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元職員

(もしかして、オレのことを試してるのか?だとしたらヤッパリ、ここで役にたたないバカや無能だとおもわれると、マズイのかもしれん)

「そもそもの前提として、反体制的な反乱分子のレッテルを貼られたオレを、あの施設のソトにつれだすっていうのは、ほんらいだったら、まずもって、ゼッタイに不可能ってことになる。

 いくら桂さんが地区長とはいっても、一地区の行政トップのチカラだけでは、強制労働施設にいる囚人を、いきたまま、ソトにつれだすことはできない。コレは合ってます?」

 徳吉は、桂のほうを向いていった。

「そのとおり、徳吉君のいうとおりだよ」

 と、桂は答えた。

「じゃあ、ヤツラ施設の連中が、オレのことを、『ソトにだしてもいい』とおもえるような、チャントした理由や動機がひつようになる。

 その理由や動機をかんがえてみると、ヤツラ自身にとって、かかわりあいのあることでなければマズイ。でなければ、施設のソトにだそうとするワケがない。

 もっといえば、ヤツラにとっても、プラスのメリットや利益のあること。あるいは、さらにいえば、ソレをおこなわないと、ヤツラにとって、マイナスのデメリットや不利益のあること。コレを理由にすべきか」

 徳吉は、「ダレかにたいして言っている」というよりも、じぶん自身にたいして問いかけるように、自問自答するようにしゃべっている。

 そして3人は、そのコトバを真剣に、ジッと聞いていた。

「あの施設から、囚人を、いきたままソトにだすことはできない。だったら、死人にすれば、ソトにだすことはできる。

 でもニンゲンは、死んだらソレで終わりで、なにもできやしない。つまり、3人からしたら、これから先、オレになにかをおこなわすことはできない。だから、施設の連中には、これから先、オレが死ぬ予定だと、おもわせるひつようがある。

 ということは、つまり、あくまでも可能性のハナシになるけれど、施設の連中にたいしては、『これからべつの場所で、オレを処刑する』とつたえたとか?

 だからオレを、クルマでつれだしたあと、施設のヤツラは、3人にオレを引きわたした。引きわたしたヤツラは、オレがこれから先、施設とはべつの場所で、処刑されるとおもってるとか?」

「そのとおりですよ。あいかわらず、かんがえをまとめて、ものごとの結論をだすのがウマイですね」

 と、藤柴が答えた。

「なるほど、施設の連中は、オレがこれから、ちがう場所で処刑されるとおもってる。だから、にげるのを阻止するために、わざわざ、睡眠薬かなにかをコーヒーにいれて、オレを眠らせてから、クルマに乗せたってワケか。

 ヤツラからすれば、もしもオレをいきたまま、ソトにつれだそうとすれば、『処刑されると警戒したオレが、アバレたり、にげだすかもしれない』とかんがえるのは、しぜんな発想というか、かんがえかたかもしれない」

「ホントウに、イヤな発想ではありますがね。施設の連中からすれば、そうかんがえるのは、仕方がないかもしれないです。

 なんせ、もしも囚人をにがしたなんて、大失態をおかしたとすれば、ヤツラ自身が、上の連中から粛清されかねません。

 ワタシたちのほうに、施設の監視員から、徳吉さんを眠らせてから、クルマに乗せて、引きわたすとれんらくがきたときは、カナリ不ユカイな気分になりましたよ。でもまあ、ヤツラからすれば、しぜんな発想なんでしょうね」

 藤柴もまた、徳吉のかんがえに賛同をした。徳吉は、さらに熟考をかさねていく。

「じゃあ、そもそもなんで施設の連中は、施設のソトにつれだすことを許可したのか。っていうことが、ギモンになってくるか。

 いくら桂さんが、オレのことを、施設からソトにだしてから処刑すると、施設の連中につたえたり、依頼をだしたとしても、ヤツラがスンナリと、その許可をだすとはおもない。

 つまり、ヤツラからすれば、『一旦施設のソトにだすほうが良い。そのほうが、プラスのメリットがある』とおもうだけの、なにかしらの理由・ひつよう性・動機がないといけない。

 そうでなければ、地区長からの指示や依頼とはいっても、ちがう行政組織である強制労働施設のニンゲンが、許可をだすはずがない。コレは合ってる?」

 徳吉は、藤柴にたいして聞いた。

「ええ、そのとおりですよ。よくそこまでわかりましたね」

「だったら、コレはカンゼンに、オレの想像というか、推測になるんだけど、桂さんが、面会のときにオレに見せた、むかしの書類がかんけいしてるとか?

