ギモン
「まったく、やりかたが荒っぽいというか、雑というか、スマートさのない連中ですね。アレは、ヘタクソな見本ですよ」
と、施設のようすを見ながら、高井が、ひとりごとのようにつぶやいた。
徳吉としては、より深刻な感想を持たざるをえない。
(もしも3人が、オレを施設からつれださなければ、もしかしたら、オレもあのなかにはいってて、コロサレてたのか)
今げんざい、じぶんが生きているのが、紙一重の差であった。ということに、身ぶるいを感じざるをえない。
そして、ソレと同時に、「なぜ3人は、あの施設からじぶんをつれだし、イノチを救ってくれたのか」というギモンが湧いてきた。
なにせ今の徳吉は、囚人あつかいなのだ。その徳吉をたすけだすということは、気をつけないと、じぶんたちもまた、共犯者と見なされて、処刑の対象とされかねないはずである。
(なんでこの3人は、キケンを冒してまで、オレをたすけだしたのか。その理由や動機が、サッパリわからん)
ソレと同時に、
(なんでまた、睡眠薬かなにかをいれて、ムリヤリつれだしたのか)
というギモンもまた、湧いてきた。
「チョット3人に、聞きたいんだけど」
徳吉は、じぶんが抱いたギモンを、3人にたいしてつたえはじめた。
「そもそもの前提として、3人は、オレをあの施設から、たすけてくれたんだよね?」
「ええ、そうです」
と、藤柴が答えた。
「ということは、たすけだすだけのハッキリした動機やもくてきというか、理由があるとおもうんだけど。
ちなみに、もしもオレが、あのまま、あの施設のなかにいたら、今見てる光景のなかに、オレもいた。っていうことでいいかい?」
「そのとおりです。われわれ3人は、あの施設の囚人が、まとめて処刑されるっていう情報をつかんだんです」
「まとめてっていうのは、そのコトバのとおり、全員が処刑されるっていうことかい?」
「ええ、全員です」
「全員かあ」
徳吉は、「一歩間違えば、じぶんも処刑されていた」ということを、あらためて認識した。そして、カラダが振るえてくるのを止められそうにない。
藤柴は、ハナシをつづけた。
「ソレで、その囚人のなかに、徳吉さんがいるとの情報を手にいれたので、こうして脱出させるために、一芝居打ったワケですよ」
「なるほどねえ」
(じぶんの身のキケンをかえりみずに、オレをたすけだしてくれたことについては、感謝のキモチしかない)
「じゃあ、もっと突っこんだハナシを聞くけど、そもそもの前提として、なんでキケンを冒してまで、オレをたすけだそうとしたんだい?
単純に、知りあいのイノチをたすけるためだ。といわれても、ソレだけでは、ここまでのキケンを冒すっていうのは、理由として、すこし弱い気がする。
べつにコレは、君たちの友情を、疑うっていうワケじゃないんだけど。単純な友情だけでは、ここまでしてくれないんじゃないかって、おもってしまうんだよ」
徳吉のこのコトバにたいしては、藤柴だけではなくて、高井も桂も、すこし表情をうごかした。
「あいかわらず、理づめでかんがえるのが速いですよね。徳吉さんは」
ここではじめて、高井が口をひらいた。
「ここまでカンづいてるんだったら、ハナシが速いです。そうなんです、オレたち3人が、こんかい徳吉さんをたすけたのは、単純な友情だけじゃなくて、ハッキリとした動機やもくてき、理由や意図があったんです」
「じゃあ、その動機やもくてき、理由や意図っていうのを、できれば聞きたいんだけど」
「ソレはですね、ズバリいってしまえば、徳吉さんに、やってほしいシゴトがあるからなんです」
「やってほしいシゴト?」
(イノチのキケンを冒してまで、オレをたすけだして、やってほしいシゴトっていうのは、一体なんなんだ?)
「ソレはもしかして、施設にいたときに、桂さんがオレにみせた、むかしやってたシゴトにかんすることとか?」
「いえ、そういうワケではないんです。桂さんが面会のときに、以前、徳吉さんがやってたシゴトの書類を持ってきたのは、これからやってほしいシゴトじゃなくて、こんかいの脱出のためなんですよ」
「脱出のため?」
「ええ、そうです」
(なんか、イマイチ要領を得ないんだが、どういうことだ?)
ここまでいわれて、徳吉は、すこしかんがえこんでしまった。これから先、一体なんのシゴトをさせるのかはわからない。
だがしかし、できることならば、1から10までのすべてを、あいてにたいして聞くのではなくて、今のじぶんが知った情報・事実から、じぶんなりに、ソレを予想し、推測・推理するほうが、良いのではないかとおもえてきた。
(どんなシゴトなのかは知らんが、あるていどは、じぶんの有用性を示しておかないと、マズイかもしれん。
まったく役にたたないとおもわれたら、いくらむかしの知人とはいっても、これから先、どういうあつかいになるかわからん)
「せっかくだから、チョットじぶんでかんがえてみるよ」
こういうと、徳吉はひとり、熟考に熟考をかさねだした。今までに、じぶんが見たり、聞いたりしたことを、アタマのなかで整理して、マトメだした。
その様子を、3人とも、ジッと見ていた。




