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大賢者の魔法喪失  作者: 夜見風花
呪われた大賢者編
8/33

考察【グリッド視点】

 アンリ=ロイが……死んだ。

 俺も目をかけていた、素晴らしい才能の持ち主が。


 ──理不尽にもその命を奪われてしまった。




 …………過ぎたことを気にしても、何も生まれない。

 それが、長い間局長として、大賢者として、多くのことを経験してきた俺の持論だ。



 もともと俺はマリーナのようにあいつと親交があったわけではないだから、悲しむのも筋違いな気がする。


 ……思えばほとんど、話したことすらなかったな。




 あいつが成長していればどんな大賢者になったのか……それが見られないことが残念で仕方がない。灰と化すまで全てを焼き尽くす炎……他の炎魔法とは違うそれが、どんな成長を遂げるのか──興味があったのだが。





 ……俺はマリーナの去った、散らかりきった部屋で一人考えていた。



 ──唯一つ、気がかりなことがある。アンリの魔力が、数日前からめっきり感じられなかったことだ。マリーナの様子を見るに、事件が起こったのはついさっきのようだった。しかし、あいつの魔力はここ数日、一切感じられなかった──死んでいた訳でもないのに。




 俺は『魔力探知』が得意だ。


 王国内はもちろん、周辺の草原から、更にその先までどれだけ矮小な魔力すらも逃さずに、一日中感知し続けることができる。


 流石に燃費が悪いので、仕事で魔法を使わない日に限るが。




 つまり、この俺がアンリほどの膨大な魔力を見逃すはずがないということだ。マリーナはアンリの魔力が消えたことについて、一切言及しなかった。


 

 そして、マリーナの魔力はこの数日間、アンリの魔力が最後に感知された森へ行き、そして再び自らの森へ戻るという不可解な動きをしていた。



 また、今朝、アンリの魔力は一時的に復活した。『炎弾』一発で尽きてしまったようだが……その時確かにアンリは魔法を使うことができていた。


 


 このことから考えられること。

  



 ──それは、マリーナがアンリを殺し、その魔力を自らのものとしたということだ。



 この世界では、魔力を持つ物体を破壊したとき、主を失ったその魔力は破壊者へ継承される。

 


 マリーナがアンリに魔力を失う何らかの呪いをかけ、自宅のある森へ拉致し、殺したのではないか。アンリが『炎弾』を放ったのは、必死で呪いを解き、抵抗したからではないか。



 むしろ、これ以外考えられない。ただ同時に、そんなことはあるはずがないと思っている。


 あのマリーナが、あの心優しき彼女が自らの魔力を増大させるためだけに殺人など犯すだろうか。


 しかも、弟のようにかわいがっていたアンリを。



 そして彼女の涙はとても演技には思えなかった。




 ──謎が多すぎて脳が混乱している。

 

 この推理はすべて仮定のもとで成り立っているものだ。真実とは程遠いだろう。それに彼女は憔悴しきっていた。言い忘れることがあっても不思議じゃない。



 ……明日、マリーナを呼ぶか……。さっきあんなことを言った手前、少々気まずいが。



 とりあえず今日は帰って──






 ────瞬間、背筋に悪寒が走る。



 何だ……この魔力は……!? 信じられないほどの悪意を孕み、この世の全てを憎み、滅ぼさんとする魔力が。



 すぐ近く、王国中心部に突如として現れた。



 向かうしかない。これほどの魔力ならば、自分だけで向かったほうが足手まといを増やさない分楽だ。……唯一頼れそうなマリーナは、憔悴しているしな……。そうして俺は黒のローブを翻し、密かに魔法局を出た。

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