表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/93

8.英雄宇一(2)

8.英雄宇一(2)


 第一手術室の「手術中」のランプはついたままだった。


 石田医師が出てくる。


「先生!」


 忠が歩みよった。


「ピアノは! 弾けますか?」


 混乱している平悟郎も続く。


(生きるかそうでないかの時に……)


「お父さん、ご家族の方から輸血できますか? ――今はまだ必要ありませんが、用心のため確認しておきたいのです」


 父親がどちらかぐらい見れば分かる。


「大丈夫です」


「O型です! O型は誰にでもあげられます!」


 誰にもあげたことがない平悟郎が誇らしげに言った。


「それと皮膚移植も。本人のものも利用したいのですが、女性だけに大きく取ると……」


 相手にしていない石田医師が忠に続けた。


「私は構いません」


 忠が先を急がせた。


「O型ですから……」


 平悟郎は名誉挽回めいよばんかいしたいようだ。


「静かにしろ」


 たまらず平悟郎を黙らせる。


「他には……家内かないも早くに……」


「僕だよ」


 満身創痍まんしんそういの戦士が廊下に立っていた。


「君は……」


 宇一だ。


「たぶん僕のが合うはずだから」


「坊ちゃん……」


 運転手が心配そうだ。


「こうなる運命なんだ。受け入れなければ先に進まない。それだけだよ」


宇一いえかずくん、君にそこまでしてもらう訳には……」


「ちょっと助けたぐらいでイイ気になってんじゃ――グッ!」


 忠にられ、一瞬で黙る。弁慶の泣き所とはよく言ったものだ。


「私には頼めない」


 忠が言った。


「必要だからする。それだけです」


「では、こちらに」


 石田医師が案内した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