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第十五話

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 翌朝、アザレアはリアトリスと食事を取りながら話し、午前中鉱山の見学をさせてもらえることになった。


 見学といっても公爵令嬢が突然行ったら、坑夫の人達も緊張して仕事の妨げになってしまうし、危険を伴うのでせいぜい入り口の辺りまでだったが、それで十分であった。


「私が案内したいのだが、今日はどうしても外せない用事があってな……。アザレ、他の日にしないか?」


 と、何度か言うリアトリスに


「できれば今日が良いのです」


 と、頑なに断り、今日案内してもらうことにした。シラーは外出用のドレスをすすめたが、鉱山にいくのだからドレスは着られないと思い、ブラウス、チョッキ、ズボンにブーツという男性のような格好をした。


 その格好を見て、シラーは最初こそ


「それではまるで男性のようではないですか、お嬢様の魅力が……」


 と言っていたが、まじまじアザレアを上から下まで見ると


「そのお姿も格好良いですわ、とてもお似合いです。流石お嬢様、何でも着こなしてしまわれるのですね!」


 と、目をキラキラさせた。この世界ではズボンをはくような貴族女性はいない。それはたとえ乗馬するときも、である。


 シラーの反応は大袈裟な部分もあるが、女性がズボンを身につけるのは格好良い。と、世間に認知させれば、こういったファッションも流行るのではないかと思った。


 鉱山の入口までは馬車で向かった。入口ではグラジオラスが立って待っていた。馬車から降りて、右手の甲を差し出す。


「ラス、久しぶりね」


 グラジオラスはアザレアの手を取ると、その甲にキスをした。


「ご無沙汰しております」


 グラジオラスは元々日雇いの仕事をしていたが、才能があり、頭の回転も良くそこをリアトリスに見込まれ引き抜かれた。今はリアトリスの部下として働いている。


 そのせいでリアトリスを物凄く敬慕しているようだった。銀髪、グレーの瞳で一見すると冷たい印象だが、体格がよく日焼けしたその顔には笑いジワが刻まれ、物腰も柔らかく愛想も良いので、誰とでも直ぐに打ち解ける印象だ。


 グラジオラスに案内され、掘削されて運ばれてきた原石を見せてもらった。この世界でも前世とほぼ同じ工程で、原石が掘られている。魔法で発破をかけ、砕いた原石を魔道具で坑道の奥から運び出す。


 運ばれていく原石を見ながら、アザレアは訊いた。


「ブラックダイヤモンドはどうしてますの?」


 グラジオラスは不思議そうな顔をしている。


「ブラックダイヤモンドとは……、もしかしてボタ石のことですか?」


 やはり、アザレアの思った通りだった。ブラックダイヤモンドは、ダイヤモンドとして認知されていないようだ。


 この世界の人々は、透明度が高くクラックの入っていないクオリティの高い鉱物にしか興味がない。


 確かにクラックが入っているものは魔力を注入する際に割れてしまうことがあるので、魔石には不向きではあるが、余程高レベルの魔力注入でなければ、多少のクラックは問題ないはずだ。


 前世の世界ではブラックダイヤモンドはその硬さから、主に工業用として重宝されていた。それに透明度は無くとも光沢が他の鉱物とまるで違うので銀色に輝いて美しい。


「ボタ石ではありません、立派なダイヤモンドです。何個かこちらに持ってきてくれないかしら?」


 グラジオラスは戸惑いながらも、雑然と積んである鉱石の中から数個選んで持ってきた。


「お嬢様、こちらでよろしいですか?」


 アザレアはそれを受け取ると、その中から一番輝きの美しい物を選び出してテーブルの上に乗せた。そして、膨大な魔力を注入し始めた。


「お嬢様、何を! 危のうございます、その石にはそれだけの魔力量は入りま……」


 と言いかけたが、みるみる魔力を吸収してゆくブラックダイヤモンドを見てグラジオラスは言葉を失った。アザレアは魔力を注入し終わるとグラジオラスにその魔石を手渡した。


「ボタ石ではありません」


 グラジオラスはその魔石を食い入るように見つめ言った。


「お嬢様、これは凄い発見です」


 アザレアは満足して、微笑んだ。


「お父様にこの件を伝えておいてちょうだい」


 もしリアトリスの前でこんなことをしてしまった日には、またぞろ太陽だとか、女神だとか言いかねないので、この場にリアトリスがいなくて本当に良かったと思った。


 アザレアは原石を大量にもらうことができた。そのうちの何個かの原石はカットしてもらうように言った。


 鉱山から戻ると、早速鉱山から取ってきたばかりの、ブラックダイヤモンドの原石をいくつか取り出し、時空魔法の魔石を作り始めた。


 これで今度から図書室へ行くのも、鉱山からロングピーク、王都の邸宅、それぞれの移動が格段に楽になる。道具として使う訳ではないので、特に装置を作る必要もなくそのままの魔石で使えるだろう。


 カットをお願いしたブラックダイヤモンドは、時間魔法の魔石にして、フラワーホルダーブローチに使用する予定だった。


 フラワーホルダーブローチとは、花を活けることのできるブローチで、前世で好きだった探偵ドラマの主人公がつけていたものだ。


 ダイヤを時間魔法の魔石にし、その魔石をブローチに加工すれば、ブローチの花がいつまでも枯れないようにできる。これで気に入った花をずっとつけていられるのだ。


 今日はブラックダイヤモンドを発見したことと、それを大量にもらうことができて、かなりの収穫だった。



 豪奢な建物の趣味の悪い食堂で昼食を取ると、魔石を作るのに魔力を使ったために疲れてしまい、少し昼寝をした。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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