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第五十二話

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 カルやフランツから話を聞き、ヒュー先生が文献を読み奈落の調査に入ったりしたことで、ここ数日忙しく張り詰めた空気が流れていた。


 カルが極秘に編成した調査団と研究班にはヒュー先生も加わり、最近二人ともそちらに掛かり切りになった。時折アザレアもその調査団や研究班に加わることもあったが、当然アザレアは裏方で、現場ではカルやヒュー先生が指揮をとっていた。


 それと平行してフランツはチューザレ大司教の身辺を探っていた。


 表面上穏やかで、最近は聖女に振り回されている可哀想な大司教。これが世間一般のチューザレ大司教のイメージだった。アザレアもフランツから話を聞くまでは、そんなイメージしかなかったぐらいだ。


 チューザレ大司教は証拠を残さず、隠密に動くのでフランツも調べるのに苦労しているようだった。逆にあの偽造許可証はよく残っていたものだと思うぐらいであった。


 流石にチューザレ大司教も、教会内で他の大司教がわざわざ保管されていた許可証を引っ張りだし、調べるとは思わなかったのだろう。




 そんな中、アザレアは久々に何も予定のない一日があった。丸一日お休みなのは久しぶりのことであった。


 アザレアは王宮の庭の一角にある円形のコンサバトリーを借りて、お茶を飲みながら読書をすることにした。シラーにお茶の準備をお願いし、図書室で手頃な本をみつけるとコンサバトリーに入った。


 外は寒い陽気であったが、青銅の骨組みに全面ガラス張りの円形の建物内は、日が差してポカポカとしていた。コンサバトリー内にはかごの二人掛けのソファ一組と一人掛け二組が置かれていた。どちらのソファもクッションが効いていて、すこぶる座り心地が良かった。


 ソファと揃いのテーブルの上には、すでにお茶の準備が整っていた。アザレアはソファに腰かけ、そのまま寝転んだ。そしてそのまましばらく鳥のさえずりや、草木のざわめきを聴きながらまどろんでいると頭上から声がした。


「こんなところで、お昼寝かな?」


 カルが顔を覗き込んできた。アザレアは驚いて起き上がると、居住いを正した。髪の毛を整えているとカルが微笑む。


「驚かせてしまったようで、わるかったね。もっとリラックスしてくれていていいよ。ところで、私も混ぜてもらってかまわないかな?」


 アザレアは久しぶりにカルとゆっくりしたいと思い頷く。


「ありがとう」


 カルはアザレアの隣に座った。距離の近さにアザレアは緊張した。


「ごめん、少し肩を借りるよ」


 カルはそう言うと、アザレアの肩に頭を乗せた。


「このまま少し、君を補充させてくれ」


 そうしてカルは目を閉じた。アザレアはカルを見つめた。長い睫毛、彫りの深い目鼻立ち、整った唇、まるで彫像のようだった。ハニーブロンドの髪の毛が肩にかかり、フワッとカルのコロンが香る。


 カルはアザレアにはあまり疲れをみせないようにしているが、こうしてじっくりカルの顔を見るとだいぶ疲れているように見えた。アザレアはカルの頭を優しく撫でた。


 そうしているとカルが寝息をたて始めた。カルを起こさないように、しばらく動かずじっとしていたが、そうしているうちにアザレアもだんだん眠くなってしまい、そのまま眠ってしまった。


