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召喚した勇者がクズでした。魔王を討伐して欲しいのに、勇者が魔王に見えてきた。助けて  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第4部:静寂の終焉期

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第19話「現代、帰還」

アラームの音が、部屋に響いていた。


神谷蓮――通称ハルは、うっすらと目を開けた。見慣れた天井。自分の部屋だ。


「...ん」


手を伸ばして、スマホのアラームを止める。


頭がぼんやりしている。よく眠れなかった気がする。


「変な夢見たな」


呟きながら、体を起こした。しかし――どんな夢だったか、思い出せない。ただ、何か暗くて、騒がしい夢だった気がする。


スマホの画面を見る。日付を確認すると――昨日の翌日だった。当たり前だが。


「あれ?昨日って...」


記憶が曖昧だ。学校に行った気がする。でも、何をしたか思い出せない。授業を受けて、友達と話して――それくらいだろうか。


「まあいいか」


ベッドから出て、カーテンを開ける。朝の光が差し込んできた。いつもと変わらない朝。


着替えて、階段を降りる。


「蓮、朝ごはんよ」


母親の声が聞こえた。


「はーい」


リビングに入ると、テーブルに朝食が並んでいる。トースト、スクランブルエッグ、サラダ。いつもの朝食だ。


「よく眠れた?」


母親が尋ねた。ハルは頷く。


「うん、まあ」


嘘ではない。眠れたは眠れた。ただ――何か、すっきりしない。


食事を終えて、学校の準備をする。教科書、ノート、筆箱。全てがいつも通りだ。


家を出る時、ふと振り返った。


何か――大切なことを忘れている気がする。


でも、何かは分からない。


「気のせいか」


首を振って、学校へと向かった。


通学路を歩いていると、途中で公園を通りかかった。


いつも通る場所だ。しかし今日は――何となく、立ち止まった。


ベンチを見る。ブランコを見る。砂場を見る。


「...」


この場所で――何かあった気がする。


誰かと話した?いや、違う。もっと――何か。


しかし、思い出せない。


「何だろうな」


首を傾げて、再び歩き始めた。考えても仕方ない。きっと、気のせいだ。


学校に到着すると、いつもの光景が広がっていた。生徒たちが校門をくぐり、教室へと向かっている。


ハルも下駄箱で靴を履き替え、階段を上る。


教室に入ると、既に何人かが席についていた。その中に、桐生拓斗――通称レンがいた。


「おー、ハル」


レンが手を上げた。体格の良い、元気な男子だ。


「おはよ」


「おはよ」


ハルは自分の席に座った。レンの隣の席だ。


「昨日の続き、やろうぜ」


レンが言った。ハルは首を傾げる。


「昨日の続き?」


「ゲームだよ。昨日、途中だったじゃん」


「あー...」


そうだったかもしれない。記憶が曖昧だが、レンがそう言うなら、そうなのだろう。


「まあ、いいけど」


「よっし」


レンは嬉しそうに頷いた。


教室の扉が開き、水野美香――通称ミカが入ってきた。茶髪のギャルで、いつもスマホを見ている女子だ。


「おはよー」


「おはよ」


ハルとレンが答えた。ミカは自分の席に座り、すぐにスマホを取り出す。


三人は、いつものメンバーだ。


ハルは教室を見回した。いつもの席、いつもの仲間。全てがいつも通り。


でも――一つだけ、違う。


窓際の席が、空いている。


「なんか、変な感じしない?」


ハルが呟いた。レンが振り向く。


「ん?何が?」


「...いや、気のせいかも」


ミカもスマホから顔を上げた。


「どうしたの?」


「いや、何でもない」


ハルは首を振った。きっと、気のせいだ。


授業が始まり、昼休みになった。


ハル、レン、ミカの三人は、いつものように一緒に昼食を取る。


ミカが持ってきたお弁当を開けながら、ハルがふと思い出した。


「そういえば、クロウは?」


その名前を口にした瞬間、妙な感覚があった。誰だっけ、クロウって。


レンが首を傾げる。


「知らね。休み?」


ミカもスマホを見ながら答えた。


「連絡来てないけど」


ハルは、スマホを取り出した。クロウに連絡しようと思ったのだ。


しかし――連絡先を探しても、見つからない。


「あれ?」


レンが尋ねる。


「どうした?」


「クロウの連絡先、消えてる」


ミカも、スマホを確認した。


「あたしも消えてる」


レンも確認する。


「俺も」


三人は、顔を見合わせた。


「...なんでだろ」


ハルが呟く。レンは肩をすくめた。


「バグ?スマホ、たまにあるし」


「まあ、明日来るでしょ」


ミカがあっさりと言った。話題は、そこで終わる。


しかし――ハルの心には、微かな不安が残っていた。


クロウのこと、思い出せない。


いつから友達だったか。どんな話をしていたか。顔は――思い出せる気がするが、ぼやけている。


「...気のせいか」


ハルは首を振って、昼食を続けた。


放課後、ミカは一人でカフェにいた。


窓際の席に座り、スマホをいじっている。SNSを見たり、動画を見たり。いつもの時間の使い方だ。


友達の投稿が流れてくる。誰かの写真、どうでもいい話、自撮り。


ミカも、何か投稿しようと思った。


「なんか書こう」


指が、画面の上を滑る。


「なんか変な夢見た」


そう入力して、少し考える。何の夢だったか――思い出せない。でも、つまらなかった気がする。


「異世界行く夢。マジつまんなかった笑」


投稿ボタンを押す。


自分で読み返して、笑った。


「異世界とか、ないわー」


スマホを置いて、カフェラテを飲む。甘くて、温かい。


窓の外を見ると、人々が行き交っている。普通の日常。平和な世界。


「幸せ」


ミカは呟いた。この日常が――何より大切だ。


