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おにぎりカフェいろは  作者: 瑞谷樹梨


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11/21

夏実と学童

「あ、あつぅ…おもっ…」


 ある日の午後、夏実はかつて自分も通っていた学童保育所に向かいました。

いろはによくおにぎりを買いに来てくれる篠島さんちのタケル君とユウト君に


「ねーいつ学童くるのー?ねーねーいつー?」


と、会うたびに催促されてたからです。


「もー!夏実ちゃんは忙しいの!無理言わない!」

「だって夏実ちゃんと遊びたいもーん!」

「…ぼくも」


ママに怒られてもタケル君は負けませんが、弟のユウト君はお兄ちゃんの影に隠れます。


で、ようやく時間がとれたのでお土産のスイカを吊り下げて歩いてるのですが…

暑いです!重いです!


「七生についてきてもらえば良かった…」


すでに1人で来たことを後悔する夏実です。

昼もだいぶ過ぎたというのに日差しはまだまだ強烈です。

暑さとスイカの重さをボヤキつつ、懐かしの指導員さんが休みだったらどうしようかな、卒所生とはいえ外部の人間はお断りだったらどうしようかな、と考えながら学童の敷地に入ったとたん


「なつみちゃーーーん!」


外で遊んでいたユウト君が夏実を見つけて手を振ってくれてます。

ん?ユウト君、なんかびしょ濡れのような?


ユウトの声に子供達の目は一斉に夏実にそそがれ駆け寄ってきました。

その向こうに見えるのはビニールプール。

み、水遊びしてたんだぁ…


「このひとだれー?」「わたし、ゆうな!」

「このスイカなにー?」「なにしにきたのー?」

「オレこの人知ってるーお祭りで肉焼きおにぎり売ってたー」


わらわらと大勢の子供達が口々に喋り出します。夏実はあっという間にもみくちゃです。


「夏実だよー」「遊びに来たよー」「お土産だよー」「あ、あ、」


マイペースな夏実もちびっこパワーには負けます。

ああ!どうしよう!汗だか水だかわかんない!


「あらー夏実!久しぶりねー」


そこへ指導員の佐野先生がやってきました。

大きな麦わら帽子をかぶりタオルを首にかけたスタイルは夏実の小学生のころと変わりありません。


「さ、佐野先生!ご無沙汰してます!うわあ!ちょ、ちょ、ちょっと待って待って!あ、これスイカ。お土産です。みんなで食べてください」


「わー!大きなスイカ!ありがとう!」


優しい笑顔の佐野先生の登場に夏実はホッとしました。


「スイカ割りだ!ねースイカ割りする?」

「オレできるよ!」「オレが割る!」「おまえ無理!」


わちゃわちゃと子供達が騒いでも先生は慣れたもので


「ハイハーイ。冷やしたほうが美味しいからね。まずは冷蔵庫に入れようね」


ベテランの指導員さんはあっさりしたものです。さすがです!


