表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

文系特化

「ん?なんだよとつぜん」

 藤柴の発言にたいして、高井は、おもわず聞きかえしてしまった。

「だってさあ。11年近くも強制労働施設にいれられてて、ソレでとつぜん、むかしの知りあいが訪ねてきて、死人というカタチでたすけだされた。

 その上、ついさっきまで一緒にいた、施設の囚人たちが、つぎつぎに、処刑されてるのを見せられた。イッポ間違えたら、じぶんがそういう目に遭っていた。

 こういう状況だったら、ダレでもパニックになって、アタマがまわるワケない。たぶん、オレたちのなかで、一番カンがするどい高井だって、そういう状態になったら、アタマがまわらんだろう」

「ソレはまあ、たしかにそうか。そういわれると、そうかもしれん」

「だろ。ソレがフツウっていうか、アタリマエのはずなんだって。でもあのヒトは、多少はこんらんしてたが、パニックってほどじゃなかった。

 ソレで、その処刑される光景を目にしながら、オレたちがたすけだした動機や狙い、理由やもくてきを、わずかな情報や事実から、ズバッと言いあてたけど、コレも、良くかんがえてみれば、チョットおかしいんじゃないか?

 ああいう状況下で、つまり、ほんのすこしの手違いで、じぶんが死んでたかもしれん状況なのに、些細な情報や事実を見のがさず、すばやくソレをまとめ上げて、テキセツな仮説やけつろんを導きだすっていうのは、フツウのニンゲンに、できるような芸当とはおもえん」

「たしかに、ソレはあるかもしれん。たぶん、あのヒトのはカンじゃないな。オレとは、というか、オレとオマエとは、チョット違う気がする」

 高井は、もうすこし、なにかいいたそうであったが、どうもソレ以上は、うまく言語化して、コトバすることができないようすであった。

「オマエのいうとおりだとおもう。オマエは、オレ以上にカンがするどい。でも、オレよりもリクツがすくないから、うまくいえないんだろうけど。

 たぶん、オマエがいいたいことを、オレなりにいうとだ。オレたちは、まずアタマのなかに、なにかしらの案・けつろん。というか、ゴールのようなモノがうかぶ。そのあとに、ソレがあたってるかどうか、アレコレと、かんがえるタイプなんだとおもう。

 いいかたを変えると、アタマのなかに、まずは絵というか、映像がうかぶ。ソレで、その絵や映像がうかんだら、ソレを、コトバやリクツでもって、アレコレと、合ってるかたしかめる。

 ソレにたいして、あのヒトは、たぶん真逆なんだろう。いきなり仮説・けつろんが、アタマにうかぶことはない。

 たぶん、そうじゃなくて、あつめた情報や事実を、もっというと、それらのカケラを積みかさねて、うまく組みあわせたり、組みたてていって、カタチづくっていくんだろうね。レンガを積みあげて、タテモノをつくっていく工程に似てるかもしれん。

 さっきの絵や映像でいうなら、あのヒトはたぶん、アタマのなかで、最初に絵や映像は、見えてないとおもう。

 そうじゃなくて、たぶん、コトバを積みあげて、つなぎあわせて文章にして、そのイミを、つくっていくんだとおもう。

 オレやオマエと違って、まず最初に、仮説・けつろん、絵や映像が、アタマにうかぶことはない。

 だからこそ、あたらしいジケン・できごと・ものごとを、すぐに理解したり、イキナリ答えがわかるっていうワケじゃない。

 というよりは、かんがえていくうちに、ダンダンと、答えが見えてくる。というか、仮説・けつろんが、組みたてられてくる。

 ダンダンとコトバがあつまり、つながっていって文章になり、イミを持って、絵や映像のようになってくる。そういうタイプなんだとおもう」

「つまり、オレとオマエは理系で、あのヒトは、文系っていうことになるのか」

「端的にいえば、そういうことになるか。もっというと、高井、オマエはカンゼンに、理系特化タイプのニンゲンだろうね。

 ちなみに、オレも理系のニンゲンなんだけど、やや文系に近いというか、文系寄りの部分もある。ソレにたいして徳吉さんは、カンゼンに、文系特化っていうタイプのニンゲンだとおもう。

 ソレで、その文系特化っていうタイプなんだろうけど。あのヒトは、さらに、特殊なタイプかもしれん」

「というと?」

「ものごとを、コトバやリクツをつかって、それらを積みあげてかんがえるっていう、文系のニンゲンとはいっても、フツウだったら、あるていどは、カンをはたらかせるというか、すこしくらいは、リクツやコトバを省くだろう。

 10割のうち、コトバやリクツで表現したり、せつめいするのは、大体半分くらいか、おおくても、8割は超えることはまずない。

 つまり、文系特化タイプのニンゲンとはいっても、のこりの5割から2割は、リクツやコトバを省いて、カンというか、感覚に頼るんだよなあ。

 でもあのヒトは、極端なハナシになるが、カンにたよる部分が、ほとんどゼロに近いかもしれん。

 つまり、1から10まで、ほとんど10割すべてのことを、リクツやコトバをつかってかんがえて、判断し、理解し、把握してるような気がする。

 正直なところ、今まで生きてきて、あのヒト以外に、こういうタイプのニンゲンっていうのに、オレは会ったことがない。

 オレやオマエみたいに、カンをはたらかせるニンゲンっていうのは、あるていどはいたとおもう。

 まあ、ソイツらのカンのするどさが、どのていどのレベルか。っていうのはハナシがべつとしても、まずはカンをはたらかせて、そのカンが、あるていどハズレない。そういうタイプのニンゲンっていうのは、オレたちのほかにも、すこしはいた。

 あるいは、カンは弱いけど、その分だけ、理づめのかんがえをしてて、カンに頼る部分がすくない。っていうタイプも、あるていどはいた。

 でもあのヒトは、それらとは、チョット違うとおもう。じぶんが見たり、聞いたり、体験したことを、あるいは、アタマのなかでかんがえたことを、1から10まですべて、言語化してコトバにして、ソレを理づめで積みあげて、組みたててる気がする。

 コレはあくまでも、オレの想像になるんだけど、こういうタイプのニンゲンは、フツウだったら、ほとんどカンがなくて、感覚がニブイもんだから、予想外の状況に出くわすと、パニックになるはずなんだよ。

 でもあのヒトは、とつぜん強制労働施設からつれだされても、その上、目のまえで、囚人たちの処刑の光景を見せられても、ほとんど、動揺してないように見えた。

 コレって、フツウだったら、もっと動揺したり、パニックになったりして、現状を把握するのに、ながい時間がかかるとおもうんだけど。

 でもあのヒトは、そういうようすは、ほとんどなかったようにおもえる。オレにはそう見えたんだけど、どうおもう?」

「そのとおりだ。オレから見ても、ほとんど動揺してなかったし、パニックになってなかった」

 と、高井は答えた。

「オマエから見ても、そうおもったか。それにしても、コレってかなり、あのヒトの特殊性っていうものを、表してるかもしれん。

 オレが想像するに、なんでほとんど動揺せず、パニックにならなかったのかっていうと、おそらくソレは、あきらめてるからだとおもう」

「あきらめ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