暗殺者ギルドの結成と、ちょっとしたイベント
血を流し過ぎて、動けなくなったため、その日は3姉妹の家に厄介になった。
ただ、その日の夕食は自分一人だけ、個室で摂ることになった。
とはいえ、身体が満足に動かせないため食事介助が必要だったのだが、さきほどの暴力は一体なんだったのだろうかと思えるほどに、ハルカとアイシャの彼女2人が甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
具体的に説明するならば、アイシャがスプーンを口に運ぶ役を買って出、ハルカが回復魔法スキルの上達を兼ねて、効果が今ひとつであるものの、不慣れな治癒魔法を懸命に背中に重ね掛けしていた。
食事に出てきた、アクアが腕によりをふるったという、造血効果があるらしい異世界の謎肉のスープの味は今ひとつだったが、アイシャのフゥフゥと熱いスープを覚ますときの吐息が鼻腔をくすぐる感覚は、得難いご馳走で、思いもよらない満足が得られた。
食事を終えたあとは、大人しく横になり、そのまま深い眠りに誘われた。
翌朝。
「起きてください、アントン様。約束はまだ果たされていません」
誰よりも定時に起きられる女・アイシャに起された。
ちなみに約束とは、朝一番のキッスだ。
ハルカの昨晩の治癒魔法の重ね掛けが功を奏したのか、身体はどこにも痛みが走ることなく素直に起きることができ、起きた際の慣性が、勢いそのままに唇同士のドッキングに一役買った。
“ヘンに照れとか恥じらいを残しつつキッスをすると、微妙な感触しかなく、後味が悪くなるわよ!”と、キッスの先輩から常日頃言われているので、アイシャに対する感謝を、唇を通して伝えるように、チュッチュッしておいた。
気持ちが伝わったのか、身体を預けてくるので、ハグもしておいた。
アイシャの心音が感じ取れた。思わず心配したくなるほどの早い脈拍だった。
そして、いつものオールメンテナンスが始まり、かわりに自分の精気が少し減った。
いつまでも抱いていたかったが、アイシャ曰く、ハルカの目覚めが近いそうな。
ハルカには内緒の、朝のちょっとしたイベントなので、楽しみは明日へと持ち越すことにした。
朝食後、自分・ハルカ・アイシャの3人は、中規模都市以上にしか設置されていないという、各神さまが祭られているという祭壇へと足を運んだ。
祭壇への用事は、ギルドの設立と関係している。
要は、設立するギルドと関係の深い神さまに、設立の報告と誓いを行い、神様に認められて初めて、設定ギルドを名乗ることができる、とのこと。
「どうですかねぇ、神様が『No!』を突きつけてくることはありますか?」
祭壇関係者がシステムの説明を滔々(とうとう)と述べるので、さえぎるかのように質問をぶつけてみた。
フードを目深にかぶっているせいか、表情は確認できないが、ムッっとした感情を一瞬だけぶつけられた。こちらは思惑通りだったので、シメシメである。
「……設立ギルドと神さま選択のミスマッチなら考えられます」
思ったよりも立ち直りは早く、マジメな回答が寄せられた。
「例えば?」
「冒険者ギルドを興そうとしているのに、治癒と生命の神様を呼ぶ行為ですよね。目的がトンチンカンすぎます。選んだ神さま次第では、あなた様に不幸が及ぶ場合もあります。
設立の際は、いつも以上によくお考えになっておいてください」
「なるほど。では次の質問だ。闇か死の神さまは、ここに奉られているのかい?」
「います。ですが、人目に付く場所には置いてありません」
拒否されたらどうしようかと思ったが、杞憂のようだった。
だが、祭壇関係者は地下へとつながる階段の出入り口の前で立ち塞がり、かわりに手を差し出した。
「要求は?」
「もちろん、お金でございます」
「寄付は既にしただろう」
「後ろ暗い神さまの呼び出しには危険が伴いますので、万が一を想定した手当ての請求です」
ふむ。一見するとまともな主張だが、要求金額次第だろう。
「相場はいくらだ?」
「金貨10枚でしょうか」
