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1.婚約破棄と事件

物書き初心者が制作しています。


初めて書いた小説です。

暖かい目で読んでくだされば幸いです。


怪我をする描写があるため、念のためR15指定にチェックしました。

「ソフィア·オルヴェンヌ、あなたとの婚約は破棄とする」


皇太子より突然告げられたソフィアは目を丸くした。


この日は、帝国の建国記念日であり、記念パーティーが行われていた。パーティーには、国内の高位貴族や皇室関係者が参加しており、今年成人を迎える皇太子の正式な婚約と未来の皇太子妃の披露が行われると思われていた。


ソフィアは、オルヴェンヌ辺境伯令嬢で、とても美しかった。ハニーブラウンの煌めく髪に、透き通るような白い肌、蜂蜜色の瞳は輝いており、誰もが羨む程であった。そんなソフィアは、父であるアドルフ·オルヴェンヌ辺境伯と共に王宮に出向いた10歳の時に、皇太子に見初められた。以降7年に渡り、皇太子の婚約者として、首都にあるオルヴェンヌの別邸に居住し、王宮と別邸を行き来しながら、皇太子妃『皇后』教育を受けてきた。


それなのにも関わらず、先の発言を受けたのだ。


「…アルフレッド様、理由を伺ってもよろしいでしょうか?」


一瞬言葉を失っていたソフィアだが、毅然とした態度で対応した。


ソフィアが向かい合った先には、アルフレッド·ディヴォア皇太子がいた。

アルフレッドは、ディヴォア帝国の皇太子で、長身に、柔らかい金髪、エメラルドの如く輝く緑色の瞳、端正な顔立ちをしており、いつでも貴族女性の注目の的となっていた。


そんなアルフレッドの横には、ソフィアの知らない令嬢が寄り添っていた。


「私は好いたものより、愛しているものと結婚したい。確かに君は美しく好きだった。だが出会うのが早すぎたのだ。後に愛を知ることとなる、このカトリーヌ·ボルドーと出会ってしまったのだ」


「アル様、私のことを愛してると言ってくれるんですね。私、嬉しい」


カトリーヌは、皇太子に対して砕けた言葉を使い、大袈裟な程の笑顔を皇太子に向けている。大きな胸を強調するかのような衣装には、上品さが欠けている。癖のある黒髪に、大きな黒い瞳には幼さが残る。

このカトリーヌは、そもそも、このパーティーには招待などされることのない男爵令嬢である。

この場に居合わせた、貴族たちは、白い目でカトリーヌを見つめていた。


「ソフィア、君は私の前でちっとも笑わない。微笑むくらいで。そんな君は、『貴婦人の嗜みだ』と言っていたが、いくら美しくても、人形のような君のそばにいるより、ケラケラ笑いながら、たくさん話をするカトリーヌの方が一緒にいて楽しい。そして私はだんだんとカトリーヌに惹かれていったんだ。このままでは君との婚約が正式なものとなり、愛のない結婚生活が待っていると思うと苦しくて、そうなる前にみんなの前で宣言したかったんだ、私が皇太子妃に迎えたいのはカトリーヌなんだと!」


城内は、シーンと静まりかえった。

そして、その場に居合わせたものたちは皆、皇帝と皇后のいる玉座に目を移す。

そこには、わなわなと握った拳を震わせている皇帝と、口元は扇で隠れているものの眉間にシワを寄せた皇后の姿があった。


「皇帝陛下、私はこのカトリーヌ·ボルドーを愛しています!ソフィア·オルヴェンヌとの婚約破棄とカトリーヌ·ボルドーとの婚約を認めてください!」


「アル様…!

 皇帝陛下、私からもお願いします!皇太子様との婚約を認めてください!」


皆、絶句した。

(…男爵令嬢ごときが、皇帝陛下に直接話しかけるとは)

(…そもそも、婚約者のいる皇太子様に対して砕けた名前の呼び方をするなんて)

(…皇太子妃に迎えたいというこの男爵令嬢の行いを正さない皇太子様もいかがなものか)

(…ソフィア様がおっしゃったという貴婦人の嗜み、当然のことですわ。歯を見せて笑うなど、マナーがなってないもの)


次第にざわめき出した会場内で、あまりの茶番にソフィアは開いた口が塞がらない。

もともとソフィアは見初められただけで、皇太子妃になりたかった訳でもないし、皇太子に対して感情はない。皇太子がソフィアに向けていた好意分くらいは好意を持っていたが、婚約を受け入れたのも、皇太子妃教育を頑張ってきたのも、全ては国の為、貴族として生まれた女性としての責務と思っていたからだった。



その時!


