衝撃
重複投稿しておりました!
申し訳ありません。
「ここが……イーウェス村か」
そこはタガ村から近く、風魔法であっという間に着いた。
「のどかな場所だね……魔物のことすらも忘れてしまいそう」
農作業をする村人、魔法で遊ぶ子どもたち……平和を具現化したような村だ。
願わくば魔物の手が届かずにいてほしい、そう思う。
「ずっとあそこに魔力……かつてのお前の魔力を感じている。行こう」
彼が指差した先は、外れにある一軒家だった。
「おや、旅人さんかい。ゆっくりしていくといい」
道を行く人がすれ違いざま言った。
「ありがとうございます。用事が済むまで滞在させていただきますね」
僕は会釈をして、二人の先を急いだ。
心が躍る。魔力が取り戻せれば以前のように……!
魔物にももう遅れを取らない。
「アンリ……ふふ、嬉しいんだよね。私も楽しみだよ」
少し後ろにいたマリーナが言う。
一軒家が近づいてきた。
その前に立ち、扉に近づこうとしたその瞬間──
「アンリ、だよね。待ってたよ……俺はロゾミゼ。魔力を俺から取り返しに来たんだろ?」
扉が開く。
そこには……僕より一回りか二回り大きな、ロゾミゼと名乗る青年がいた。
「……あなたが……!」
「おっと、誤解しないでくれ。家へどうぞ、ゆっくり話をしようじゃないか」
彼の何かを知ったような様子……そしてやけに落ち着いたその振る舞いに僕たちは呆気にとられた。
家に入ったそこは物が少なかった。一人暮らしのようだ。
「立ち話も何だし……ここへ」
机と、それに向かい合うように置かれた一対三の椅子。それはまるで、僕たちがここへ来ることを知っていたような……。
僕を中心に、僕たちは座った。
「始めに言っておくと、魔力を奪ったのは俺じゃない。俺はもともと無魔力者だった……魔才がなかったんだ。それがある日目覚めたらこれさ」
「この件について何か……知っていることは」
ルセウスさんが切り出す。
「それが全く分からない。ただ分かるのは、俺が死ねば解決するということだけだ」
「死ぬなんてだめだよ! 何か方法があるはず……」
マリーナが止める。一族虐殺の過去を持つ彼女は、生命を軽率に扱うことに敏感だった。
「はっ、まさか……。それより、アンリ。魔力と共に君の記憶が流れてきたよ……辛かったね。そのうえこんなことになって……本当に申し訳ない」
ロゾミゼは深く頭を下げた。なるほど、僕の名前を知っている理由はその記憶が原因か。
「謝らないでください。誰が悪いわけでもないんだから……」
「……ありがとう。君の記憶が定期的に流れてくるんだ。だから分かる。魔物のことも、メルラスのことも。奴は止めなくちゃだめだ」
そこまで知っていたとは意外だ。
「魔力を元に戻せる方法を探そうよ。時間がたくさんあるわけではないけど」
「それがいいな。メルラスが魔物を寄越すかもしれないが……その時はその時だ」
両脇の二人は決意を固めたようだ。
「あなたは……魔力を元に戻してもいいんですか?」
「ああ、さっき言ったが俺には魔才が無い。宝の持ち腐れってやつさ……むしろ早く君に返したい。それほど奴らは危険な存在だ」
四人の心は同じのようだ。
「じゃあ……よろしく、ロゾミゼ」
「こちらこそ、アンリ」
僕たち二人は固い握手を交わした。
それからしばらく魔力の移動に関する話をしていると、突然彼が言った。
「思い出した!」
「わっ、びっくりした……何を?」
「こんなことになる前の日、旅人が来たんだよ! 君たちのような……こいつは強いって、魔才がなくても肌でピリピリ感じるほどの。顔は覚えていないが……名前は覚えてる」
……! それは大きな手がかりになりそうだ。もし魔力移動が不可能だったら、そいつを探し出すことになるだろう。
続けて彼が言ったのは……耳を疑う名前だった。
「確か……ゴーシャ」
「……! ゴーシャだって……!?」
信じられない。どうしてその名が……? 僕に呪いをかけたのは……いや、そもそも生きていたのか?
「どうしたの、アンリ?」
「……の名前だ。僕の……父の名前だ」
空気が凍りつく。マリーナは手で口を抑え、目を見開いていた。
「……どうして……アンリのお父さんがこの事件に関わっているとでも言うの……?」
「多分、そうだ。……彼が来た次の日だったよ、俺が魔力を得たのは」
そんなの……嘘だ。その話が本当なら、父は……お父さんは僕に何の恨みがあるっていうんだ?
あの日、僕の体に呪いをかけた人も……もしかしたら。
僕の黒が差し込んだ暗い心とは対照的に、窓からは夕日が差し込んでいた。
どちらももうすぐ真っ暗闇が訪れるという点では……その二つは、似たようなものかもしれない。