ここに来る前に庶民感覚を得ようと、裁縫3姉妹を引き連れて買い物に行ったが、日常生活に必要な道具の購入に金貨は必要なかった。
武器防具店や道具屋、錬金術といった戦闘に関与するものなら、金貨の出番があった。
それでも白金貨での取引は皆無だそうだ。
唯一の例外が、上級貴族たち御用達の店舗だそうな。
そこでなら、「レベル」「組織ランク」「お金」「魅力値」「名声」が備わっていれば、規格外のアイテムなり武器防具なりが用意されており、売買が可能だとか。
まだ滞在日数が浅いこともあり、それでも金貨10枚が障害手当に見合った金額なのか自信がなかった。
出し渋るわけではなかったが、財布の中にある金貨を探しているのに手間取っていたら、祭壇関係者の態度があからさまなぐらい硬化した。
そして、忌々しい態度に反して、こなれた手つきで指をパチリと鳴らすや、どこからともなく、手入れの行き届いていない斧や剣を手にした荒くれ者たちと、着古してところどころボロボロになっているローブ姿の魔法使いたちが一斉に姿を現した。
「悪党が 金貨渋って 白金貨」
今の俳句がよほどツボだったのだろう。
祭壇関係者が一人ゲラゲラ笑うなか、自分とアイシャが連係プレーを駆使して、魔法使いをまず全滅させた。
「て、てめぇ、まずはオレと会話してから、オレが『かかれっ!』と合図したのを機に(アホが説明に夢中になっている間にゴロツキの討伐が済んだので、銃口を頭に向けるや)ハイ、すみません調子に乗っていました。許して下さい」
一転して、地面に膝をつき、神に祈るしぐさに余念のない祭壇関係者。
命乞いを無視して、見張りをアイシャに任せた。
自分は、地下に向かって問うてみた。
「そこに眠る死の神にお願いしたいことがある。まずは、死んだばかりの活きのいい死体が転がっている。それを供物に捧げよう」
「聞き届けたわ」
いきなり自分の隣に、声がするので振り向くと、市場の中央で音楽に合わせてステップを踏んでいた踊り子が来ていたような衣服姿で、年齢不詳の美人がニコリと微笑んだ。
「アンタ、誰?」
「私? 私は愛と死の女神マーラ。供物は確かに受け取りました。
貴方の願い事は何かしら?」
「暗殺者ギルドを設立したいので、この世界のルールにのっとって、女神さまに設立を認めてもらいたい」
「いいわよ。でも、それだけ?」
女神マーラはあっさりと承諾したかわりに何かを要求してくるようだ。
美味しい話には裏がつきものだ。つい、納得してしまった。
だが、表面上は警戒するそぶりを見せつつ、相手の出方を伺うことにした。
「それだけ? の意味が解らん」
「早い話、私で良ければ仲間にして欲しいの」
は?
いきなり女神さまがスゴイこと言ってきた。
仲間になるのは別に構わないが、理由を聞いたらダメなんだろうか。
「さっきも言ったと思うけれど、私、『愛と死の女神』なの。
君たちがここへ来た時から何だか気になって、今までこっそりと眺めていたのだけれども、特に君を中心とした愛の動きと死の香りがとても興味深くてね。
君のそばにいたら、私、餌の心配に困らなくていいかなー、って思っちゃって。てへ」
そう言われて、ここ3日間の自分の行動を振り返ってみた。
異世界来て早々、ハルカとアイシャにチュッチュッチュッ。片付けた死体は既に3桁突入。
依頼を片付けたら、裁縫3姉妹をゲット! 長女をキスで籠絡。
うむ。ロクデナシだな。
「ちなみに、女神さまの食べるエサは……」
「わたし、女神様とか堅苦しい呼び名は嫌いだから、マーラでいいわ。質問の答えだけど、もちろん、死んだばかりの死体の方よ。定期的にエサが取れている間は私、超強いから貴方の足手まといにはならないわ。エサが取れなくなっても、私の見ているところで『愛の行動』をしていたら、それでも補えるからそこまで心配はないわよ」
なんと、労せずして最強の死体処理班が仲間になってくれるとは。
ギルドリーダーを代表して、歓迎のハグでチームメンバーになってもらいました。
ちなみに、設立した暗殺者ギルド名は「死兆星」です。
