エスパー
「ふたりが?」
「そうなんだよ」
「ふたりが、もしかしたら徳吉くんは、コイツに、罪をなすりつけられたんじゃないか。と、いいだしたんだよ。
たしかに、コイツのほかのおこないを見てみても、そういうことは、十分にありえるだろうと、オレもおもえてね。
ソレで、今さっき、徳吉くんのクチから、元上司に罪をなすりつけらたと聞いたときに、ヤッパリそうかとおもってしまったよ」
「そうですか、ふたりがソレに、気づきましたか」
徳吉は、高井と藤柴のほうをみた。すると藤柴が、
「さっきもいいましたけれど、オレが知ってる徳吉さんっていうニンゲンは、バカな不正行為をおこなって、じぶんでじぶんのクビを絞めるようなタイプには、おもえなかったんです」
といった。ソレを聞いていた高井も、
「そうなんです。オレもそうおもいました」
といったのであった。
「ふたりがそういうので、支所長のオレとしても、チャントかくにんしたほうが良いとおもえてね。ソレで、君が一体どういうニンゲンなのか、あらためて、会ってみたいともおもった。
むかし、君がつくった書類の件で、イロイロと、聞いておきたいこともあったし。ちょうど良く、あの施設に会いにいく理由というか、口実ができたってワケだね」
「間接的に、オレがアイツをハメツさせた。たしかにまあ、そういう見方も、できるといえばできそうですね」
「そうなんだよ。君がつくった書類を、アイツは勝手につかって、じぶんの罪をかるくしようとした。でも、ソレが結果的に、じぶんの身のハメツを招くことになった。
でもまあ、じぶんがハメツさせた部下がつくった書類が、キッカケというか、理由・原因になって、じぶんが処刑されてハメツしたんだから、因果応報というか、自業自得ともいえる」
「因果応報、自業自得ですか」
(アイツは、オレがつくった書類がキッカケ・理由・原因になって、処刑されてたのか。たしかにソレは、桂さんのいうとおり、因果応報というか、自業自得といってもいいかもしれん。身から出た錆というか、じぶんで蒔いたタネが実ったというか。
それにしても、妙なカタチで縁がつながってる気がする。アイツのせいで、オレは濡れ衣をかぶせられて、じんせいをハメツさせられた。カンゼンに、じんせいのレールを狂わされた。
このときのウラミは、正直なところ、これからもずっと、持ち続けることになる。一生わすれることはできん。
でも、オレをハメツさせたソイツ自身は、オレがつくった書類がキッカケというか、理由・原因になって、処刑されて、ハメツしてやがった。
そして、その書類がキッカケになって、こうして3人が、オレにたいして会いにきて、オレをたすけだしてくれた)
巡りあわせの縁というものを、徳吉としては、感じざるをえなかった。と、ソレと同時に、これからのことが、ダンダンと気になってきた。
「オレを陥れた、元上司のアイツが、オレのつくった書類がキッカケ・理由・原因になって、処刑されたのであれば、オレとしては、意図せず、間接的にではありますが、じぶんのチカラで復讐することができた。と、こうかんがえることができそうです」
「そうだね。しかも、じぶんの手を汚さずに、復讐することができたんだから、あるイミで、もっともうまくやったともいえる。完全犯罪といってもいいかもしれない」
「なるほど、たしかにソレは、そうかもしれませんね。復讐するとなると、どうしても、じぶんの手を汚さなければならない。でも、そういうことを、せずに済んだ。
ということであれば、オレとしても、まあ不本意ながらも、じぶんの過去にたいして、ケリをつけることができたとおもえます」
「ソレはたぶん、良いかんがえだとおもう。いつまでも、むかしのことにこだわってると、今げんざいや、ミライをギセイにしかねん」
「ホントウに、桂さんのおっしゃるとおりだとおもいます。いくら悔やんでみたところで、タイムマシンがない以上、過去のことを、あとから変えることはできませんし。
ソレで、桂さんが今おっしゃったとおり、オレも今げんざいや、ミライについてかんがえてみたいんです。
オレがむかしつくった書類をつかって、ソレにかんすることを聞きだしたあと、ほかの場所で、オレを処刑する。こういうカタチで、あの施設から脱出させた。コレはわかりました。
じゃあ、そもそもの前提として、『脱出させたあと、オレは一体、これから先、なにをすればいいのか』っていうことなんですが。
じぶんなりに、イロイロとかんがえて、想像してみたんですが。聞いてもらっていいですか?」
この徳吉の問いかけにたいして、桂は答えた。
「その件については、ほんらいなら、コチラのほうから、チャントいうべきところなんだけど。せっかくだから、徳吉くんのかんがえた意見や内容を、聞かせてもらえるならアリガタイ。
べつにコレは、君のことをテストするだとか、試すっていうワケじゃないよ。でも、もしもホントウに、コチラの狙いや意図というか、動機やもくてきに、君が気づいたんだったら、ソレはもう、君のチカラというか、能力のすごさを証明することになる」
「いえ、もちろんハッキリとしたことなんて、わかってません。ですから、いきなりズバリと、けつろんをいうことはできまん。ですので、順序だてて一個ずつ、ハナシをしていきたいとおもいます。
となると、どうしても、まどろっこしい言いかたになるかもしれませんが、このことは、承知してください」
「もちろん、ソレでぜんぜんかまわない。そもそも、コチラがまったくなにも、ヒントをだしてないワケだし。フツウだったら、コチラの狙いや意図、動機やもくてきなんて、わかるワケがない。
それなのに、もしもホントウに、ソレを見抜いたんだったら、ソッチのほうがフツウじゃない。というか、ありえないことだよ」
「オレも正直なところ、まったく自信はありません。なんせ、ぐたいてきなヒントは、まったくもらっていないので。
ですのでまあ、コレはもう、ハズレたらしょうがない。っていう程度で、言おうかとおもってます」
ここで、藤柴がハナシにはいってきた。
「オレも、ソレで良いとおもいますよ。でもまあ、コチラがいいだすまえに、徳吉さんのほうから、オレたちがたすけだした意図や狙い、動機やもくてき、理由をいいだすっていうのは、チョット興味ぶかいですね。
この件については、今までのところ、オレも桂さんも、高井も、ひとこともいってないですし。
それにもかかわらず、コチラの意図やねらい、動機やもくてき、理由に気がついたんだったら、ソレはもう、徳吉さんは名探偵どころか、エスパーといってもいい気がします」
「藤柴くんもいうねえ。エスパーっていうのは、チョット大げさな気もするけど。でもまあ、君のいうとおり、ヒントがまったくないなかでの想像というか、仮説だから、期待しないでほしい」
徳吉は苦笑しながらいった。そして、3人にたいして、じぶんのかんがえた想像・仮説というものを、せつめいしだした。




