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24.新生オルヴェンヌ辺境伯

オルヴェンヌ領に戻るとすぐに、アドルフとソフィアは準備を整え、皇帝陛下への謁見を賜った。


数日後帝国王城に足を運ぶと、皇帝と話し合い、オルヴェンヌ辺境伯爵位の生前退位及び娘への譲渡と、領地の帝国からの独立についての許可を得た。ソフィアへの一切の関与を制止していた帝国側は、異論を唱えることが出来なかったこともあり、すんなりと事は運んだ。


話し合いも終わり、すぐに帰路につく。馬車の中では、アドルフとソフィアが笑顔で会話していた。


『随分と容易でございましたね。これも、婚約破棄の取り決めのおかげにございます。お父様の裁量のおかげにございます』


「驚くほど、すんなりと進んだな。ソフィーの決断のおかげでもあるぞ。ありがとう、ソフィー」


『これから、お父様はどうされるのですか?』


「私はここまで努めてきたし隠居生活を…、と言いたいところだが、裏で宰相として君を支えようか?表立っては出来ないだろうが、私はまだまだ現役だ。私の企ての半ばであるからな」


『頼りにしております。お父様』


「ひとまず、アドリアン王子殿下の立太子までにやるべきことは出来たな。ソフィーはこの後はどうするのだい?」


『私にはやりたいことがございますの。ブランシュールでの話し合いや晩餐に参加し、見つけましたわ』


ソフィアは心踊らせている様子であった。そんなソフィアをアドルフは優しく見つめた。



オルヴェンヌ辺境伯邸に戻った2人は、従者たちに、ソフィア·オルヴェンヌ女辺境伯が誕生したことを発表した。これからは、ソフィアが領主であり、支えるようにと。皆、ソフィアを愛し、慕っているため、異論はなかった。


程なくして領民にも、女辺境伯の誕生と帝国からの領地の独立を発表した。領民も既に、ソフィアの婚約破棄や障害など皇室に関わったが為の悲劇を周知しており、帝国への忠誠心など無かった。そして、平民でも豊かに暮らせるように領地を改革してくれたオルヴェンヌ辺境伯への信頼もあり、新生オルヴェンヌ辺境伯領を異論無く受け入れた。


ブランシュール国王への報告の手紙を手配したソフィアは、屋敷の使用人を集めた。

父アドルフや侍従フレデリックにも同席してもらった。手話で話せるところはエマに通訳してもらい、難しいところは筆談し、セバスチャンにお願いした。


『私は、隣国ブランシュールの第一王子と婚約をいたしました。婿として迎え入れるため、こちらにお呼びすることになります。彼と私は言葉を発声することは出来ません。さらに言うと、彼は聴力を持ちません。会話をするには、今の絵札のやり取りでは不足と感じるのです。ブランシュール王家の皆様は、彼とお話するために手話を使っていらっしゃいました。私からはお願いになるのですが、皆さんにも手話を覚えてもらえるでしょうか?私とエマのように、私は皆さんともお話をしたいです。皆さんが彼ともお話できると嬉しいですし、良いことであると考えるのです』


その案に異論を唱えるものは誰もいなかった。それどころか、提案に対して、喜びを感じていた。


「君のやりたいことは、皆で手話を使いたいということだったんだね」


アドルフは穏やかに話しかけた。


『はい。皆さんのお手間を取らせてしまって申し訳ない部分もあるのですが』


そこで、エマは発言した。


「そんなことございません。私は手間などと思いませんでした。皆も最低限身近に使う言葉だけでも手話を使えるようになると、世界が変わると思うのです。ソフィア様や王子殿下とお話が出来るためならば、頑張れるのです」


それには、使用人たちも大きく頷いた。


「実際、絵札に書かれていた文字は、皆、読むことも書くことも出来るようになったのですよ」


使用人たちは皆、誇らしげに笑顔を浮かべている。


『まぁ、お役に立っていたのですね。私は嬉しく思います』


ソフィアの喜んだ様子に、皆、愛おしさと癒しを感じた。


『では、早速、覚えていただく方法としては、実践が早いと思うのです。私も手話を交えながら絵札を使いますし、エマにも皆様との会話に手話を添えていただきます。新たに勉学の為の時間は設けませんので、日常生活の中で習得してみてください』


一同、了解した。


「ソフィアには、驚かされてばかりだよ。こんなにも逞しく、愛に溢れた娘に育ってくれたこと、嬉しく思う」


『お父様が私に愛を持って接してくださっていたからですよ。これからもよろしくお願いします』


二人は抱き合った。


1週間後には、アドリアンの成人記念式典が控えていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


だいぶ長くなってきましたが、物語の終わりがみえてきました。もう少しお付き合いください。


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