―
――再び、暗黒街へ。
今まで何かを思い出せなかったハルカが、フンバの最期の言葉を自分に伝えてくれた。
フンバは生前、冒険者時代に様々な遺物をかき集めていたらしく、どういうモノが残っているのか興味があって、アジトへと足を運んだ。
ボスのアジトは、徹底的に荒らされていた。
絶対的な支配者が倒れ、後継者とされていた息子も冒険者ギルドに連行された今、留守番を守ってくれるようなヤツは残っておらず、金目のモノが一切合財盗られていた。
これはあまり期待できないな、と思いつつも、ハルカの案内をもとにフンバの寝室へと向かった。
「ワァーオ! オイ、見てみろよ。こんなところで『蠱惑のハルカ』と出会えるなんてな」
「マジかよ。それに、いい趣味してるよな。美人のメイドと踊り子に、パッとしない荷物持ちか」
ハルカを知っていて、ところどころボロボロながら現実世界のスーツ姿の同業者2名が、口笛を吹いて、軽口をたたいている。
「何しているのよ、アンタたち」
「ああ、知っていると思うが、フミバのプライベートルームに安置されているであろう、あるアイテムがあるかどうかの確認さ」
「スマホね」
「そうそう。アンタたちんトコ所属のスマホをいくつか回収していたらしいからな」
「バリスタね」
「そうそうそう。なぁ、ハルカ、オレたちの仲間になれよ」
「お断りよ」
「そうだろう、そうだろう……ってなんでだよっ!」
「陣営名も憶えていない雑魚だからだろ」
激昂して、ハルカに飛びかかって来た長身ノッポをシグの連射で片付けた。
「お前、何で銃を持てるんだひゃ」
もう一人のチビノッポが驚きの表情のまま、他界した。
すかさず戦利品獲得のため、アイテムチェックを行ってみる。
2人ともめぼしいモノは持っていなかった。銀貨が2枚と銅貨が5枚だけだった。
そのへんのスリですらこれ以上は持っているというのに、寂しい最期だ。
「参考までに、こいつら、何が得意だったんだ?」
「さぁ」
「じゃ、何でお前を知ってるんだよ」
「そりゃ、Aランクですもの。でも逆に同ランク以下のランクは余程を除いて記憶に残らないのが普通よ」
「そうなのか?」
「アントン様たちの世界でのAランクは56人でしたが、Bランクになると数が一斉に増えて、確認されている範囲で17634人とされています」
なるほど。それならハルカが知らなくても仕方がないな。
じゃ、次の行動に出よう。
完全に死体になるまでの間に自分はこの2人をギルドメンバーに登録しておいた。
すると、冒険者ギルドの支部長が言っていたように、死後直後のメンバーの個人情報と行動範囲履歴がギルド内ネットワークの情報スペースに保存されている。
あっという間の出来事だった。
あとはマーラに頼むと、支部長の部屋で見かけたのと同じ色合いの巾着袋を取り出した彼女が、死体2つの前にそれを投げ込んだ。
巾着袋は口を最大限に広げて一口で放り込み、石の床にこびりついた血液をチュウチュウと音を立てながら飲み干していた。
と同時にマーラが色っぽい声を出して、そばで軽く身体を震わせた。
いきなりのことに呆然としていると、ふぅ、と軽いため息をついてひと段落済んだマーラが理由を説明した。
「活きのいいエサが、五臓六腑に浸み込む際のめくるめく喜びがどうしても声を抑えられなかったの。不愉快な思いをさせたのなら、謝るわね」
これを自分に置き換えて例えるなら、バーベキューやっていて、自分の好きな肉の部位がのどから胃袋へと一直線に駆け抜ける感覚に楽しさを覚えるようなものである。
ただ美味しく食べるモノが違うだけで、死んだ肉を食べる点は一緒だ。
気味悪く思う理由はなかった。
ピッキングを用いて、フンバのプライベートルームに侵入した。
何故か自分だけにしか視えない武器の数々に目を奪われた。
特に血の気が騒いだのが、対戦車兵器のRPG-7と指方向性対人地雷のクレイモアだった。
