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14.シルヴァンの相談(シルヴァン視点)

部屋に戻ると、ラファエルはシルヴァンに話しかけた。


『今日も長い時間、読書を堪能されましたね』


『済まない、お前をたくさん待たせることになってしまって』


『それは構いません。シルヴァン様が有意義に過ごせたら、それで良いのです。その、今、興味をお持ちになったものについて伺っても?』


(…)


シルヴァンは悩んだが、彼女が明日以降もずっと図書館に顔を出す可能性が確実ではないということもあり、相談してみることにした。


『…、とある令嬢に興味を持った』


「えっ!?」『ご令嬢ですか?あの女嫌いのシルヴァン様が?これまたなぜ?』


なかなかの言い様に、シルヴァンは笑ってしまった。


『昨日、今までに見かけたことのない令嬢が図書館にいたんだ。彼女は私と目が合うと完璧なカーテシーをしてくれたんだ。母上や姉上のそれと遜色ないほどに完璧に。驚いて、そこから目を向けるようになって。さらに彼女は私に話しかけて来ないんだ。離れた場所に腰かけ読書を堪能してた。所作は完璧で。彼女は美しくもあり、そして愛らしくもあり…。そうこうしてるうちに、夢中になってしまった』


ラファエルは驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。

(あのシルヴァン様が、恋に落ちるなんて!!というか、完全に落ちてしまってるじゃないか!!)


『あの、それで、そのご令嬢はどこのどなたなのですか?』


『?わからないよ?』


『わからないよ?って、お聞きにはなってないのですか?』


『私が聞けるわけないじゃないか。話しかけもできないし…。彼女とは、目が合うと微笑み合うだけだよ。…ただそれだけなんだ…』


そんなことってあるのかとラファエルは心が熱くなった。こんな穏やかな恋心があるのかと。シルヴァンの為に力になりたかった。


『そのご令嬢は、また明日も来るのですか?』


『わからない。来るかもしれないし、もう二度と来ないかもしれない』


『でしたら、もし会えたならば、次は必ず話しかけましょうよ。お名前も聞いて、また会えるのか聞いたら良いですよ』


こんなに貴重な恋愛は、手放してはいけないと、ラファエルはシルヴァンの背中を押すように助言した。

しかし、シルヴァンにとっては簡単なことでは無かった。


『どうやって!?私は、会話が出来ないのに!耳が聞こえなければ、言葉を伝えることすらできないのに!!』




シルヴァンは生まれつきの聴覚障がいを持っていた。


その為、家族と、シルヴァンの専属侍従であるラファエルとは、手話で会話をしている。


美しい外見に、女性は放っておいてくれないのだが、話しかけられても気づかないため、いつしか、誰でも相手にしてもらえないという噂が流れた。自分でも、恋愛などできるわけないと思っていたため、女性に興味を持つことすらなかった。


『いくらでも方法はあります!私を使えばよろしいのです。通訳を致しましょう』


『それでは、私は障害を持ってますと伝えることになるではないか。それで、今のような笑顔を向けてもらえなくなるのは嫌だ』


『障害を知って、離れていくような女性ならこちらから願い下げですよ。貴方がそこまで惹かれた女性はそんな思慮の浅い女性だとお思いなのですか?』


『彼女は、そんな女性ではないと思う!でも、私からはとても…』


『お話でしたら、他にもできるではありませんか。筆談はいかがですか?彼女は読書を堪能していたと言っていたので、読み書きできるでしょう?こちらなら私を使わなくともお二人でお話出来ませんか?障害を伝えたくないとお思いでしたら、図書館ですし、静かにお話しませんか?とでも添えれば』


『しかし、断られてしまったらと思うと、できないよ』


これまで女性の交際だけではなく、友人といえる人物もラファエル以外にはいないシルヴァンにとっては、交流をすることさえ難題であった。


『もうじき、アドリアン様が立太子されます。そうなれば、あなたの行動制限も解かれましょう。その時に、少しでもあなたを支えてくれるようなお方を増やしておけたらとても良いと思うのです。物理的にもですが、精神的にも』


アドリアンとはブランシュール王国の第二王子であり、シルヴァンの弟である。つまりシルヴァンはこの国の第一王子であった。


ブランシュール王国の国王夫妻は、クリスチアーヌ王女、シルヴァン王子、アドリアン王子の3人の子供を授かった。

シルヴァン王子は、生まれつき聴覚障がいがあり、立太子が難しいだろうと考えた夫妻は、アドリアン王子が誕生すると、二人の王子を派閥争いから守る為に、第一王子は病弱なため部屋に伏せているとし、離宮に住まわせた。この事情を知っているのは王家とシルヴァンに関わる使用人のみだ。アドリアン王子は厳しい皇太子教育を受け育ち、それを陰で支えるべくシルヴァン王子も可能な限りの教育を受けた。ほとんど部屋で過ごすため、学術や戦略的な部分はよりシルヴァンが学ぶこととなり、読書が日課となった。運動不足解消のため、ラファエルとの鍛練も日課となっている。その生活ももうすぐ終わりを迎える。アドリアン王子が成人を迎えるのだ。そこで立太子し、外交も始まる。第一王子の現状も公表となり、行動制限が解かれるのだ。


『無理にとは言いませんが、考えてみてはいかがでしょうか?私は全力でお支えしますよ』


(…)


『私も明日は、目を配ってみますよ。彼女の侍女も待機しているでしょうから、それとなく情報があればと思います』


『…ありがとう、ラファエル』


(彼女は、受け入れてくれるだろうか、私のことを…)

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・シルヴァンの聴覚障がいは、ソフィアとの相性がいいはず!多分… [一言] シルヴァンのめろめろぶりが(笑)
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