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召しませ神殿医術師  作者: てるてる坊主
宮廷追放

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10/32

10 氷を求める令嬢⑤

有休休暇1日目

「簡単に食事管理って言ってくれますが、いつも通りに作るだけじゃダメなんですかね」


 ダンレイル邸ロリス料理長は不満だと言いたげだ。

 いきなり食事のことをとやかく言われ、職場を荒らしに来たと思われたようだ。


「ヴィクトリア様は前までちゃんと召し上がってたんだ。今さら作り方を変えろって言われてもな」


 確かに予算内で美味しい料理が提供できれば料理長としては問題ない。 

 食べ残しがなく、美味しく食べられたらそれでいい。

 でも今の八騎伯のご令嬢には身体づくりを意識して貰いたい。だから食事の見直しが必要だと思い、ダンレイル邸のキッチンに半ば道場破りよろしく押しかけたのだった。


「いいですか!?これは主家を軽んじられた宣戦布告ですよ!今日来たばかりのわたしが言うのもなんですが、大事なヴィクトリア様を傷物にされたんです」


「いや、傷物にはなっていないぞ」

 ヴォン・ヴォニエールはすかさずツッコミを入れてきた。

 

「名誉を傷つけられたんです!しかもご両親からいただいたお顔が美しくないとか太っているとかのたまわって!お嬢様の悔しさを思えば、『ざまぁ』するために全面協力するのがお仕えする者の務めじゃないでしょうか」


 うら若き乙女が人前で辱められたのよ。

 ここは料理長として、ヴィクトリア嬢の食事管理を頑張って貰わなくては


「それはそうなんだが⋯⋯」

 ロリス料理長は戸惑いを隠せない。


「これはヴィクトリア様だけではありません。八騎伯の一角への八大貴族からの宣戦布告です」


「そんな大袈裟な」

 ヴォン・ヴォニエールは半ば呆れていた。


「そもそも、お顔なんて皮一枚剥いだら皆同じ。外見を良し悪し言ってくる男は天誅です!!中身の良さが分からない男に、後悔と無念を抱かせて血の涙を流させてやりましょう」


「エイルさん、なんだか頼もしいです」

 一緒にキッチンに来ていたヴィクトリア嬢はクスリと笑う。


「昔、何かあったのか?」 

 そんなに熱く語ってますか?

 ヴォン・ヴォニエールは見目麗しいから、乙女のガラスのハートの脆さなんてわからないんでしょう。

 えぇそうでしょう。

 そうでしょうとも。


「でも、どうすればいいんだ?食事管理って言ってもなぁ⋯⋯」


 ロリス料理長は明らかに困った顔をする。

 そうですよね。その戸惑いも分かります。

 だから、普段の食材を使いつつ身体に吸収しやすい調理方法を意識すればいいのです。


「秘策があります」


「一体どんな?」

 ヴォン・ヴォニエールとヴィクトリア嬢、ロリス料理長は顔を見合わせる。

 要は食材の組み合わせですが。


「食事と運動療法でヴィクトリア様には健康美を手に入れて頂きます」


「はっはい」


「わたしが全面協力いたします。カロリー計算と運動を兼ね備えた故郷(現代日本)の理論を使って。わたしを信じて頂きたい。だからもう吐いたりする必要はありません。正しい知識をもってすれば、理想の体型になります」


「カロリーって何だ?」

 ヴォン・ヴォニエールは首を傾げる。


「食べた物は身体を動かすためにエネルギーに変わります。そのエネルギーの単位がカロリーです。その力と運動する力が一緒であれば体型は維持できるし、太りにくいのです。今のヴィクトリア様は食べ物が身体に入っていないのでエネルギー不足。栄養が足りていないとエストロゲンという女性の美しさを保つホルモンが足りないとお肌や髪の潤いもなくなります。ですからまずは食べて美しく!です」


「はっはい。分かりました」

 ヴィクトリア嬢はわたしに気圧けおされながらも頷く。


「もし良ければ今日の晩餐は身体づくりに必要なご飯を意識したものを作ってみても宜しいでしょうか?」


 西方神殿では新人が神殿職員の食事を作る習慣がある。

 ただ、平民出身で女ということもあり、その下積み期間は長かったこともあり作り慣れている。


 そして、この異世界に来て悟った。

 現代日本みたいに飽食の世界ではない。

 少ない材料でも食べ合わせなどを意識して、栄養摂取の効果が増やすようにしないと。


 現代日本で医師をしていた時は採血結果とにらめっこして点滴内容を調整していた。

 でもそれは生きながらえるための電解質の調整に過ぎなかった。

 やはりここは食事改善をして身体の土台作りからやり直し。

 栄養学は現代日本でも学んだ。

 病院では管理栄養士と調理師がいるから、薬と食べ物の禁忌くらいしか活用することはなかったんだけど。



「お前さんの言う通りにしたら、お嬢様の体調はよくなるのか?」

 ロリス料理長は疑心暗鬼なようだ。


「これでも医術師なんで。西方神殿は栄養や食事に力を入れている神殿なので、温かい目で見て下さい」


 困惑しているロリス料理長は必要性を感じていないのだろう。

 大丈夫、やるだけやってみましょう。


「何を作るつもりだ?」

 ヴォン・ヴォニエールは険しい顔をする。


「とりあえず、思春期の子が陥りやすい貧血予防とタンパク質の強化を意識したメニューでしょうかね」


 ギリシアの医聖ヒポクラテス曰く、「汝の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ」という名言がある。


 人間の身体は食べた物から出来ている。

 病気を治すにもまずは食事。

 病気にならない身体作りもまた食事なのだから。

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