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愛す少女は愛されたい

作者: 寺崎 征十郎


大好きなお母さん。


お元気ですか。


こちらは段々と寒さが厳しくなってきていて、毎朝布団を出るのが辛いです。


朝にうだうだしていると、よくお母さんに布団を引っぺがされていたのが懐かしく感じますね。


お母さんがいるところは暖かいとよく聞くので、少しうらやましいです。


次の引っ越し先は沖縄にしようかな。


さて、私が田舎を出てからもう二年になりました。


お母さんは私がうまくやっていけるか心配していましたが、それなりに元気にやっています。


この前もお隣さんに料理を振舞ったりお掃除を手伝ったり、ご近所付き合いもばっちりです。


主の教えに従って、隣人を愛していています。


何も知らない少女だった私に教えを説いてくれたお母さん。


本当にありがとうございます。


あなたのお陰で毎日がとても充実しています。


まだ理解してくれる人は見つからないけど、これからもへこたれずに愛し続けるつもりです。


いつか私を分かってくれる人が見つかったら私の手でそちらに送るので仲良くしてくれると嬉しいです。


それではまた書きます。




追伸


顔のいい男の人がそちらに行ったと思います。


浮気は駄目だからね?



書いていた文章を保存して、ぱたりとノートパソコンを閉じる。


強い光源を失って何も見えなくなったのも束の間、次第に慣れていく目を床に転がる彼に向ける。


昨日まではまだ蠢いていたはずのお隣さん。


既に熱は感じられず、拘束の隙間から覗く肌は青白く変色している。


試しに指先で突いてみると、張りを失った皮膚の感触がぶよぶよしていてちょっと気持ち悪かった。


現代社会においてそう簡単に遭遇することのない人の死体。


力なく不自然な角度に関節を曲げて倒れているそれに対して私の頭をよぎるのは、『片付け面倒だなぁ』という家の前で猫の死骸を見つけた時とそう変わらない考えだった。


「うーん、また勝手に死んじゃったや。

 優しく()してあげたかったのに~」


人を殺すこと。


人に殺されること。


それこそが最上級の愛情表現である。


それが私の主の教え。


今はまだ()させてくれる人は見つからないし、()してくれる人も見つからない。


けどそう長い人生ではないだろうけど、きっと分かってくれる人はいる。


そんな出会いを求めて、これからも人を()し続けよう。


私は改めて決意した。


「よし、ご飯食べよ」


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