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第二十一話

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 アザレアの誕生会が開かれることが決まってからこちら、目まぐるしい日々が待っていた。


 すぐに王都に戻ることになり、アザレアは王宮から厳重な警護がつけられた。


 (わたくし)のロングピークでの生活よ、さようなら。と、アザレアは平穏な日常に心の中で別れを告げた。


 アザレアは自分の死が迫っているかもしれないため、リアトリスが反対しても誕生会そのものをやらないつもりでいた。だが、国王自ら誕生会の参加を表明すると言うことは、誕生会をやれと言うことだ。ここまでするのだから、なにか思惑があるのだろう。アザレアは覚悟しなければならなかった。


 しかし、三週間と言う短期間で準備せねばならないというのは、正気の沙汰ではなかった。招待状を書くだけでも大仕事だ。


 ドレスの準備には当てがあった。ファニーだ。ブラックダイヤを渡してあるので、それですでにドレスを作っている。それを着ればブラックダイヤの知名度も上がるし、正に一石二鳥である。


 そう思っていた矢先、王妃殿下からドレスが届いた。


 アザレアはお父様が準備は問題ない、と言ったのはこう言う事だったのか、と思った。とは言え、ドレスはフィッティングしなければならないだろう。


 シラーやメイド達とドレスの箱を開けてみると、ワインレッドの刺繍が施された肩まで長さのあるラッフルカラーのドレスが入っていた。


 裾の方へ向けて濃紺にグラデーションしており、ウエストと広がった袖先やスカートの裾にふんだんにブラックダイヤがちりばめられていた。ドレスに合わせたヒール、髪飾りにもブラックダイヤがふんだんに使用されている。


 このブラックダイヤは、おそらくアザレアがファニーに渡したもので間違いなかった。考えられるのは、ファニーはもともと王宮から依頼を受けていたのではないだろうか? ということだ。


 今月始めにファニーに言われて採寸したが、あの頃からアザレアが知らないところで、計画は動いていたのだろう。それにしても、この短期間にこれほどのドレスを仕上げてしまうとは驚くほかなかった。


 贈られてきたドレスに袖を通すと、サイズがぴったりで直すところがない。アザレアは仮縫いに呼ばれていない。なのに、ここまでぴったりなのは流石だと思った。




 そんなこんなで忙しく雑務をこなす中、リアトリスも忙しいようで、帰りが遅くアザレアはいつも一人で夕食を取る日が続いた。


 だが、そのあと図書室へ行ってカルと会えると思うと、アザレアの心は弾んだ。


 この頃には、アザレアはカルと会うことが楽しみでならなかった。雑務に追われていないときは、いつのまにかカルのことを考えているぐらいだ。


 この気持ちは、以前王太子殿下を想っていた頃と全く違う気持ちだった。




「待ってたよ、アズ。来たね」


 アザレアは微笑み返すと答える。


「もちろん来ましたわ」


 先日置いたソファは、読書メインの日以外もそのままとなっているので、二人でソファに座ってまったりしながら話せるようになった。


 お互い早速ソファに腰かける。いつものようにカルがお茶を入れ、紅茶の良い香りが漂っていた。カルは手の甲でアザレアの頬に軽く触れると、申し訳なさそうに言った。


「アズ、なんだか疲れているね。誕生会の準備に追われているんだね。父上と母上が無理を言ってすまない」


 アザレアは首を振る。


(わたくし)のことを思ってくれているのです。ならば(わたくし)もその期待に応えたいですわ」


 そんなアザレアを見て、カルは苦笑する。


「君は何でも我慢しすぎるから、僕の前では我慢しないでつらかったらなんでも言うんだよ?」


 アザレアは頷く。


「そうだ、今日はアズにプレゼントがある」


 カルはそう言ったかと思うと、ジュエリーボックスを取り出した。そしてそれを開けると、アザレアに見せた。


「誕生会で着けて欲しい」


 三角形のトリリアント・カットのピジョン・ブラッドのルビーを中心に、ぐるりとダイヤがちりばめられた首飾りと、ペアシェイプ・カットされたこちらもピジョンブラッドのルビーのイヤリングだった。


「主役なのだから目立たなくてはね」 


 アザレアはそれを素直に受け取ることにした。カルに微笑む。


「こんなに素晴らしい物をありがとうございます。とても嬉しいですわ」


 カルは安堵の表情をした。


「もしかしたら、君に受け取ってもらえないかと思っていた。受け取ってくれるということは、私は少しは期待しても良いのかな?」


 そう言うと、真剣な顔で言った。


「構えずにいて欲しいと言ったのは私なのに、答えを急かせるようなことをしてすまない」


 アザレアは、首を振る。


「いいのです。大丈夫です」


 カルは以前のイヤリングの時のように


「首飾り、私が着けても?」


 と言ったので、頷き背を向けようとしたがその前に、正面からアザレア首の後ろに手を回して、うなじを覗き込むように首飾りを着け始めた。


 首飾りの金具を取り付けるのに少し時間がかかり、うなじを覗き込むカルの髪がアザレアの首筋にかかり、それがくすぐったかった。


「次はイヤリングを」


 とカルはアザレアの髪の毛をゆっくり耳にかけ耳たぶを軽く持ち上げると、優しくイヤリングを着けた。そうしたあと、アザレアをしばらく見つめた。


「うん、完璧だ。美しい」


 カルは満足げに頷きアザレアの前に跪くと、アザレアに手を差し出した。


「私と踊っていただけませんか?」


 夜の図書室なので派手に踊ることはできないが、スローダンスぐらいならできる。アザレアはカルの手を取ると言った。


「よろしくお願いします」


 カルにエスコートされ、図書室の中央に立った。カルはアザレアの手をとり、腰を支えるとスローダンスを踊り始める。


 ふと顔を上げると、カルが真剣な眼差しでアザレアを見つめていた。その視線とぶつかると、猛烈に恥ずかしくなって下を向いた。


 アザレアは自分の鼓動がカルに伝わってしまうのではないかと思っていたが、その時カルの胸から激しく打つ鼓動を感じ、お互いに同じ気持ちなのだと感じた。


 この甘い二人の時間がずっと続けばいいと思った。このとき、アザレアは自分がカルを好きなのだと強く自覚した。と、同時に召喚された聖女のことが気がかりだった。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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