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召しませ神殿医術師  作者: てるてる坊主
宮廷追放

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7/7

7 氷を求める令嬢②

有休休暇1日目

 倒れた令嬢はヴィクトリアと言った。

 

 しかも八騎伯のルディオ・ダンレイル卿の妹君だった。

 これまた西方神殿にいたら会うことも無い御仁だ。

 ピラミッド階級のトップのお宅訪問とか緊張する。


 帝都にあるタウンハウスは家格を反映した広さだ。

 うちの西方神殿より大きいのではないかと思う土地と建物だ。


 屋敷までの道中は、馬車の中で締め付けているコルセットを緩め、クッションで少し足を上げ寝かせていた。


 男性は一応、外に出てもらった。馬車の御者席には先ほど口論したヴォン・ヴォニエールがいた。


 嫁入り前の女の子なんで、同性同士の方がいいでしょうし。


 それにしても、顔色は真っ青で血色が悪い。

 脈拍はやや早いがリズムは正常だった。

 手持ちの血圧計で測ると血圧は上が九十mmHgと低い。

 少し汗ばんでおり、意識はある。

 額に手を当てるが熱はなさそうね。


 暑い時期だし、さっきは氷を求めていたのかしら。

 脱水気味なのかしら。

 とりあえず水分補給させておこうかな。


「少し飲めますか?」

「はい⋯⋯」

 カバンに入れていた水筒を取り出す。


「ゆっくり飲んで下さい」

 揺れる馬車ね中、ヴィクトリア嬢の身体を支えながら、水筒に入れていたわたしお手製の経口補水液をゆっくり飲ませる。


「なんだか、あまり美味しくない⋯⋯」


「身体に浸透しやすいよう、真水に少し砂糖と塩が入っているんで美味しさより補給重視なんです」

 

「ちょっとまだしんどいので横になります」

「分かりました」


 指先をみると匙状の特徴的な爪が白くなっていた。

 指の甲の近くにタコがあった。

 なぜこんなところに?


 髪もぱさついて爪は割れていたり角が欠けていた。


 爪と髪は、内臓の健康と全身の栄養状態のバロメーターになる。

 タンパク質や鉄分、亜鉛などの栄養不足は、生命維持を優先するため、爪が割れやすかったり、髪がパサつきやすい。

 

 令嬢だと言うのに、ちゃんと食べているのか疑問が残る。


 このヴィクトリア嬢という令嬢、ただのふらつきではない。


 屋敷までお送りし、執事がヴィクトリア嬢を寝室に寝かせてまずは一段落だ。


「ひとまず安静にして様子をみましょう」

 ヴォン・ヴォニエールも了解した。


 この国には八大貴族の他に騎士として権力をもつ八騎伯がいる。

 日本でいうところの公家と武家のような存在で二大派閥みたいなものだ。


 公家は皇太子派で由緒正しい血脈を重んじている。サルヴィアーティ卿は由緒正しい公家出身なのよね。


 わたしが知っている武家は亡き皇妃の実家がまさにその家系。マスリア卿は皇女殿下と廃嫡した皇子の祖父母の家系ということくらい。


 だから、皇帝陛下は二つの派閥を娶り、バチバチの権力争いがある。

 八騎伯出身の亡くなられる前の皇妃様の時代は八騎伯は栄華を極めた。

 八大貴族と積極的に婚約したり、商売などの交流が盛んだった。


 それが皇妃様が亡くなられて、サルヴィアーティ卿の妹君が皇妃になってから関係性が冷えこんだらしい。

 

 宮廷って本当に打算や裏事情がひしめいていて、わたしみたいにぼんやりしていたら、上手く利用されて殺されかねない。

 怖い怖い。

 わたしはやはり、田舎で日がな一日ゆっくり診療して慎ましやかな生活をするのがあっている。


 案内された応接室は綺羅びやかに飾られ、ちょっと居心地が悪い。


「ヴォン・ヴォニエール様、エイル・オーデルハイヴ殿、お二人には倒れた妹を介抱して頂きありがとうございました」


 

 八騎伯のダンレイル卿は軍服姿で現れ、神殿騎士の青年、ヴォン・ヴォニエールに敬礼をし、わたしには握手をした。

 

「いえ、医術師として当然のことですので」


 カチコチに緊張したわたしと違い、隣に座るヴォン・ヴォニエールは動じることなく優雅な出で立ちだ。

 

 神殿騎士と八騎伯、お互い騎士同士だからなのか面識があるようだった。


 八騎伯は国のトップという位置づけだと思っていたけれど中央神殿騎士のヴォン・ヴォニエールに敬っている様子をみると家格とか地位はヴォン・ヴォニエールの方が上とみた。


 やだ、どうしよう⋯⋯。

 先ほどはタメ口たたいてすみません。

 


 現代日本でも目上の人には敬意を払えって言われるのにね。

 身分とか関係なく敬ってない態度でした。


 すみません。


 そんな後悔は後の祭りである。

 平民の分際でタメ口など、手打ちにしてくれる!

 バサッズバーッて殺されるんじゃない?

 お貴族様とたかが消毒だけど口論なんてしたから、この後のわたしの処遇って殺されたりするパターン⋯⋯あるかもしれません。

 

 やだやだ、ただ有休休暇で旅行したいだけなのに、既に死亡フラグ立っちゃったよ。

 まだどこにも行ってない。

 温泉もご飯も目の保養も何も楽しんでない。



 ヴォン・ヴォニエールはそんなわたしの葛藤をよそに、騎士同士少し話した後、チラリとわたしに視線を送ってきた。

 

 やっぱり死亡フラグきた!

 

 そんな、お貴族様だったなんて知らなかったのよ。

 世間知らずだっただけなの。

 だから悪気はないし、なんなら謝ります。

 申し訳ございません。

 有休休暇初日でどこに旅立つこともなく、剣とかの試し斬りにわたしを使わないで下さい。

 

 もう、こんなことならカイルと結婚した方が命はとりとめられたかも。


 わたしの人生、いつでもどこでも後悔先に立たず。

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