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おにぎりカフェいろは  作者: 瑞谷樹梨
7/16

おにぎりカフェいろは 昼

朝イチの常連の皆様がお帰りになり

昼が近づいてくるとだんだんとお客様が増えて来ます。


女性グループだったり会社員のように見えるかたもいますしSNSを見て来てくださったかたもチラホラいます。

この時間帯がいちばん忙しいのです。


【おにぎりカフェいろは】にはランチメニューはありません。

いつでもこのメニューですし、このお値段なんです。

おにぎり2つはお好きなものを選んでください。

他にはお味噌汁とお漬物がついています。


「私、おにぎりプレート。おにぎりは鮭アボカドとツナマヨでお願いします」

「私もプレートでおかか昆布と枝豆チーズで」


「はい。おにぎりプレート2つ。…鮭アボカドとツナマヨのお客様と…おかか昆布と…枝豆…枝豆…チーズのお客様…少々お待ちくださいませ。食後のドリンクはいかがですか?」


紗代子は紙の伝票に注文を間違えないように書いて厨房の夏実に届けます。


「すいませーん!」

「はーい!少々お待ちくださいませー!」


次々にお客様がやって来ます。


「ああもう、もっとテキパキ動けたら」


紗代子さんはもどかしく思いますが急いては事を仕損じるというじゃない、と自分に言い聞かせながら次のお客様のもとへ行くのです。


夏実も狭い厨房で忙しく動きながら注文の品を作り上げていきます。


「はい!3番テーブルのご注文お届けしてくださーい!」


 朝とは違って変わったメニューを頼むかたが多いこの時間は実は紗代子にはちょっとしんどいのです。

ですから今日は大学が夏休みに入った夏実の弟の七生に手伝ってくれるよう頼みました。


「はい!お待たせしました!おにぎりプレートのたたき梅とキムチーズです!こちらは大葉の醤油漬けとめんたいポテサラですね。もうひとつはすぐ持ってきますね。お待ちください!…お待たせしました!こちらはしば漬けチーズと甘酢生姜!食後のドリンクはまたお声かけくださいね!」 


紗代子は慣れて来たとはいえ、クルクル動ける年でもないので『着実に』をモットーとしてます。

テキパキと軽快に動き回り、記憶力も良い七生を見てると「若いって良いわねぇ」と呟いてしまうのでした。


◇◇◇


「ひと段落ついたから、おばあちゃんは休憩とってね。七生、今日はありがとう。助かったわ。おにぎり食べていきなさいよ。何が良い?」


 紗代子は2階の休憩室に向かいます。

2階は改装せずに、以前のままの部屋になっていますのでそこでゴロリと横になるのです。

はじめは行儀悪い気がしましたが、こうでもしないと体が持ちません。無理は禁物です。


「はあ〜疲れたね。夏休みになったからかお客様が多いねぇ。」


これまで紗代子が働くと言えば時々頼まれる縫い物の内職ぐらいでしたので飲食店のめまぐるしい動きにはまだ慣れません。


「今日は七生がいたから良かったけど…」


そう考えながら紗代子さんはウトウト眠りにつくのでした。



◇◇◇



「お姉ちゃん、この生姜の刻んだやつ、美味しいね。さっきお客さんが頼んでたのを見て僕も食べてみたかったんだよ」


「生姜の甘酢漬けを刻んだのよ。おばあちゃんがよく作ってくれてたでしょ?」


「ああ、あれか!こんなに美味しいんだ。小さい頃にピンク色できれいだからって食べてみたら辛くてさ。だから今まで食べようと思わなかったんだよ。サッパリしててシャキッと元気が出るような気がするよ」


「あぁ、あんた幼稚園だったっけ?からいーって吐き出して泣いてたよね」


カウンター席に座って七生はおにぎりを食べています。

若い男の子はバクッバクッと食べっぷりが良いですね。


「七生、夏休みの間だけ予定ない日はこうやって昼時に手伝ってくれない?お客様が多いとおばあちゃん1人ではしんどいと思うのよ」


「良いよ。おばあちゃんに無理はさせられないからね」


「良かった。ちゃんとバイト代は払うからよろしくね」


「家族割でいいよ。まだ店を始めたばかりで大変だろ?でも賄いはつけてね」


「ふふふ…ありがとう。お願いね」


年が少し離れているせいもあるかもしれませんが、おっとりとした姉とおっとりとした弟はとくに喧嘩らしい喧嘩をしたことがなく仲が良いのです。


「嬉しいことではあるんだけど、予想外にお客様が来てくださるから、おばあちゃん1人では無理っぽいのよね。でもまだこの先どうなるかわからないから求人出すのもなあと思って」


「とりあえずこの夏は僕が手伝うから安心して。

あ、デザートにクリームソーダお願いします!」


「はいはい。お姉ちゃん特製クリームソーダ作るわね」


夏実がニヤリと笑います。


「やった!」


 七生がまだ小学生の頃、親が出掛けて留守の時のお楽しみが夏実が作る

『お姉ちゃん特製クリームソーダ』


 グラスに入れた炭酸飲料にファミリーサイズのアイスをこれでもかっと乗せた一品です。

アイスクリームを買ってくるのはお母さんなんですから、極端に減っているのはすぐにバレて怒られますが、この2人はその特大サイズのアイスが乗ったクリームソーダを楽しむのをやめられませんでした。


「やったー!お姉ちゃん特製クリームソーダ!この氷とくっついたアイスがシャリシャリして美味しいんだよね〜」


七生が楽しそうに食べているところにお客様が入ってきました。


夏実がお水とおしぼりを持っていきますと


「あの…あのかたが食べているクリームソーダみたいなやつ。あれはどのメニューですか?」


「あ、あれは…あれはクリームソーダにアイスをマシマシしたものです。」


「アイスをマシマシするとおいくらなんですか?」


「えっと、あの、マシで100ゥ…150円アップですので、マシマシは300えんアップさせていただいてます…」 


「じゃあクリームソーダマシマシで!」

「あ、私もクリームソーダマシマシ!」


咄嗟にでた金額に高すぎかな?と夏実は思いましたが意外にもお客様は納得してくれたようです。


このときのおふたりがマシマシクリームソーダの写真をSNSにアップしたことからじんわりと広まり、いろはの名物メニューになりました。


読んでいただきありがとうございます!

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不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします(ニコッ)

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