前者は、自分が武器使用で構える際には相手の目にも視覚化されるが、後者は待ち伏せ用に仕掛ける際以外は、敵側にとっては完全に不可視状態なので、雪崩のように大勢でやってくる賞金稼ぎに恐怖を与えるのにはうってつけである。どちらも直撃したら、グロ耐性必須の惨状が待っていることだけは共通している。
ハルカは独自にピッキングを行い、気になる金庫の中身をこじ開けた。
「あったわ!」と喜んでいたので、対象のブツを発見したのだろう。
すかさずアイシャが近寄って、他のスマホに呼びかけ行為をしていた。
カタパルト所属のスマホには何の反応もなかったが、バリスタ所属のスマホには、電源ランプの明滅やメール到着時等の着信メロディとか何らかの形で反応が返ってきた。
ただ、どれもホコリやサビが機器に少なくないダメージを与えており、ベッドの隣に作業をする分には手頃な机があったので、修理することにした。
「アントン、修理もできるの!」
ハルカがすごく驚いていた。そういえば、ハルカは機械の操作は、どちらかというと苦手な方だったな。
「出来ると言っても、こういう場所では応急措置だ」
「それでもできないよりは断然すごいよ」
修理スキルは、30ん年もの間、組織の中で存在を許された部分の一つだと思う。
暗殺組織に属していながら、何故か殺人のできない自分である。
本来ならばお役目御免のポジションだが、幸いにもメンテナンス部の人たちに目をかけてもらい、日常生活を送る上で困らない範囲の道具の破損なら、元通りにできた。
学んだ技術を、ダメもとで銃のクリーニングとメンテナンスに応用してみたら、銃の寿命が格段に延びた。
その頃からだろうか。
何となくだが、物の声みたいなものが聞こえ始め、壊れたものを触ったら「○○が痛い。助けて」というふうに具体的な破損場所が耳に入るようになり、的確な修理ができるようになった。
めりこみとも云うべき状態から、ある日、ふと気がついた頃には、組織のあらゆる場所にある破損個所をメンテナンス部とともに修理する日々を送っていた。
もっとも、自分にできる範囲の修理とは、身体の傷のことをさす。例えば、この壊れたスマホに感情を司るアプリが入っていた基盤があったとして、基盤を取り換えて別の基盤にすることは出来ても、壊れた基盤を元通りにまでは修復できないし、さらに中身の肝心のアプリの詰まったデータを呼び戻すことは不可能だ。
何はともあれ、この世界へと飛ばされる前日までは、メンテナンス部の修理屋の一人としては扱ってもらっていた。
「アントン様に提案があります」
スマホが歓びを着信メロディ等で表現していることを微笑ましく思う一方で、残り僅かのハズの消費電力をガリガリ削る行為をどうにかできないモノかと思っていたら、アイシャが発言した。
続けるように、発言を促す。
「私にキスをしていただいた時のように、彼女たちも救ってほしいのです」
ふむ。彼女たち、ですか。
女の子は大好物だから、キスひとつで仲間が増えるのは大歓迎っ!と云いたいところだが、アイシャの提案を聞いて、途端に空気を重くするハルカの無言の重圧が怖い。
長女アクアの歓心を得るためのキスのときを思い出した。死ぬまではいかなかったが、こっぴどく殴られて、ときどきクリティカルした致命傷は回復魔法の重ね掛けで息を吹き返した。
アレもちょっとした拷問だ。なるべくなら、ハルカの見てないところでやろうか。
あ、無理か。5台分の元スマホ美女たちを連れてきて、「何もしてないヨ。僕は誠実だヨ」、なんて言われてもハルカ以外でも信じられないか。
「今回は、画面上に彼女たちの顔が映る程度の想像力でキスしてください。さぁ、急いで。彼女たちのライフはゼロに近いのですから」
ええい、ままよ。
とりあえず、鳥のさえずり程度の軽いキスを5台分に施した。
途端にアイシャのときのような光の柱(今回はややスケールが小さかった)が起こり、スマホに新しい命が芽吹いた。
と同時に、アイシャとの朝のお約束のときと同じ……いや、それ以上の脱力感が5人分、生じ、思わず片膝をついた。
「今回分は、あたしたちも傷ついていたから、その分、多めにエネルギー貰いました」
