗たちは部屋を出てツリームの周辺に広がる農地へと向かった。




 *




 ツリームの周辺に広がる農地の一角。

 街道から少し外れたこの周辺は広大な農地と農地の間を細い道が通り、それぞれの土地の境界を示す柵が張り巡らされていることも相まって複雑な境界線を描き出していた。


 確かにところどころ、線と線の間に隙間があり、空白地帯と呼べる場所はいくらかあるのだが、それは面積があまり大きくないか、小さな丘のようになっているかのどちらかだ。正直な話、丘の周りをグルグルと回るように線路を作れば、実験線ができるのかもしれないと頭の中をよぎったのだが、それをしてしまうと計画1号線に実験線を組み込むということが出来なくなってしまうので、真っ先に頭の中からその考えを追い出す。


 そうなると、やはり地道に土地を探すか、あきらめて農地の外郭に広がるほぼ手付かずの平野(北大街道側)に線路を敷くかという話になってくるのだが、その辺りの結論を出すには少し早いだろう。


 時間がないのならともかく、メルラからの返事を待っているという今の状況を考えると、焦ったところで時間が余るのは目に見えているし、仮に調査中に手紙の返事が来たときても、その内容に沿って行動を変えればいい。


 それに手紙の返事が来るまで相当期間かかるという前提があるのだ。もっとも、わざわざツリームに手紙の返事が返ってくるようにしたことに関して、ターシャ・アリゼラッテの意思がなにかしらの形で介在している可能性は否定できないのだが……


「それにしても見つかりませんねー都合のいい土地ー」


 土地探しが続く中、オリーブがポツリとつぶやく。


「まぁそうはいっても、全体の六分の一も見てないからね。きっといい土地が見つかるよ」

「でもですよー先の条件に沿った土地を探してー結果的にー北大街道の逆側だったとかだとー意味がないのですよー」

「あー確かにそうかも」


 オリーブのいうことにも一理ある。

 確かに先の条件にこだわりすぎて、結果的に線路がツリームの町を大きく迂回するようなことがあってはならない。

 そのため、正しい実験線の条件は出来る限りの市街地に近く、北大街道とも近い場所といったところだろうか? そうなると、実験線をに向く場所はどうしても限られてきてしまう。


「そこまで条件を足すと、見つからないかな……」


 そう考えると、誠斗も少し弱気になってしまう。最初にオリーブがそんな都合のいい土地があれば。といったのは、そういう意図も含まれていたのかもしれない。


「……そんなこと気にし出したら、条件が増える一方よ。例え、将来的に線路が遠回りになったとしても、実験線は町に近い方がいいわ」

「それはまたどうしてですかー?」


 オリーブに尋ねられると、マーガレットはその場で立ち止まって振り替える。


「……宣伝効果。あわよくば、路線開業前に安全が確認できた段階で住民に乗ってもらって、行商人以外の需要をほんの少しでも確保したいの。例え、ターゲットではなくても、お客は少しでも多い方がいいから」


 どうやら、マーガレットも似たようなことを考えていたらしい。もっとも、実験中に住民を乗せて宣伝するという発想はなかったが……


「なるほどーそういう考え方もありましたかー」


 マーガレットの言葉にオリーブもある程度納得したようだ。


「それに今探しているのはあくまで候補だから、町の反対側の方まできっちりと探さないと」

「はいはーい。わかりましたよー」


 オリーブか納得したところで、一行は再び歩き出す。


 そのタイミングで今度はリュックの中に収まっていたノノンから意見が出る。


「もし仮にいい土地があったとして、そこはどうやって押さえておくの? 今は空いていても、新メロまで行って帰ってきたら何か出来てた何て言うこともありそうだし」

「それに関してはツリームの町長さんにお願いするわ。一番いいのはシャルロッテ家でしょうけれど、話に聞く限りだと、領主代理代理とやらは協力してくれなさそうだし」

「確かにそうだよね。でも、ツリームの町長ってどれだけの権限があるの?」

「この周辺についてはある程度力があるはずよ。あとは、どうやって土地を押さえることを納得させるかだけど」


 どうやら、土地を見つけたところでまだまだ問題は多そうだ。


 そんなことを考えながら、誠斗は小さくため息を吐いた。

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