⑤
当然ながら件の心霊番組はお蔵入りとなりました。
関係者が軒並み死んだ状況で放送できるはずもありません。
誰も呪われたくないので、番組そのものがタブー視されるようになりました。
一時はニュースを騒がせた連続怪死も、時間の経過と共に忘れ去られていきました。
長々と語ってきましたが、以上がお蔵入りの経緯です。
結局、残されたのは私だけです。
他の関係者は死んでしまいました。
きっと想像を絶する苦痛を伴ったのでしょう。
自室を徘徊する彼らの表情は、安穏とは程遠いものです。
そうです。
呪い殺された犠牲者は、霊となって私に憑いています。
時折、何かを伝えようとしてきますが、その内容を理解することはできません。
正確には……私が理解を拒んでいるのでしょうね。
彼らのおぞましい形相を見れば、そうしたくなる気持ちも分かるはずです。
到底、善意で接してきているとは思えない様子なのですから。
未だに死なない私に文句でもぶつけているのだと思います。
私は生きたい。
彼らのように惨たらしい最期を迎えたくない。
別にごく自然な感情でしょう。
理不尽に呪い殺される結末など望むはずもありません。
だから私は番組の収録データをネットにアップロードしました。
あの心霊番組を不特定多数に拡散することで、呪いの影響力を薄めたのです。
今、皆様が読んでいるこの文章もそういうことです。
認知する人間が増えるほど、私に降りかかる呪いも弱まります。
この方法を提案したのは燐源さんでした。
死の間際、彼は私に助言したのです。
私は半信半疑ながらも従い、こうしてまだ生きています。
霊は憑いていますが、実害を受けたことはありません。
弱まった呪いでは人間の命を奪えないのでしょう。
説明の冒頭、私はこの文章について"ある種の供養"と表現しました。
これはそのままの意味です。
害を与えられないほど薄まった霊は、もはや消滅したのと同じでしょう。
だから供養と称してもいいはずです。
あなたは知ってしまいました。
関わりが生まれた以上、呪いの影響下にあります。
死にたくなければ、どうか広めてください。
それが、認知したあなたの自衛に繋がるのです。
巻き込んでしまい申し訳ありません。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
どうかよろしくお願いします。
※
筆者の███さんは2023年の12月に逝去しました。