29.情勢の行く末
さて、無事オルヴェンヌ公国が誕生したが、他の情勢がどういう結末を迎えたのかというと。
オルヴェンヌ辺境伯領が、領主をソフィアに変え独立したことを知った、ディヴォア帝国の隣国となる国々は、オルヴェンヌと繋がりの強いブランシュール王国との関係を密にし、王国から情報を得ると、領地拡大を目指した。
一方その頃、ディヴォア帝国内でも動きがあった。北の辺境オルヴェンヌと同じように、帝国側から見放されていた東西の辺境も帝国からの独立を目指すことにしたのだ。北のオルヴェンヌは利益を生み出していたが、西と東は領地の運営がうまくは行っておらず、負債を抱えていた。しかし、辺境領であるため、どちらも広大な領地を持っていた。
ディヴォア帝国の東西にそれぞれ隣接していた国々は、この辺境の領地を抱える辺境伯と交渉し、利害が一致し、吸収合併の方向で合意した。
ディヴォア帝国側に交渉すると、皇帝は負債を抱えていた東西の辺境領に興味がなかったこともあったが、兵力を備えている辺境伯が謀反を企て隣国への吸収合併に合意しているため、帝国本体が戦を起こすことが困難となり、戦になることなく机上の交渉のみで領地の吸収合併が行われた。
ディヴォア帝国に残った領土は、都市部の首都とその近郊の街のみとなり、農地などもほとんど失ってしまった。利益を生み出しているのは都市部だと思い込んでいたが、貴族人口が多いからきらびやかであり、そのおかげで経済は回っていただけであった。国内の食糧を自給できなくなった為、輸入に頼らなければならなくなったなどの弊害が生じた。
のちに、皇女が誕生する。この皇女は優秀に成長した。両親の過ちに気付き、皇帝陛下を生前退位させ女帝となり、小国ながらも、国の建て直しを図っている。
ちなみに、皇室を離れたアルフレッド子爵の消息は、すぐに不明となった。
一方、東西の辺境領を獲得した国々では、それぞれの領地の価値を見出だし、負債ではなく利益を生み出した。このおかげで、国自体も潤うこととなった。
西の辺境は、砂漠地帯であったため、作物を育てることは難しかったが、帝国軍の元騎士たちが多く暮らしていたため、軍事力をあげることとなる。
東の辺境には、大きな川が流れており、緑が大変豊かであった。草木で荒れていたが、可能性を見出だした東の国は、田園を築き、平地には農地を開拓し、森林も存在したため、農業·林業が発展した。
ブランシュール王国は、オルヴェンヌ領との友好を表立てることだけで、近隣諸国と密になることに成功した。また、ブランシュール王国の方が優位に立つことにも成功した。ディヴォア帝国が自滅し縮小したことで、この大陸一帯の国々の中では、最も大きな領地と勢力を持つことにも成功したのだ。
争いもなく和平的に国家の潤沢に繋がったことは、ソフィア·オルヴェンヌという一人の女性のおかげであると、各国は彼女を崇拝し、それぞれの街の広場には、ソフィア嬢の像を繁栄の象徴として建てた。
静かに毅然と人々の上に立ち、優しく国民に寄り添ったソフィアは、国民や近隣諸国から、泰平の聖女として語り継がれたのであった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
当初、ここまで話のスケールが大きくなるとは思っておらず、出来損ないの皇太子がすべての原因としていたのですが、つじつまがいろいろ合わなくなってきたので、帳尻合わせをする形になってしまった感があります。もう少しだけ、このソフィアの世界にお付き合いくださいませ。