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灰色の君

「いつの間にか眠ってしまっていたのね・・・うっ体がバキバキだわ」


洞窟に差し込む陽光の明るさで目が醒めた。

いつの間にか焚き火はすでに燃え尽きており早朝の寒さにブルリと身を震わせる。

外に出てみて驚いた。

昨日の濃い霧が嘘みたいに晴れていて森は光に満ち満ちていた。

上を見上げれば青々とした木々から木漏れ日が射してきて鳥たちが元気に囀っている。

まるで童話の中の世界に迷い込んだかのような光景に言葉を失う。


「驚いた・・・魔女の森って言われても判らないような光景ね・・・」


人というのは単純なもので陽の光を浴びると昨日の鬱々とした気持ちが嘘みたいに

晴れやかで前向きな気持ちになるから不思議だ。

よし!この気持ちが続いている内にシェルビーを探しに行ってみましょう

きっとどこかで元気に生きているわ。

特に持ち物も無いのでこのまま昨日の足跡が消失した所まで歩いてみる

事にしましょう。


・・・と気持ちは前向きになったのはいいが体が筋肉痛でギシギシいっている。

普段からもっと鍛えておくんだったわ・・・・ん?

歩き始めて30分程経った頃だろうか、私の真下を大きな影が通り過ぎたので上を

見上げると空の上の方に何か大きな飛行生物が何体も飛んでいた。

なにかしら・・・・?ドラゴン・・・とか?いやまさかね。

でも何故・・・?・・・・この胸のざわめきは・・・

いや気にしてもわからない事に気を回している余裕はないか・・・


「今は目の前の目標に専念しないと・・・・あ、川が!・・・小川が流れている」


思わず駆け寄って川の水を両手で掬い上げ何の躊躇も無くゴクゴクとその水を

喉の奥に流し込んだ。

(冷たくて美味しい!まさかただの水がこんなに美味しく感じる日が来るなんて)

思えば昨日のお昼から飲まず食わずで喉はカラカラだった。

前世の知識があるからバクテリアとかが怖いっていう気持ちもあるが、

今は水をろ過したり煮沸消毒するような器具なんて当然持ち合わせて

いないのだから背に腹は代えられない。

後でお腹を壊す心配はあるけれど水分不足で動けなくなるよりはよっぽどマシだ。


そうして水分補給をしてからまた歩き出すと微かにか細い声が聞こえた気がした。


それは本当に本当に無くなってしまいそうな程か細い小さな声。

だけど確かに聞こえた気がした。

だからその声のした方を探してみるが、中々見つからず幻聴だろうかとも思った。


────────ハァッハァッハァッ──────


「やっぱりいる・・・どこ?どこにいるの?」

気になって草をかき分けながら探しているとひと際大きな木のうろに蹲っている

生き物がいるのをようやく発見した。。

近よって見てみると灰色の毛並みをしたやせ細った狼がそこにいた。

どうやら彼は後ろ脚が木の蔦に絡まり身動きが取れない様子だった。

一体何日ここに囚われていたのか立派な体格をしているはずなのに肋骨が

浮き出るほどにやせ細り、私を警戒しているのか小さく唸り声を上げている声にも

明らかに覇気がない。


さらに私が近づこうとすると鋭い歯を剥きだしにしてさらに威嚇してくる。

「大丈夫・・・私はあなたの敵では無いわ。危害を加えたりなんかしない」

しばらく私と1匹は見つめ合ったまま膠着状態が続いた。

私は何故かこの囚われの狼をどうしても救いたくなってしまってまるで

友達みたいに根気強く話しかけ続けた。


今でもどうしてそうまでして彼を救いたいと思ったのかわからない。

前世で犬でも飼っていたのだろうか?

きっと違う。彼を救う事によって私も救われるような気がしたからだ。

何分そうしていたかわからないが、やがて彼も私に敵意が無いとわかったのか

唸るのをやめてくれたので彼を刺激しないようにゆっくりと近づく。

狼の後ろ脚を見ると蔦が複雑に絡まっており素手では解くのは難しそうだった。


私は腰に差していた小さな小刀を取り出し丁寧に蔦を切り落としていく。

ちなみにこの小刀は野営の食事の時に肉などを切り分ける為の道具として

オーヴァンさんに譲り受けた物で切れ味は悪くない。


何故この狼はこのうろにいて、どういう状況で蔦が絡まっているのか疑問だが

とりあえず彼を縛り付けていた蔦を全て外すとしばらく彼はキョトンとしていた。

逃げたり襲い掛かられるのではとちょっと心配もしたが、その後彼はまるで

「ありがとう」とお礼を言うみたいに私の手をペロペロと舐めてくれた。

私もお礼とばかりに彼の全身をモフモフと撫でさせてもらうとブンブンと

尻尾を嬉しそうにバタつかせているのを見て思わず笑みが零れる。


一頻ひとしきり撫でて満足した私は彼に別れを告げて立ち去ろうとした

・・・・のだが後ろから足音がして見てみると狼はトコトコと付いて来ていた。

どうやら「灰色の君」に懐かれてしまったらしい。

無下に追い払う事なんて出来なくて私は彼が満足するまで一緒に歩くことにした。

さっきまで心細かった心が何だか少し頼もしい・・・とは言っても痩せて

弱っている彼に戦闘は出来ないだろうからボディーガードとしては期待できないけど。


本当なら食料でもあれば上げることが出来るのだが、私自身昨日から何も

食べておらず朝から空腹でお腹がグウグウとなっているのだ。

何でもいいから早く食べる物を見つけないとその内動けなくなりそうだわ。

そう考えていると狼は後ろからスッと私の脇をすり抜け私の前方に躍り出ると

振り返って私の方をじっと見つめてくる。


「どうしたの?・・・もしかしてついて来いって事?」


私が彼に付いて行けば少しまた前に進んでこっちを振り返りちゃんと付いて

来ているか様子を伺うといった感じだったが常に尻尾はブンブン

振っていてかわいい。

そのまま彼の尻尾を尻尾を追いかけ続けていると、背の低い植物の前で止まった。

彼はその低木に生っている青色の実を口でもぎ取るとそのまま咀嚼しはじめた。

そしてお前も食ってみろと言わんばかりにこっちを見つめてくる。



恐る恐る私もその実をもいで口の中に運んでみると、ちょっと酸味があるが甘くて

瑞々しくとても美味しい。

お腹が空いていた私達はその実を夢中になって食べた。

前言撤回、彼はとても頼もしい。彼と出会えたことは本当にラッキーだった。

これでまたしばらく歩くことができる。


「ふう、ありがとう生き返ったわ!あっ!ねぇ、どうせなら呼びやすいように

貴方に名前をプレゼントしたいのだけどどうかしら?」

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