 この書類に書かれてることが、施設のニンゲンにとっても、おおいにかんけいしている。だから、この書類をむかしつくったオレを、なにもさせずに、ただコロシてしまうっていうのは、ヤツラにとっても、おおきなマイナスのデメリットがある。というカタチになってる。コレはどうだろうか?」

 ここまで徳吉がいうと、桂がクチをひらいた。

「ふたりのいうとおり、徳吉君はするどいというか、ものごとをまとめて、テキセツな仮説やけつろんをだすのがはやいね。そのとおりなんだよ。

 じつは、徳吉君がむかしつくった書類を基にして、あの施設の連中は、施設の維持管理や修繕だったり、上の行政組織からもらう、交付金の申請や、許可申請の書類をつくっていてね。

 とはいっても、君がこの書類をつくったのは、もう11年以上も前になる。だから、こまかいところをなおさないと、今のシゴトに支障がでかねない。というか、イロイロと、もんだいやトラブルがおきてしまった。

 もっというと、オレが地区長をしてる行政府の支所でも、君がむかしつくった書類を、今もつかいまわしてることが発覚したんだよね。

 ソレで、この書類をつくった徳吉君は、今どこにいるかしらべたら、この強制労働施設にいることが判明した。

 だから、なんとか君にたいして会いたいと、施設のニンゲンにつたえて、何度かやりとりをしてたら、なんと、この施設のニンゲンも、君がつくった書類をつかいまわしてる。っていうことが、わかったってワケなんだよ」

「そんなことがあったんですか。それにしても、まったくべつの行政組織の強制労働施設が、なんでまた、オレがむかしつくった書類をつかってたんですか?

 キホン的に、徹底的なタテ割り行政のはずなので、ヨコのつながりというか、れんらくなんて、まずないとおもうんですけど。

 だから、施設のニンゲンが、支所の下っ端職員だった、オレのつくった書類を手にいれて、さらに、つかいまわすなんていうのは、アリエナイとおもうんですが」

「徳吉君のいうとおりで、フツウだったら、まずアリエナイ。でも、どうもチョットした例外というか、イレギュラーな事例が発生したらしくてね。

 ソレはなにかというと、支所のなかにいた職員が、罪を犯してつかまったんだけど。コイツが一時期、君がいた施設とは、べつの施設に収容されたんだよ。

 ソレで、たまたまそのとき、この施設で、大キボな改修工事があった。そうなると、工事の業者や、上の行政組織とのやりとりが、どうしても、ひつようになってくる。

 だから、その施設の職員は、ソイツにたいして、支所にいたときに、そういうシゴトをしてないか。あるいは、役にたつような書類がないかと、聞いたらしいんだよね。

 そこでソイツは、ここで役にたてば、じぶんの罪がゆるされるか、あるいは、かるくなるかもしれないと、淡い期待をいだいた。

 ソレで、支所にいたときに、徳吉君がつくった書類があるのをおもいだして、施設のニンゲンにたいして、つたえたらしいんだよ。

 こうなれば、あとはもう、カンタンなハナシで、つかまった職員の罪をしらべるために、書類をしらべさせろ。とかなんとかいって、その施設の職員は、支所にあった君がつくった書類を、手にいれたってワケだよ」

「そうだったんですか。なんというか、じぶんの知らないところで、イロイロと、勝手にうごいたヤツがいんですね」

「書類をつくったっていう、当のほんにんのいないところで、スキ勝手にやってたヤツが、いたっていうことだね。

 ソレで、ソイツが収容された施設に、君がつくった書類が渡ったってワケなんだけど。そのうち、ほかの施設も、老朽化とかでも、改修や修繕の工事が、ダンダンとおこなわれることになった。だから、強制労働施設同士で、書類をコピーしてわたすことになった。

 そして、とうとう、君がいた施設でも、君がむかしつくった書類を、つかいだしたってワケだね」

「そのせいで、オレがいたあの施設でも、この書類をつかったから、つぎつぎに、もんだいやトラブルが発生したんですね?」

「そうなんだよね。徳吉君がいたあの施設でも、つぎつぎに、もんだいやトラブルが発生するようになってきた。

 ソレで、強制労働施設を管理する、上部の行政府から、目をつけられかねない状態になった。そうなれば、施設にいる職員が、せきにんを追及されかねない。つまり、粛清の対象になりかねない。

 だから、この書類をつくったニンゲンが、今その施設にいることをつたえて、『もんだいやトラブルをショリして、解決させるために、その書類をほんにんに見せて、なおさせらどうか』とつたえたんだよ。

 ワタシが地区長をやってる支所でも、この書類をつかったために、もんだいやトラブルがおきてる。

 だから、ほんにんに会って、イロイロとハナシを聞いたり、なおさせたい。そのとき、そちらがつかってる資料や書類も、一緒になおさせれば良いとおもうが、どうかと聞いてみたら、あいても乗ってきたんだよね。

 ソレで、面会にいくときに見せる書類だけでは、どうしても不十分であり、支所にある分の書類も、ほんにんに見せなければならない。

 ただそうなると、書類の量がおおいから、すべての書類というものを、施設に持っていくことはできない。ソレに、そもそも最初から、支所からソトに持ちだすことができない、機密書類もふくまれてる。

 だから、ほんにんをソトにつれだして、支所までつれて行き、書類を見せるひつようがある。処刑するのは、そのあとで良い。つかうだけつかったあと、コチラで処刑する。

 ほんにんにたいしては、『書類をチャントなおせば、罪をかるくして、イノチをたすけてやると、ウソをいえば、必死になっておもいだして、直すはずだから』と、こういう風につたえたんだよ」

「なるほど、だからオレは、施設のソトにでることができたんですか」

「そういうことになるね」

「ちなみに、オレがむかしつくった書類を、強制労働施設のニンゲンにつたえたっていう、捕まった支所の職員は、そのあと、どうなったんですか?ホントウに罪はかるくなったんですか?」

「つかまった支所の元職員は、罪をかるくする。というヤクソクを反故にされて、結局のところ、処分されたようだよ」

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