家に帰ったハルは、ベッドに寝転んでスマホを見ていた。


通知が来ている。ミカの投稿だ。


「異世界行く夢。マジつまんなかった笑」


ハルは、画面を見つめた。


「...俺も?」


同じような夢を見た気がする。異世界――そんな夢だったかもしれない。


でも、内容は覚えていない。


「いいね」を押す。レンも「いいね」している。


「みんな同じ夢見たのかな」


不思議だが――深く考えない。どうせ、夢だ。


夕食を食べて、宿題をして、風呂に入る。


いつも通りの夜。


ベッドに入り、目を閉じる。


すぐに、眠りに落ちた。


暗闇の中、ハルは夢を見ていた。


壊れた村。崩れた建物。炎が上がり、煙が空を覆っている。


人々が泣いている。叫んでいる。


「やめろ!」


誰かの声。男の声だ。


ハルは、その光景を見ている。しかし――自分が何をしているのか、分からない。


光が爆発する。


建物が崩れる。


そして――自分が叫んでいる。


「なんで!?俺たち正義なのに!」


その言葉の意味が、分からない。


何が正義?何を言っているんだ?


夢の中で、混乱している。


「はっ...」


目が覚めた。


息が荒い。汗をかいている。


時計を見ると、深夜三時だった。


「...夢か」


ハルは、枕に頭を戻した。


何の夢だったか――もう、ぼやけている。怖い夢だった気がする。それだけだ。


「水でも飲もう」


起き上がろうとして――やめた。面倒くさい。


再び目を閉じる。


すぐに、眠りに落ちた。


朝になると――夢のことは、完全に忘れていた。


数週間後、ホームルームの時間。


担任教師が、いつもより深刻な表情で教室に入ってきた。


「皆、少し話がある」


生徒たちは、静かになる。


「長井クロウくんのことだが」


ハル、レン、ミカは顔を見合わせた。


「彼の家族から、捜索願が出された」


教室がざわめいた。


「行方不明になって、三週間になる」


「何か知っている者がいたら、教えてくれ」


しかし――誰も手を挙げない。


ハルも、何も知らなかった。クロウのこと――ほとんど覚えていない。


放課後、三人で校門の前に集まった。


「クロウ、どこ行ったんだ?」


レンが不思議そうに言った。


「知らないよ」


ミカがスマホを見ながら答える。


「...」


ハルは、何も言わなかった。


何か――引っかかるものを感じる。クロウのこと、もっと知っていた気がする。大切な友達だった気がする。


でも――思い出せない。


「まあ、見つかるでしょ」


ミカがあっさりと言った。レンも頷く。


「そうだな」


三人は、それぞれの家へと帰っていった。


数ヶ月が過ぎた。


季節は冬になり、街はクリスマスの飾りで彩られている。


ハルは、いつも通りの高校生活を続けていた。授業、部活、友達との会話。全てが、普通だ。


クロウのことは――もう、話題に出ない。行方不明のまま、捜索は続いているらしいが、進展はないようだ。


時々、ハルは悪夢を見る。


壊れた何か。泣く誰か。光と、爆発と、崩壊。


でも、朝になると忘れる。毎回、忘れる。


レンは、空手部で毎日練習していた。


「うおー!」


拳を振るう。蹴りを放つ。


力を出すのが、気持ちいい。体を動かすのが、楽しい。


でも――時々、理由もなく罪悪感を感じる。


何かを――してはいけないことをした気がする。


「...何だろ」


自分でも分からない。きっと、気のせいだ。


ミカは、相変わらずスマホばかり見ていた。


SNS、動画、ゲーム。時間はいくらあっても足りない。


楽しい毎日。友達もいるし、困ることもない。


でも――時々、説明できない虚無感がある。


「何これ...」


何かが足りない気がする。何か、大切なものを失った気がする。


でも、それが何かは分からない。


一年が過ぎた。


桜が咲き、新しい春が来た。ハルは三年生になった。


放課後、ハルは一人で公園のベンチに座っていた。


大学受験を控えている。進路を決めなければならない。でも――何をしたいのか、よく分からない。


空を見上げる。青い空、白い雲。


「...」


この一年、何も変わらなかった。普通の高校生活。普通の毎日。


でも――何かが、ずっと引っかかっている。


クロウは――見つからなかった。行方不明のまま、もう一年が経つ。


「クロウ...どこ行ったんだろ」


思い出そうとする。クロウの顔、声、話したこと。


でも――全てがぼやけている。まるで、霧の向こうにいるような。


本当に――友達だったのだろうか。


スマホが鳴った。ミカからのメッセージだ。


「明日、カラオケ行こー」


「了解」


返信して、スマホをポケットに入れる。


立ち上がり、帰ろうとして――振り返った。


公園を見る。


ここで――何かあった気がする。大切な何かを。


でも――思い出せない。


「...気のせいか」


歩き始める。


桜の花びらが、風に舞っている。ハルは、その中を歩いていく。


時々――夢を見る。


知らない世界の夢。壊れた街。泣く人々。


でも、朝になると忘れる。


全て――なかったことのように。


俺、何か忘れてる気がする。


ハルは、心の中で呟いた。


大切な何かを。


でも――それが何かは、分からない。


空を見上げる。


「まあ、いっか」


笑顔で、家に向かって歩いていく。


その後ろ姿が、遠ざかっていく。


彼らは、全てを忘れた。


破壊したことも。


助けを求める声も。


崩れ落ちる世界も。


全て――なかったことのように。


そして――普通の日常を生きている。


時々、悪夢を見る。


時々、罪悪感を感じる。


しかし、理由は分からない。


それでも――彼らは生きている。


何も知らずに。


幸せそうに。

読んで下さりありがとうございました!

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