夏実はかつてはそのわちゃわちゃの一員だったはずなんですが大人になった今は子供達のエネルギーにどう対応していいかわからずオロオロするばかりでした。


「あー!誰が来たかと思ったら夏実じゃーん」


学童保育所の中から出てきたのは夏実の友達の咲希です。


「さっちゃん?!」


咲希は夏実の同級生でこの学童で一緒に過ごした仲間でした。


「さき(せん)このひと知ってるのー?」


「私が小学生のとき、この学童にいたのは知ってるでしょ?そのときの仲間なんだよ」


「せんぱいじゃーん」「せんぱいー」

「そう!先輩です!仲良くしてあげてね!」


「はーい!せんぱーい!遊ぼー!」


夏実は子供達にあちこちから手を引かれ、水鉄砲で水をかけられ、水風船を投げつけられ、


「きゃーー!」

「こらー!お客様に水かけたらダメでしょー!」


さっちゃんが叱りますが


「お客様じゃないもーん。せんぱいだもーん」


「へりくつ言うんじゃないの!」


「いや、ははは…ま、いいよいいよ。家近いから…」


来て5分もしないうちにびしょ濡れになった夏実は力無く笑うのでした。


タケル君が一輪車に乗れるとこを夏実に見せるんだと張り切ると


「オレだって乗れるもーん」

「ワタシも乗れるよー」


と、わちゃわちゃわちゃ…。


「オレは竹馬に乗れる!」

「ワタシだって乗れるもん!見て見てー!」


と、わちゃわちゃわちゃ。


子供達は夏実を遊んでくれる人認定したようで大興奮で競い合って張り切って取りあって、全力です。


夏実はそのパワーに圧倒され「はは…」と力無く笑うしかなかったのですが、そのうち慣れてきたのか


「よーし!私も乗ってみるよ!一輪車貸して!」


「夏実ちゃん…危ないよ。気をつけてね…」


ユウト君が心配そうに見つめています。


「うん!気をつけて乗るね。昔は乗れたけど今はどうかな。…よっ!」


はじめはヨロヨロしてましたが、そのうち感が戻ってきてクルクル回ったり8の字をえがいたり。


「わースゲー!」


夏実はぽ〜っとしてますが案外、運動神経はよろしいのです。

先程までは水鉄砲で打たれたり、若干バカにされてたような雰囲気でしたが一輪車に乗ったことで


「スッゲーー!」

 

と、ちょっと見直してもらえたようです。



◇◇◇


「みんな…すごいわ…もう無理」


「お疲れ様。はい麦茶」


ようやく室内に通された夏実がバテてます。

おやつの時間となり指導員さんがみんなを室内に呼んだことでようやく解放されました。


「ありがと…」


「子供って遊んでくれる人みつけたら離さないからね。お疲れ様だったね。でも子供達めっちゃ喜んでたよ〜ありがと夏実」


「楽しんでもらえて何よりですぅ…」


今日のおやつはホットケーキ。

ここでは子供達が自分で作るんですよ。


おたま一杯分のホットケーキの生地をホットプレートにたらします。

おたまで少し丸く整えたらしばらく待つんです。

…ほら、プーッとふくらんできたでしょう。

まだですよ。まだ触っちゃいけません。お待ちください。

生地の表面にプツプツと穴があいてきますからね。

そしたらひっくり返してください!

キツネ色にきれいに焼けてるでしょ?

あとはもう片方の面を焼きますからね、もうちょっと待ってくださいね。

しばらく焼いたら出来上がりです。

マーガリンを乗せて、シロップをかけて…

さあ召し上がれ!


「私達もああやってホットケーキ作ったねぇ」


「夏休みで長時間ここにいるからね。少しでも退屈しないようにいろいろ考えてくれてたんだなって指導員になったいまわかるようになったよ」


「楽しかったよね。さっちゃんはいつ指導員さんになったの?」


「えーっと2年くらい前?保育士になって幼稚園で働いてたんだけどうまくいかなくて…佐野先生が学童の指導員にならないかって声かけてくれたの」


「そうだったんだ。」


「夏実もカフェ開くなんてスゴイじゃん!タケルに聞いたよ?」


「へへへ。おかげさまで」


「おにぎりが美味しいんだって?」


「へへへ。ありがとうございます」


「夏実も卒所生だからお世話になったこの学童になにか貢献してもらおうかな?」


「へ?」


「んふふ。夏実のカフェはここから子供が歩いても大丈夫な距離だよね」


「え?あら?」


「子供達のおやつにカキ氷をお店でやってもらえないかな〜なんて思ってる」


「な〜んだ。いいよ〜」


「え?いいの?返事はやっ!ホントに良いの?」


「おやつ買いってあったでしょ?100円持って近所のお店におやつを買いに行くやつ。いろはにも学童の子達来ないかなーって思ってたんだよね。来るなら100円で何か用意するよ」


