キョヒ権
徳吉は、3人にたいして聞いてみたのだが、すこしのあいだ、3人は、なにもいわなかった。しばらくして、最初にクチをひらいたのは、藤柴であった。
「おどろきました。ほぼ正解ですよ。なんでわかったんです?」
「自信があったワケじゃないけどね。そもそも、ハッキリとした証拠や確証、裏づけがあるワケじゃないから。
あくまでも、今までの君たちの発言や行動を基にした、カナリ荒っぽい、雑な推理というか、憶測・推測にすぎない。推理小説でいったら、穴だらけの推理になるから、まかり通らんとおもう。
でもまあ、げんじつのセカイでのハナシだったら、推理小説みたいに、すべての点において、確実に証明することができなかったとしても、あるていど、ハナシのツジツマが合えば、十分だとおもう。
ちなみに、オレがコレをかんがえるキッカケになったのは、高井くんのいったコトバなんだよね」
「え?チョット待ってくださいよ。オレはなにか、ヒントになるようなことをいいましたっけ?そういうことは、まったく言ってない自信があります」
「もちろん、ぐたいてきなヒントになるようなことは、まったく言ってない。ただ、さっき高井くん、連中のやってることを見て、『やりかたが荒っぽいというか、雑というか、スマートさのない連中だ』って、ポロっと言ってたんだよね。
このコトバって、深読みすれば、『じぶんだったら、もっとうまくやる』ということにも、捉えることができる。つまり、『特殊ケイサツと、似たようなことをする』っていうことになる。
もっといえば、もうすでに、ソレをおこなっている。だからこそ、『連中のやりかたが、雑で荒っぽく、スマートさがないとおもえた』ともいえる。
特殊ケイサツと似たようなことを、これからおこなうか。あるいは、もうすでにおこなっている。そして、わざわざオレにたいして、連中がおこなってる、処刑のようすを見せた。
これらのことから、『3人が、これから先、オレにおこなってほしいシゴトっていうのは、特殊ケイサツと、似たようなことかもしれない』と、こういう想像というか、推測や仮説が成りたつ。
ソレで、もしもコレがあたってるんなら、死んだニンゲンであるオレがかつどうするのは、体制の手というか、管理が届かない、第4地区になる可能性が、カナリたかい。
と、以上が、オレがかんがえたことだけど、どうだろうか」
「そうですか。オレが無意識にいった、些細な言葉から、そんなことまで分かっちゃったんですか」
高井が、おどろくようにいった。
「徳吉さんのいったことは、ほとんど正解なんです。じゃあ、あとはもう、こまかいところをつたえるだけですね。
くわしいことは、クルマのなかで移動しながら、せつめいしたいとおもいます。ソレで良いですか?」
と、藤柴が聞いてきた。
「もちろん。オレはぜんぜんかわまんよ」
こうしているあいだにも、強制労働施設での特殊ケイサツによる凄惨な処刑というものは、ドンドンと進められ、おこなわれていた。
「ちなみに、徳吉さんが、御自身でおっしゃってたとおり、この光景をわざわざ見せたのは、徳吉さんにたいして、もう後もどりできないというか、断ることができないと、覚悟をキメてもらうためだったんです。ソレをこれから、つたえようとしてたんですが。
でもまあ、ご自身でソレが分かっちゃったんですから、コチラがイチイチ、ソレをいうひつようはないですね。
となると、この胸クソのワルイ光景を、もうコレ以上、見てるひつよう性や理由はないんですが。どうします?まだ見ていきます?」
と、藤柴は聞いてきた。
「君のいうとおり、こういう胸クソのワルイ光景を、コレ以上見てると、コッチのキモチというか、気分というか、精神面でワルイ影響をうけそうになる。だから、もう見るひつようはないよ」
「了解しました。あ、そういえば、徳吉さん、ご自身でいってたんで、かくにんはひつようないとおもうんですが、コチラの提案というか、依頼にたいしては、返事はOKっていうことで、よろしいんですよね?」
「まあね。っていうか、そもそもオレに、キョヒ権ってあったんだっけ?。もしも断ったら、あの施設にたいして、送りかえされることになるんだよね?
ということになれば、連中にコロサレルことになる。だったらもう、キョヒ権なんてないじゃない」
徳吉としては、苦笑せざるをえなかった。
「ですよねえ」
藤柴も、苦笑しながら答えた。