「きさまぁ~っ!!」


声がしたかと思うと同時に、ナイフを持った男が、アルフレッドめがけて飛び出してきた。


「!…アルフレッド様!危ないっ!!」


ソフィアは、ナイフを持った男とアルフレッドの間に体を差し込み自らが盾となった。

その瞬間、ナイフはソフィアの首もとを裂いた。ソフィアは血を流して倒れ混む。次には衛兵が男を取り押さえ、更なる被害は防ぐことができた。


「!!ソフィア!!なぜ!?私の為にっ!!私に愛などないだろ!?」


アルフレッドは叫び問うたが、声にならない声でソフィアは答えた。


(…皇妃の…、…責務ですわ…)


やっとのことで聞き取れた言葉に、アルフレッドはすぐさま玉座に目を向けると、そこには、皇帝の前で両の手を広げて、不審者から皇帝を守るべく立ちはだかる皇后の姿があった。


そしてアルフレッドは、はっと重みを感じている背中に目を向けると、自分を盾にし隠れるように震えているカトリーヌの姿があった。


傷ついたソフィアは、すぐに医師と救護班が駆けつけ、別室へと運ばれた。


取り押さえられた男は、アルフレッドめ、貴様を許さんと唸っている。


「…私に何の恨みがあるのか?」

とアルフレッドが問うと、


「俺は、そこにいるカトリーヌ·ボルドーの婚約者だ!俺からカトリーヌを奪うなんて!!」

と叫んだ。


「…カトリーヌ、どういうことだ?君には婚約者がいたのかい?私に愛を囁いていたのに」


「いえっ!!こんな人婚約者ではありません!婚約はなかったことになってますから!そしてアル様を愛するようになったんですからっ!!」


自分も婚約者がいるにも関わらず、他の令嬢と逢瀬を楽しんでいたのに、自分のことは棚に上げ、アルフレッドはカトリーヌを責め始めた。自分たちの所為で、怪我人が出ているにも関わらず、くだらぬ言い争いを始めた2人に、今まで静観していた皇帝が口を開いた。


「静かにしないか!ここは建国記念パーティーの場であるぞ!!たくさんの方にお集まり頂いている場で、個人的に騒ぐとは何事か!!」


皇帝は窘めると同時に、とりあえず不審者を牢に連れていけと命じた。そして、話を続けた。


「…さらには我が国の皇太子の婚約者として務めてくれていたソフィア嬢が怪我をしたというのに、アルフレッド、貴様のその態度はありえん!本来ならば、宰相らと会合を重ね決めることであろうが、元より考えておったように進めるとする!本日、この場で、皇太子アルフレッド·ディヴォアを廃太子とする!」


この場にいるすべてのものが、驚きで固まった。

そして、始めに動き出したのはアルフレッドであった。


「…皇帝陛下、私を廃太子するなんて…、そんなことはありえませんよね?だって、皇帝陛下には、私しか子供はいないじゃありませんか?次期皇帝になる資格があるのは、私しかいないじゃありませんか?」


皇帝陛下はため息をひとつつくと、語り始めた。


「なぜ、私に子供がお前しかいなかったか、それは、権力争いが起こることを恐れたからだ。端から一人しか継ぐものがいなければ、派閥などは生まれないと考えていたからだ。私は皇后と相談し、男児が生まれたら、そこで子供は持たぬようにしようと。だが、成長するとともに、予期していなかったことが出てきた。その息子に、皇帝としての資質がないという問題だ。いくら勉学や剣術が優れていようと、貴族としての責任感、皇族としての振る舞いや覚悟に欠けておる。本来ならば、国に利のある結婚をしなければならないが、辺境伯令嬢に一目惚れし、その令嬢でなければあとを継がないと駄々をこねた。まぁしかし、その令嬢ソフィアは、大変優秀であったし、身分に出自、人柄も問題がなかった。だからこそ、オルヴェンヌ辺境伯に打診して婚約をお願いし、ソフィア嬢に厳しい教育を受けてもらっていたというのに。そのソフィア嬢を蔑ろにし、そこの令嬢に現を抜かし始めた時からは、アルフレッドを廃太子し、次の跡継ぎを考えようと、皇后と決めておった。それが今、現実となる!」


アルフレッドは自分の廃太子の決定の裏に、感情だけではない、確かな考えがあってのことだったことに驚きを隠せなかった。


「しかし、皇后のお歳を考えても、今から新しい皇子というのは難しいのではありませんか?」


このアルフレッドの発言には、皇帝の怒りをさらに買うことになる。


「この場において、なんたる無礼な発言!しかし、この場だからこそ、ここに居合わせた皆様方に、アルフレッドがいかに皇太子に相応しくないのかを理解していただける機会となる!さらには発言を取り消せないよう証人となっていただこうぞ!」


これにはアルフレッドは青ざめる。


「…確かに、子を授かるにはギリギリであろう。そこも2人で相談の上。授かれば女子であっても皇女として、女帝になってもらえば良い。また、なかなか授からなかった場合には、側室を設けることも異論はないとした。結果、今、皇后のお腹には新しい命が宿っておる!」



!!!!!


