22.時が来た(21部分シルヴァン視点)
シルヴァンは、覚悟はしたものの、なかなかソフィアへの愛が断ち切れず、ここ数日眠れぬ夜を過ごし、朝を迎えていた。
この日は、王城にて、国王とオルヴェンヌ辺境伯の話し合いが行われる予定だ。国王からは、今日は部屋で待機しているよう言われている。
(部屋で待機とは、どういうことなのか?)
国王からは、第二王子アドリアンの同席をお願いするつもりとの話で、アドリアンからは同席しソフィア嬢にお会いできた際には、ソフィア嬢がシルヴァンの文通相手であるかを確認すると言ってくれていた。
(…落ち着かないな。いつもなら読書をしに、図書館にいる時間なのだが)
ラファエルはなぜか忙しそうにしており、この日はシルヴァンの傍にいる時間が少なかった。
しばらく、何をすることなく窓の外を眺めていると、慌ただしくラファエルが部屋に入ってきた。
『時が来ました!第一王子として、同席致します』
『時が来た?私を?』
『はい。会合に立ち会っていた侍従によると、他国に披露する前に、第一王子をオルヴェンヌ辺境伯に紹介すると、国王陛下が』
(父上は何をお考えなのだろうか?)
格式を上げた服装に素早く着替え、身なりを整えながら、シルヴァンは考えを巡らす。
『では、参ろうか』
部屋を出て、本殿へ入る。
事情を知らない侍女らは、急に現れた麗しいどこぞの王子に色めき立った。
急いで歩を進める。
(父上は、オルヴェンヌとの関係を最優先に考えていたようだった。他国より先にオルヴェンヌ辺境伯に私を紹介したいということは、まだ国内でも知られていない、ある意味貴重な隠し球である私を、駒として使えということか?オルヴェンヌの為になるのなら、ソフィアの為になるのであれば、私は喜んで駒となろう。…もうすぐ、ソフィアに会える!)
「第一王子がお見えになりました」
侍従が入り口で入室の確認をしている。
(この扉の向こうには、ソフィアがいる。やっと会える、ソフィアに)
扉が開かれた。
こうして、運命の再会となり、2人の未来は繋がっていった。
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