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第六十二話

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 アザレアは気づくと、緑豊かな場所の空間を彷徨っていた。


 辺りは見たこともないような鮮やかな花々が咲き誇り、美しい蝶がヒラヒラと花の間を行き交い、鳥は美しい声で囀っている。アザレアは自分の体すらなく、意識だけがそこにあった。しばらく楽園のようなその場所を漂っていると、長髪の中性的な人が立っているのを見つけた。


 その人はこちらを振り向くと微笑んで言った。


「君をずっと待っていた」


 アザレアはその人を見たことがあった。しばらく考え、ミツカッチャ神だと気づき、体がないのでミツカッチャ神ですわ! と心のなかで叫ぶ。


 ミツカッチャ神は歯を見せて笑う。


「私はその名は嫌いなんだ。以前君の世界に降りた時に、洞窟内で人に見つかってしまってね。そのとき見つかっちゃったと呟いたら、そのままその名になってしまった」


 そうなんですの? と心で呟くとミツカッチャ神は答える。


「そうなんです」


 そう言って頷くと、彼は言った。


「僕の名は、君が決めていいよ。ミツカッチャ神と言う名だけは駄目だ」


 と楽しそうに笑った。


 アザレアは、少し考えて、では【万次郎】で。と答えた。


「それ、前世で君が飼っていた犬のなまえじゃなかったっけ? まぁいいや。万次郎で」


 アザレアは驚いて、えっ? いいんですの? と問う。


「ミツカッチャよりはましだね。あぁ、でも今度からあの洞窟の名前、万次郎洞窟になっちゃうね」


 彼はそう言って微笑んだ。アザレアは万次郎に、ここはどこなのか訊いた。


「ここは、そうだね、神の庭と言ったところかな?」


 神の庭? と言うことは天国? (わたくし)死にましたの? その問いに万次郎は答える。


「いや、奈落を閉じる瞬間に、時空の混沌に巻き込まれて、意識だけがこの空間に弾き飛ばされただけ」


 アザレアは慌てて、もとの世界に戻れるのか訊く。


「もちろん」


 そう答えると、続ける。


「君はあの世界の者たちと深い絆があるからね。特に彼とは深い繋がりがあるようだから、すぐに彼に引き戻されるだろう」


 そう言うと、微笑む。


「君のいる世界は僕がプログラムした世界だから、わかるんだ」


 プログラムされた世界? アザレアがそう言うと、万次郎は頷いた。


「そう、でも全てを事細かに決めている訳ではなくて、自然の理や法則なんかのベースの部分だけプログラムして、その中で自然発生した君たちが世界を形成していく。そうやって形作られている世界だ。ところが君のいる世界はなかなか安定しなくてね、最終的に毎回消失してしまっていた」


 そう言うと苦笑した。


「何度も同じ世界を繰り返し、その中から原因を探した。その過程でいつも君の魂だけ、この場所に来て浮遊しているのに気がついた。だが、最初は君がバグだと思っていたので無視していた」


 バグ? ですか?


「そうだ、元々君はこの世界の者ではない。他の安定した世界からこぼれ落ちてきた魂だ。でもその事自体は特に問題もなかったから、気にしていなかった。それに僕は世界の崩壊の理由を探るのに躍起になっていたんでね。そして歴史を順に調べていくうちに、ある段階から突然世界を掌握できるほどの時空魔法の魔石が出現することに気づいた」


 アザレアはびっくりして答える。


 まさか、その魔石って(わたくし)が作った物ですの? 


 すると万次郎は首を振る。


「そうとも言えるが、違うとも言える。前回世界が崩壊してしまった時に、もしかして鍵は君にあるのかも、と思い崩壊した世界の時空を遡り、本格的に君の存在を調べることにした。するとチューザレが君に毒を盛り、仮死状態とし、その体を盗み君から魔力を吸い出し魔石を作ったことがわかった」


 アザレアはぞっとする。それは禁呪だったからだ。彼はそんなことにまで手を出すところだったのだ。万次郎は続けて言った。


「まだ驚くのは早い。君は他の世界からこぼれ落ちてきた存在で、その魂の根底は、まだそちらとつながっている。そこから溢れる膨大なエネルギーに気づいたチューザレは、それを利用し魔石にしたんだ。そして、チューザレは世界を掌握する力を手に入れた。カルミアたちがそれに気づいた時には、すでにチューザレにすべてを掌握された後で、その魔石の根源である君を、眠りから目覚めた時点で殺すしかなかった」


 アザレアは以前見たことのあるビジョンを思い出した。万次郎は頷く。


「その記憶は、前回のものだ。君から魔力を吸い出して作られた時空魔法の魔石はチューザレが亡き後も、持ち主をかえその魔石を取り合うように紛争を繰り返した。そして最終的に欲に目の眩んだ者の手により暴走し魔石によって世界は崩壊した」


 (わたくし)は存在してはいけない存在ですの? 


 万次郎は首を振った。


「その力を正しい方向で使用して、今回は逆に救世主となった。現に今回は私の世界の一番問題であった奈落を塞いだ。やはり君はバグではなく、私の世界の要だったのだろうね」


 そう言って微笑んだ。アザレアは更に訊いた。


 なぜ今回は助かることができたのでしょう? 


「今回は奥の手を使った。君の前世での記憶をわざと思い出させた。そして君に全てかけてみることにした。それが上手く行ったというよりも、君という存在が他の次元から来たこと、そして前世の記憶を持っていたこと、これらは最初から必然的なものだったのだろうね」


 アザレアはとりあえず納得した。万次郎は続けて話す。


「それと君は他の次元からこぼれ落ちた高位な存在だ。このままいくと私と同等の存在になれるよ。なんならこのまま戻らずに、ここで私と世界を監視することもできる」


 とんでもない。元の世界に帰りたい、待っている人がいる。


 そう願った。


「そうか、残念だがしかたがないね。どうせアザレアとしての人生を全うすればここに戻って来るのだし、行こうと思えば僕はいつでも君に会いに行けるのだしね」


 そういうと何かに気づいたように言った。


「そうそう、戻るなら教えておこう。君の力でならすぐにわかると思うが、君が品種改良したあのグラデーションのスターチス。別に増やしても問題ないよ」


 と笑顔になった。


「あと一つ、教えておかないといけないことがある。君は光属性が使えるようになった。元々君は全ての属性魔法を使えるんだ。ただ、その力が一気に解放されると、あの世界に存在するための器たる体が、その負荷に耐えられない。だから魔力が増大し、少しずつ徐々に力が開放されていっている。今回は光魔法が解放されたようだね。重力魔法もそのうちに使えるようになるだろう」


 アザレアは自分の存在の恐ろしさを知った。それに反応し万次郎は答える。


「あまり恐れ過ぎてもいけないが、君の力は計り知れない。その力がこの世界をも崩壊させてしまいかねないことを、理解しておいてくれればいい。そしてお疲れ様。世界を救ったんだ、私の救世主でもある君に敬意を表する」


 ありがとうございますと、アザレアは少し照れながらお礼を言った。万次郎は微笑むと言った。


「あと戻るなら一つお願いがある。ミツカッチャという名だけは訂正しておいて欲しい」


 アザレアは訊いた。


 名前、本当に万次郎でよろしくて?


「うん、万次郎でいいよ」


 と万次郎は笑った。そして何かに気づいたように言った。


「あぁ、彼が君を呼んでいる。じゃあ、またね」


 そう言うと、アザレアに手を振った。するとアザレアは光に向かって突然急上昇する感覚がした。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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