「でもでも、次回分からは、アイシャお姉さまのときと同じように『ほんの少し』ですから、気軽にチュッチュッしてくださいね」
「アントン、それどういうことかしら?」
ああ、なんて口の軽いスマホさんたちかしらっ。
結局、秘め事は簡単に暴露され、自分はハルカの気が済むまで殴られ、回復され……を繰り返された。
「そう嘆くな。お主は物理耐性が上がり、ハルカは回復スキルが向上したぞ」
マーラ様が自分とハルカとのやり取りを楽しそうに眺めながらも、マーラ様の力で創られたギルドカードを我々に見せてくれた。
まずはハルカから。
身体ステータスは女の子にとってとてもデリケートだからと見せてもらえなかったが、マーラ様が指さす『回復魔法ランク』の部分が3という数値を示していた。
「ランク3、ってのは低いのか高いのかよくわかりませんね」
「スキルランクは最大値が8じゃから、3は中級じゃな」
マーラ様の説明曰く、ランク5まではほとんどのスキルが共通だが、ランク6からは千変万化のスキル効果が現れるとのこと。
試しに、ハルカの場合の回復魔法だと……
ランク1:初心者。
ランク2:駆け出し。
ランク3:中級者
ランク4:上級者
ランク5:最上級者
ランク6:人外適用。
ランク7:無機物適用。
ランク8:不可能を可能に。
最後のランクの……セリフのようなスキル効果にめまいがしたが、なんだか凄かった。
「次はお主じゃな」
ハルカのときとは違い、自分の身体ステータスが明らかになる。
特に目を引いたのが、『永続バッドステータス』だろうか。
『特定条件下の腰痛再発(ランク8)』 『肉体の老化(ランク8)』 『恥知らず(治療不可)』
マーラ様が説明するには、永続効果のあるバッドステータスであっても、ハルカの回復ランクが数値以上であれば確実に治るそうだ。しかし――
「治療不可ばかりはのぅ、お主の個性そのものじゃ。これを消すことができたらお主がお主でなくなるということじゃから、たとえランク8の実力があってもこればかりはどうにもできん」
なるほど。
『恥知らず』のバッステは、この世界に来てからの対応もそうだが、現実世界でも、壊れた機械の修理の際に周りが自分をどう見ようともひとりごとを止めなかったところも反映されているのだろう。
何もエロいことばかりではないのだよ、エロいことばかりでは。
「特定条件下での腰痛って、何なの? アントン」
確かに、要求治癒ランクが8と高い。
何だろう? 自分でも気になったので、普段の行動を意識するように一つ一つ動作して、原因を探ってみる。
日常生活での行動に問題はなかった。戦闘時の行動にも問題はなかった。
となると、アレか。
試しにハルカを連れて、トイレに入り、鍵をかけたのち、試してみた。
「ア゛ーーーーッ!」
掘られたとかそんなんじゃないが、特定の腰の動きに入ると痛みが目を覚ました。
ぶっちゃけ、エッチできません。
くっそう、なんちゅう蛇の生殺しバッドステータス。
「ハルカ、君のためなら協力を惜しまないよ」
モロ下心満載だったので、口の中が血に染まるほど激しくぶん殴られました。そして、回復してもらいました。
さて、肝心の、自分の物理耐性スキル効果のランク一覧である。
ランク1:一般人
ランク2:神経の麻痺した一般人
ランク3:強化骨格を入れた一般人。
ランク4:車の衝突にも耐えられる一般人。
ランク5:戦車に踏まれても、携帯ゲームができる一般人。
ランク6:飛行機のタービンで切り刻まれても、意識のある一般人。
ランク7:核爆発に巻き込まれても、昼寝のできる一般人。
ランク8:何が起きても、恋人の元へ駆けつける一般人。
例外:恋人からのビンタはランク適性を無視します。大人しく反省してください。
何故、ランク表記の説明は一般人にこだわるのだろうか。
恐らく自分の見た目の凡庸さから来ているのだろう。
それにしても、例外にまでわざわざ叱られるとは思わなかった。
凄いぞ、ギルドカード。そして、ほっとけ、ギルドカード。
……ちなみに、自分のランクは3である。