死んでるニンゲン
「そもそも、オレをあの強制労働施設からたすけだすとき、その理由として、『ほかの場所で、処刑するから』っていうカタチにしている。
コレはつまり、今後のオレは、『社会的には、すでに死んでるニンゲン』というカタチになる。
あの施設の連中は、オレが死んだとおもっている。いいかたを変えれば、オレは、生きながら死人になった。
死人というカタチでかつどうするなら、ソレはおそらく、オモテにでることができない。あるいは、だせないようなことをする。こういう可能性が、カナリたかい。
ソレは、なんていうか、あまり大っぴらにできないことかなと。そういう内容のシゴトだろうと、おぼろげながらも、想像することができる。
ばあいによっては、反体制的なかつどうだとか、今の体制や統治機構にたいして、なにかしらのカタチで打撃をあたえたり、圧力をかけたり、変えようとすることかもしれない。そうおもいますね」
こういうと、徳吉は、施設においておこなわれている、処刑の状況にたいして目を向けた。
「今げんざい、あの施設で、特殊ケイサツの連中が、受刑者を処刑していますが、もしかしたら、3人が、オレにさせたいっていうシゴトも、特殊ケイサツと、似たようなものではないかなと。
ヤツラがおこなってるような、情報収集だとか、諜報等のかつどうのシゴトをするんだったら、たしかに、オモテにだせないこともおおい。
ばあいによっては、こういうタイプのかつどうをするとき、社会的に死んでるニンゲンのほうが、つごうが良いかもしれない。なにせ、ウラでうごくわけだから、目立ってはいけないので。
いいかたがワルイですが、なにかあったときに、いきてるニンゲンがおこなってると、ソイツと会ったり、かかわってるニンゲンや組織にたいして、イロイロと、疑いの目が行きかねない。
ソレにたいして、死んでるニンゲンだったら、『そんなヤツは知らない』と、主張することもできる。
コレはまあ、露骨にいってしまえば、トカゲのシッポだとか、スケープゴートっていうヤツになる。つまり、切りすてやすいともいえる。
こういう視点にたって、イロイロとかんがえてみると、死んでるニンゲンであるオレが、これから先におこなうことっていうのは、特殊ケイサツのような、情報収集だとか、諜報等のかつどうのシゴトっていうのが、妥当とおもえる。
となると、じゃあ、『どこの場所で、なにを対象に、ソレをおこなうのか』ということになる。コレが重要になってくる。
けれども、オモテ立ってかつどうすることができず、かつ、死んだことになってるニンゲンに、なにかをさせるんだったら、ソレはおそらく、フツウのニンゲンが住んだり、かつどうしてる場所ではない。
つまり、体制外というか、体制が管理してない場所で、おこなうとかんがえるのがムリがなく、しぜんとおもわれる。
だったら、その場所とは、『体制が管理しておらず、ほとんど野ばなしになってる』っていうところになる。たとえば、第4地区でのかつどうとか」
徳吉は、こういいおえると、3人のカオを見た。すると3人とも、カオから表情というものが、ほとんど消えていた。
ソレは、「どういう表情・反応をすればいいのか、良くわからない」といった感じのカオであった。戸惑っているともえた。
「ハナシをつづけると、これまた、そもそものハナシになるけれども、今げんざい、あの施設でおきてる、特殊ケイサツによる受刑者の処刑。
コレを、こうしてオレにたいして見せるのは、『なにかしらのカタチで、意味合いというか、もくてき・理由がある』とかんがえるほうが、ムリがなく、しぜんな気がする。
たんじゅんに、オレをあの施設から、ソトにつれだすだけだったら、ああいうフザケタできごとを、わざわざ、オレにたいして見せる理由、ひつよう性というか、必然性は、ほとんどない気がする。
じゃあ、なんでわざわざクルマを止めて、この場所に留まって、ああいう光景を、オレにたいして見せているのか。
その理由や動機、狙い・もくてきとかを想像してみると、まず第一に、オレにたいして、『もしもオレが、あのまま施設にいたら、コロサレていた。だから、もう戻ることはできない。断ることはできず、にげ道はない。断る選択肢はない』と、おもわせることかと。いいかたがワルイけれども、強制的に協力者にするため。
第2に、『コレから先、似たようなことをやってもらう』ということを、間接的に、つたえたかったからかと。
つまり、ときにはキケンがあったり、ヨゴレるシゴトもしなければならない。ということを、暗示させるために、あえてアレを見せた。
このふたつの理由・動機・もくてきから、オレにたいして、わざわざあの光景を見せたとおもうんだけれど、どうでしょうか?」




