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____わたしは目を覚ました。

 仰向けの人間の視界の範囲内ではあるが、辺りをゆっくりと見回すと夜空の暗闇が前後不覚に陥ってしまいそうな程にわたしの視界を覆っていた。だけど、辛うじて蒼白い月が昇っていた明るい星空がわたしの頭上を照らし、地面が見えていた。


 土の上に横なっていたのか、口の中には多少の土や葉っぱの味が広がっていて、大変不愉快だなと感じ、身体を起き上がらせて、地面に手を当ててそれに体重をかけるよ様に座り込んで、空に浮かぶ月をじっと集中して見ていた。

すると突然、頭が内部から錐で穴を開けられている様に傷み出した。


 さっきまで、学校の図書室にいた筈なのに今は景色も見覚えのない外にいて、ひとりぼっちなんだと思い出すと脳味噌は急に動き出した所為か、じわじわとわたしの中から恐怖心が湧き出てきた。

 慌てて座った視野から辺りを見回しているとふと、木々の間から赤く輝く瞳がこちらを覗いているのに気が付いた。


 ぐるる…ぐるる……という空腹感からか、獲物を見つけた昂りからか、唸り声をあげて一目散にこちらへと走ってくる狼達に驚き、急いで立ち上がって逃げる様に行く先もわからないのに大きな足音を立て走り始めた。


「はぁっ……はぁっ……だ、だれか……!! 」


 肺を凍らせてしまいそうな程に冷たい空気中に白く色ついた荒々しく焦燥感の混ざった熱い息が混ざり込んで、助けを呼んだ。

 元々、図書室から履いていたピンクと白の上靴は土や木の枝を踏みつけて歩いたからか、茶色く薄汚れてしまって今朝綺麗に結んでもらったわたしの茶色の髪は髪飾りも結髪も全部縒れてぐちゃぐちゃの醜い姿になっていた。


 必死に逃げていると、前の方から銃口から鳴る大きな音が二発、三発と聞こえてきた。

サラリと空気に混ざり合う様に自然に流れた緑色の髪の背丈の高い女性に手を引かれて、森を抜けて明かりの方へと向かう。


 森を完全に抜けると緑髪の女性は怒った様な雰囲気を出していて、荒々しくもそれでいて愛情に溢れた声を上げた。


「アンタっ!!! この時期のこの森には巨狼が出るっては…近隣国の王女言ってたでしょう!! アタシが来なかったら、どうするつもりだったの!? 」


 そんな風にわたしの手を握りしめて、怒る女性はどこか不安そうな瞳をしているのが印象的だった。

女性の後ろから、這い寄る様に女性より小柄で青色と水色の髪の男性……?とその青色の人と同じくらいの背丈の藤色の髪の中性的な人が出てきた。


青色の髪の人は走ってきたのか息をあげていたが、藤色の髪の人はそこまで焦っている様にも疲れている様にも見えなかった。


「ゆ、結衣!! 」

「姉さん? 」


 青髪の人は少し唖然としながら、心配そうに結衣と呼んだ緑髪の女性の顔を覗き込んでいた。

 対照的に藤色の髪の人は女性を一瞥するだけで氷の様に冷たい瞳をしていて、背筋がゾクリとした。

 緑髪の女性はわたしから手を離して、青髪の人に目を向けて、わたしの方へと指を向けて風船の様にぷくぷくと怒り出した。


「朱雨……! 聞いてよ!! この子、着の身着のまま森に入ってあまつさえ、狼に襲われて喰べられそうになってたの!! これだから最近の若い子は怖いの! 」


「それは後で聞くから、今から治療しに行くぞ。」


そう青髪の人は言いながら、連れて行こうとすると話は終わった?と言わんばかりに藤色の髪の人はイライラとしながら、腕を組んで文句を言っていた。


「バカなの!? てか、足も髪もボロボロなのに、よく人の心配できるよねぇ!! てか、ボク、言ったよね?近隣の森は開発してないから、木々が生い茂ってて裸足で駆けるには向かないって!! なのに、なんで裸足で行くの! ホントにさぁ…」


一頻り言ったのか、救急箱の位置を教えて座り込んで三人を見ていたわたしの方へと近づいて屈んだ。

屈んだ瞬間にあ、この人あれだ。20cm以上の厚底のブーツ履いている。体幹凄いなと確信し、尊敬の念を抱いた。


「で、こんな夜更けにどうしたの? 」


さっきとは、一回り以上違う優しいけど、どこか歪な笑顔を此方に向けて笑う藤色の髪の人に少し違和感を感じていると藤色の髪の人はわたしの足元を見ながら悩ましそうな顔をして「君は姉さんよりは軽傷だけど、ぼろぼろだねぇ……治療しながら、聴き取りするけど、大丈夫? 」と聞いてきたから、こくりと頷くと、藤色の髪の人はわたしを横向きに抱きかかえて、御屋敷の方角へと向かっている景色を横目に今流行りの貴族階級の方かな?と思いながら、藤色の髪の人に揺られた。


到着したのか地面にゆっくりと降ろされて、藤色の髪の人はゆっくりそろりそろりと何かに怯える様に屋敷の戸を開けると、藍色の髪に緑のメッシュという少し派手なのか地味なのかわからない髪色の男性が腕を組んで般若のような顔をしていた。


「はーるーなァ? 俺、来客入れんだったら、先に連絡しろって常日頃から言ってるよなァ?

お姉さんのお兄さんが血だらけで来たんだけど、どういう事だ? 」


「い、いやぁ……これには深海より深くて高山よりも高い事情がありましてぇ…? 怒ってる? 」


藤色の人は怯えてるのか視線をゆらゆらと波打たせてると、人の後ろに立ってるわたしと目が合い再び青筋をビキビキと立て始めた。


「お前なぁ!!! 常日頃から、お前が衝動買いする際で空き部屋ないって言ってんだろ!? お前の部屋に入れるぞ?! 」


「えぇぇぇぇ!!! やめてよぉ!ボクの部屋にはボクの機密情報がさぁ……! 」


「知るか! これに懲りたらちゃんと連絡しろよ?! 」


そう言いながら、藍色緑メッシュの人は怒りながら屋敷の奥に進んで行った。藤髪の人は頭を捻らせているとぼそっと「ボクも衝動買いやめたいんだけど、やめられないんだよねぇ……」と言いながら、片付けるか……と少しぐぬぬといった顔をしていた。


「じゃあ、少し空き部屋片付けてくるから、少し待っててねぇ。」


ゆっくりとひらひらと手を振りながら、屋敷の広間にあるソファに腰をかけたわたしを置いてどこかへと去っていった。

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