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0.ある物語の終わり方「彼女の主観」

 「俺はね、——も俺も生きている世界じゃないと意味ないと思ってた。——がいても、それを知覚する俺がいないと全然意味ないじゃん」

 男は私が見ていることを知っているくせにこちらは少しも見なかった。平然とした声で、いつかも吐いた戯れ言を繰り返している。けれど今度は、続きがあるようだった。小さく息を吸う音が聞こえた。

 「でもまあ、究極どちらかを選べって言われたら」

 男の答えを私は知っていた、と思う。本当は本当に、全部わかっていた、男はいつでも本気だった。私が認めていなかっただけなんだろう。認めたくはなかった。認めるつもりはなかった。だからなのか、男はその先をちゃんと言わなかった。

 「わかりきってる。答えは、わかりきってるんだよ」

 言い終わって、奇妙な間が生まれた。私は何も言えずに、男も何も言わずに、空気が沈殿したように思った。しかしそれがおこってみればその間は一瞬だった。乱暴な風がおこり、私をぬぐい去ろうと渦を巻いた。私は何もできない。ただ叫ぶ。

 「やめろ奪うな」

 男は最後までこちらを見ないつもりのようだった。

 「あたしから、奪うな!!」

 消えていくのがわかる。でもその感覚もすぐに消えて、その感覚さえも…、と消えていく感覚だけを追っているうちに何もわからなくなった。だって男の顔が今はもうわからない、体は、服の色、彼が、彼?男だっただろうか…


 気づいたときには私はひとり立っていた。あれだけ強かった風が止んで、身構えていた腕をそろそろとおろす。するとそこは村はずれの空き地で、風なんて今までそよとしかふいてなかったはずだった。

 夕飯をどこかでとろうとしていたことを急に思い出した。ぼんやり歩いているうちにこんなところまで来てしまったらしい。久々の村で久々のちゃんとした食事だ。足取りも心なしか軽く、私は振り返ってもと来た道を歩き出した。


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