アンリへ
よく眠れた?
あんな部屋と布団しかなかったことを、今ここで謝っておくよ。
話は変わるけど、君が俺の家、その扉の前に立ったときすぐ分かったんだ。
あぁ、アンリが来たんだ、って。
どうして君の魔力が移動されたのか。
どうしてその先が俺なのか。
どうして君と、初対面の気がしなかったのか。
わからないことはたくさんあるけど、心残りじゃない。
だって君が、俺の代わりに全部知ってくれるって分かる。
アンリは誰よりも強いんだって。感じるよ。
俺たちはここでお別れだけど、これは別れじゃない。
この手紙の重石代わりに置いた『閃光』──そこに俺の思いを全部託したから。
せっかく俺にくれた短剣だけど……君にお返しするよ。
俺はこういう才能はからっきしだったし、これから俺には何も必要なくなるからな。
これからの辛い旅に、何か役立つかもしれない。
昨日初めて会って、少し会話しただけの奴にこんなこと言われて……迷惑だったらごめん。
俺さ……君が思ってなかったら気まずいかな、と言わなかったけど……アンリのこと、生涯に一人しか出会えないような、親友だと思ったんだ。
不思議だよな……多分、君も同じように感じてるんじゃないか?
思い上がりかもしれないけど。
そして、助言が一つ。
ここから北東に塔がある。魔力を得てすぐ感じたよ……余りに膨大な魔力があるんだ。
そこに何があるかもしれない。
君たちの役に立つ何かが。
俺の家の物も、なんでも持っていっていい。
あと村人には、俺のことは言わないでくれ。
彼らに勘違いされたら君たちが危険だからな。
最後に……このことを君が気に病むことはない。
これは俺が自分の意志で選択したことだから。
忘れないで、なんて女々しいことを言うつもりもないが……。
アンリがメルラスに一泡ふかせてやってくれれば、俺は満足だ。
君たちの遥かなる旅路の果てに、幸福あらんことを。
────ロゾミゼ
*
決して上手ではない文字が記された、一枚の手紙。
表面の四箇所に、乾いた水滴の後。
それは今、何よりも熱き意志を持つ者が纏うローブの懐に。
二人の意志が込められた──『閃光』と共にあった。