わぁー!っと会場内は驚きと喜びに満ちた。

拍手と、『おめでとうございます』という言葉で溢れた。


皇帝は皇后に向き合う。


「君が私の前に出て、私の視界に君の背中しか見えなかったときには、心臓が止まるかと思ったぞ。君は今、1人の身体ではないというのに…」


皇帝は優しい声と瞳で、皇后に寄り添った。


「とっさのことで、自然と体が動いたのです。皇后として、当然のことにございます。貴方の命が最優先にございますから…」


皇后は、そっと皇帝の手に、自分のそれを重ねた。そして、優しく朗らかに微笑んだ。


その姿にアルフレッドは驚愕した。二人はいつも毅然とした態度でおり、人形のように感情が見えぬ表情を纏っていたため、仮面夫婦で政略結婚の成れの果てだと考えていたからだ。まさか、こんなにもお互いを思い、愛に溢れていたとは。


「さて皇后、君からも何か発言があれば、許可しよう」


「では、お言葉を頂戴して、発言させていただきます」


キリッと会場に向き直り、皇后は話し始めた。


「母親として、こんな不甲斐ない息子を育ててしまったこと、情けなく思います。しかし、そんな息子でも、命を救ってくれたソフィア嬢には感謝しかありません。皇太子妃となるべく励んでくれていたことを、私はよく知っています。息子に代わり、お詫びとお礼を申し上げます。ソフィア嬢には、この先、幸多からんことを願います」


皇后は話し終えると皇帝の後ろに下がった。

それに合わせ、侍従が皇帝の耳元で報告を済ませた。


「ふむ。今、ソフィア嬢の一命を取り留めた報告を受けた。まだ意識はないようだが、引き続き我が帝国の医師団に全力を尽くしてもらう。すまない。待たせた、オルヴェンヌ辺境伯。ここまで見届けていただいたこと、感謝する。そして、ソフィア嬢に対する非礼への詫び、これまでの尽力に感謝すると共に、婚約解消とそれに伴う賠償について、話し合いの機会を設けたい。今はまずソフィア嬢の元に向かってもらって構わない」


そう、この場には、アドルフ·オルヴェンヌ辺境伯もいたのだ。アドルフは娘の悲劇の行方を見届けるべく、この場に残り、静観していた。


「…では、まずは娘の元に向かわせていただきます。父としては、今回の騒動の責任、厳しい処罰を望むとともに、配慮願います」


失礼しますとアドルフは退室していった。


「皆のもの、祝いの場で、このような騒ぎが起きてしまったこと、詫びよう。また、見てもらったとおり、アルフレッドとソフィア嬢の婚約解消は、アルフレッド側に問題があり、ソフィア嬢には何の問題もない。以降、騒ぎ立てぬよう配慮を願おう。また、人の命を救った恩人でもある、ソフィア嬢のことは誉め称えて欲しいと思う」


この言葉を受け、会場にいるものたちは拍手を送った。


「さて、アルフレッドよ。今は私も冷静さに欠ける。お前の処遇は今後じっくり精査し、対応する。それまで、自室にて待機せよ」


「…、かしこまりました」


「それと、そこのボルドー男爵令嬢。お前は事実を確認の上、処遇を考える。男爵家にも相応の処罰があると思え。それまでは、別室にいてもらう」


「私一人ですか?アル様とは一緒にいられないのですか?家に戻れないのですか?」


立て続けに質問を投げ掛けるが、相手になどされず、引きずられるように、退室させられた。


「これにて、騒動は一旦、終わらせてもらおう。パーティーの続きとしたい。残りの時間、楽しんでもらえると嬉しく思う」


こうして、長い一日は過ぎていった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


世界観や、背景、用語など、調べて注意しながら制作しましたが、至らない点や、誤字、不備などありましたら、お知らせくださると助かります。


より良い作品が生み出せるよう努めていきたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 昔現在の上皇陛下が天皇陛下だった時に御公務で参列されていた式典で大きな音がして、その時咄嗟に皇后陛下が天皇陛下の前に出られて陛下を庇われた場面がニュースで映された事があり、その場面が第一話を…
[良い点] ・「皇妃の責務」を果たすために、自ら盾となったソフィア [一言] 上に立つものが責務を果たさずして、上にいられるはずもなく。 今後の展開が楽しみです!
[気になる点] 句点が多くて読みにくいです。
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