 目を覚ますと、ソファの背もたれに寄りかかり寝ているアザレアの横で、カルがソファに肘をついてこちらを向き、近距離でアザレアの顔を見つめていた。


「起きてしまったか、いつまででも可愛い寝顔を見ていたかったんだが」


 そう言ってカルは微笑んだ。アザレアは恥ずかしさのあまり顔を手で覆って言った。


「こんなもの見てはいけません!」


 カルはくすくす笑う。


「今の君の反応も含めて、全てが愛おしいね。さて、君を十分補充できたよ、ありがとう。これでまた頑張れそうだ」


 そう言うと、思い出したように言った。


「そうそう、あんなに無防備な姿をさらしているといたずらされるよ」


 そう言って微笑むと、しばらくアザレアの唇を見つめた。そして立ち上がり、のびをした。


「さて、私はまだ仕事が残っている。名残惜しいが行かなくては」


 そしてこちらを向く。


「私はこれで失礼するよ。君はゆっくりしておいで」


 そう言って去って行った。


 去って行くカルの背中を見ながら、先日話した内容を思い出していた。全く気づかずに過ごしていたが、カルは裏で色々手を回しアザレアを守ってくれていた。相当苦労したに違いなかった。アザレアがもし、あの日に話を訊きに行かなければ、ずっとその事は黙っておくつもりだったのだろうか?


  そんなカルの気持ちを考えているところに、シモーヌが来てアザレアに声をかける。


「お嬢様、昼食もこちらにお運びしましょうか?」


 そう言われて、アザレアはもう正午を回っていることを知った。昼食はいつものように部屋に準備するように伝え、読むはずだった本を持ってコンサバトリーを出た。


 結局午前中は本を読まずに、昼寝をして終わってしまった。昼食をとりながら、絶対に午後は本を読んで過ごそう、そう思っていた。その時、部屋の入り口からシラーの声がした。


「少々お待ちください」


 それに続きカルの声がする。


「いや、話が長くなりそうなんだ、中に入らせてもらうよ」


 アザレアがその声に反応し振り返って見ると、部屋の入り口にカルが立っていた。カルは軽く手を挙げる。


「やぁ」


 アザレアの方へ歩いてくると、アザレアの前に跪いた。


「アズ、大変なことになっている。危険だが手伝ってくれないか?」


 そう言うと、アザレアの手を取った。カルの様子に何かただ事ではない事態に陥っていることを見て取ると、アザレアは膝に載せていたナプキンをテーブルに置いて頷いた。カルはアザレアの指にキスをする。


「君のことだから、すぐにでも現場に行きたいと言うかもしれないが、対策はとってある。急がなくていい。まずは説明を聞いて欲しい」


 カルはそう言って立ち上がると、向かいの席に座った。そして説明を始めた。


「未明のことだが、結界の地平周辺で、奇怪な音がしたらしい。その時は特に何事もなかったようだ。朝になり、その場を通り過ぎた人々の体調が悪くなり、ついに倒れる者まで出始めた。その者たちはモンスターによる障りに症状が類似していたため、音がしたと言う場所の結界を調査することにした。そして結界が一部消えてしまっている場所が発見された」


 アザレアはカルに訊いた。


「結界が一部壊れるなんて、聞いたことがありませんけれど、カルはこのような現象を文献等で見たことはありますの?」


 カルは首を横に振って答える。


「私も聞いたこともなければ、文献で見たこともないよ」


 考えられるのはチューザレ大司教の関わりだろう。だが、なんの目的でどうしてやったのだろうか?


 それにカルは人々が倒れたと言った。前世の世界だと、すぐに倒れるれるような被害はない。飛散粒子ではない可能性も出てきた。もしくは致死量を浴びてしまった可能性もある。後者だとしたらとんでもない事態だ。


 あと一つ問題がある。モンスターが本当に飛散粒子だとして、この世界では飛散粒子を測定する手立てがないことだ。


 アザレアは引き続きカルに訊いた。


「研究班の方で、モンスターを捕捉するような手だては考えられていまして?」


 カルは頷く。


「やってはいるが、正直未知の分野だからね。その粒子の特定がまず難しい」


 そう言って、眉根にシワを寄せた。アザレアは不意に、自分にならできるのではないか? と思いカルに言った。


(わたくし)、それ、できるかもしれませんわ」


 カルはギョッとしてこちらを見た。


「まさか、流石に君でもそこまでは……」


 とつぶやいたが、それを否定するように首を振る。


「いや、アズだからこそできるのだね。説明して」


 と、話の先を促した。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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