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疾風の如く

「ああ、あの人たちなら半刻ほど前に慌てて出て行ったよ。

この先の農道を曲がって行ったみたいだねぇ。あんな畦道馬車で

走ったら壊れちゃいそうだけど大丈夫かね?」



私達は現在エボニー村まで足を伸ばしていた。

村に着いた私達はさっそくお嬢様が立ち寄った村の宿屋で聞き取りをした所

さっそくお嬢様の足取りが掴めた。

良かった。どうやらプラーニャ様は取り敢えず無事みたいだ。

村の人達の話からぶりからするに賊はまだここには来ていないみたいね。


でも聞いていたルートではもう少し先の大きな街道から北進する予定のはず。

なのにわざわざ道の整備されていない農道に入るのは不自然ね。

ああ、そうか・・・。

ここで落ち合うはずの影武者が来なくて何らかの危険を察知して

ルート変更したって所かしら?

賊に気づかれていなければかなりの時間稼ぎにはなるし・・・。


「しかし、今日は良く同じことを聞かれる日だねぇ。今さっきも知り合いだって

言う行商人たちに同じような事聞かれたよ?」

「!?それはいつ頃の事ですか」


「10分程前かねぇ?行商人にしちゃ全身黒ずくめの変わった人達だったよ」

「行きましょう!イングヴェイ・リンデマン!」

「ええ、行きましょう!」「おう!!」


まさか宿屋の店主に口止めしていなかったというの?

だとしたらいくら何でも迂闊すぎる!

もしそれでお嬢様にもしもの事があったら私は彼らを一生許さない!

けど今はまず賊に追いつく事だけ考えよう。

10分前であればまだ全然追いつける距離だわ。


私達はそれから馬には負担を掛けてしまうけれど道の悪い農道を土煙を

上げながら全力で走り抜けた。

風の音がゴウゴウと耳に鳴り響き、視界が狭くなっていく。

しっかりと摑まっていないとすぐにでも投げ飛ばされそうだ。

けど10分、20分経っても一向に不審な人物達は発見できず大きな街道に出てしまった。


「いませんね・・・ここから北へ進むとしたら魔女の森付近ですか」

「そうね。あの場所は危険なモンスターも多いと聞きます。急ぎましょう」


そう言って再び走り出した。

今度は整備されている街道だからかなり走りやすいが、森に近づくにつれ

濃い霧が立ち込め視界を妨げる。

ここはいつもこんなに深い霧がかかる場所なのだろうか?

あんなに天気が良かったのに陽の光も今は見えない程だ。

それから程なくして遠くの方からキンキンと金属を打ち合わせたような音が

遠くの方から聞こえてくる。


「おい、何か聞こえないか?」

「・・・・これは剣戟の音か?」「・・・・あっち!誰か戦っているわ!」


近寄って見て戦慄した。

それは正にお嬢様の護送役の騎士隊が巨大な人型のモンスターと交戦中で、

さらに複数人の黒ずくめの男達に囲まれていたのだ。

騎士隊は見る限り皆ズタボロで今にも倒れてしまいそうな程に疲弊している。

でも私にはそんな光景よりもお嬢様の馬車が無い事に激しく動揺した。


「おい!お前ら加勢するぞ!」

「・・・・・!君たちは!ありがたい!部下がもう限界なのだ。頼む!」


「プラーニャ様は!?プラーニャ様はどこにおられるの?」


彼らの会話を遮るように私が質問を投げかけると隊長と思われる人が

一瞬苦い顔をする。まさか・・!?


「すまない。プラーニャ嬢はうちの部下と安全な場所に避難させようとしたのだが

何故か魔女の森の方に走って行ってしまって・・・そこからはわからんのだ」

「なんですって!?」


その無責任な言い草に私の頭はカーっと熱くなり視界が真っ赤に染まる。

会話の最中も黒ずくめの男達と騎士達は剣を打ち合わせているが

この時の私には全てどうでも良かった。

早くプラーニャ様をお助けしなくては!その一点しか考えられなかった。

騎乗したままメイド長から譲り受けた武器に手を掛け構えると馬を嗾け

私は魔女の森に向かって勢いよく駆け出した。


「おい!アリス!どこにいくつもりだ?」

「プラーニャ様を追う!!」


そう叫ぶと戦う彼らを無視してその隙間を縫い魔女の森に向かう私の前に

霧がまるで生き物の様に立ちふさがり、やがて巨人の姿を形成する。

身の丈3メートル以上はありそうな巨人に、普段の私ならたじろいだだろう。


「邪魔を・・・・するなあぁぁぁ!!この痴れ者がぁああ!!」


そう叫んで持っている長斧に自身の全魔力を集中させ迷いなく巨人目掛けて

振りぬいた。だが手ごたえなく斧は地面に突き刺さる。

「無駄だ!その巨人は『霧の巨人ポルックス』物理攻撃は効かないんだ!!」

後ろからあの隊長の叫ぶ声が聞こえてくる。

その直後だ。周りの空気が急激に冷え込んでいき私の吐く息も白くなっていく。

気付けば目の前に氷漬けになって動かない巨人が立っていた。


私は思わず白く発光して冷気を放っている斧を見る。

これが魔装『スノーホワイト』の力・・・・!?

とんでも無い武具だ。メイド長に改めてお礼を言わなくちゃ。

でも今は道が開けたならプラーニャ様の元へ・・・!


こうして私は偶然にも危険度厄災級のモンスターを倒し魔女が住むと言われる

森の奥深くへと分け入った。

イングヴェイとリンデマンには申し訳ないけど彼らなら任せても問題ないだろう。

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