「うわっ話が早い!さすが学童っ子。でもいまはおやつ買いやってないんだよ。近所のお店が無くなっちゃって」


「えー!あのお店無くなっちゃったんだぁ」


「夏実がたまにお店に行かせてくれると嬉しいな」


「いいよ任せて。おばあちゃんにも聞いて見るけどね、良いって言うと思う」


「じゃあこっちも佐野先生に相談して話を詰めとくね」


◇◇◇


 というわけで学童っ子達を迎え入れることになりまして、紗代子や指導員さんがたと相談した結果

まず1回目はおやつ買い復活記念ということで定休日に迎え入れることになりました。

次回からは営業日に来てもらいます。

 学童っ子は指導員さんがしっかり躾けていますから心配はしてませんよ。

学童というのは案外ルールが厳しいんです。


「いらっしゃいませ!ようこそ!」


夏実と紗代子、七生が揃って出迎えます。


「夏実だー!」「スッゲ!」「夏実ちゃん!」


指導員さんに連れられてのお出掛けに

少し緊張の顔つきだった子供達も夏実の顔を見るとパッと笑顔になり、この前のような元気いっぱいの顔になりました。


「わ〜みんなよく来てくれたね」


「はーい!みんな!聞いて!今日はお店がお休みだから他にお客様はいないけど暴れたりしないように!これからはここにおやつを買いにくる日ができます。高学年の子はおやつ買い覚えてるよね?夏実ちゃんが来て良いよって言ってくれたからおやつ買いがまたできるようになりました!」


パチパチパチッ

さき先=さっちゃんの拍手につられて子供達も拍手します。


「せーの!」


「ありがとうございます!!!」

「どういたしまして!!!」


子供の大声に夏実も元気に声を張り上げて応えます。


「じゃあ今日はおやつ買い復活記念パーティということでカキ氷をすることにしました!お庭にベンチを置いたから庭で食べても良いですよ。庭の植物をちぎったり踏まないようにね!」


「はーい!」


カキ氷機は厨房に置いてありますので、夏実が小さめのプラカップに氷をかいて次々にカウンターに乗せていきます。


それを子供達がそれぞれ取って庭にある長いテーブルに用意された自分の好きなシロップをかけていくのです。

赤のイチゴ、緑のメロン、黄色のレモン、青はブルーハワイ、抹茶味もありますよ。


「うめー!」「つめたくておいし〜!」

「あたまがキーンとする〜」「スプーン落としちゃった!」「オレつぎは何味にしようかな」


小さなカキ氷ですが、ほどほどにね?


 庭のあちこちに昔使っていたベンチを用意しておきましたが座っている子供の数が少ないような気がします。


あ!木の影にいますね。何してるの?

あ!木の上にもいる!いつのまに!


「木登りしても良いけど気をつけるんだよ!」


紗代子が下から声をかけています。


「セミの抜け殻あったー!」「えー!どこどこ?」


 木登りする子、セミの抜け殻を探す子、虫の観察、落ちている花や葉で遊ぶ子。

遊ぶおもちゃが何もなくても何にでも楽しみを見つけています。


 いつもはご近所さんに迷惑がかからないように

「お静かに願います」の、このお庭ですが

今日はあらかじめ

「明日は学童の子供達が来ます。カキ氷パーティしますので良かったら来ませんか?」

と、ご近所さんをお誘いしておきました。


ですからご近所さんもポツポツ訪れて思い思いにカキ氷を楽しんでくれたようです。


「このサイズありがたいわ。普通のサイズだと多くて食べきれないから」


そんな声も聞こえましたので、ミニサイズもメニューに取り入れた方が良いかもしれませんね。


たっぷり遊んだ2時間。

楽しんでもらえたでしょうか。

学童っ子達はきちんとあと片付けをして手を振って帰って行きました。


ご来店ありがとうございます♪


良かったらブックマークや評価をいただけますとたいへん嬉しくて嬉しくてワタクシ励みになります!


またのご来店お待ちしております!

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