第三章
寝る前に書けてよかった。
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「こんばなは~~今日はこの前の続きをやりましょーーう!」
小花ちゃんの配信が始まった。
「こばなはね、クリアまではこれ一筋でやって行こうと思いますけど。
もし、他にやってほしいこととか要望あったら、コメント欄に書いててくださいね~」
〈wこんばなわーー〉
〈こんばなは〉
「最近比較的に時間あるから、連日配信してますけど。
皆はどう?忙しかったらごめんねーー。でも見に来てくれて、すっごく感謝してるよー」
何だろう、この声聞くだけで安心する。姿を見れたのも、思わずにっこりしてしまう。
今僕の顔を誰かが見ていたら、間違いなく「キモい」と評するのだろう。
おっとっと、投げ銭しとこう。
「あっ、ありがとうございます。
【ハッピリー半被】さん。本当にいつもありがとうございます!
えーーっと、
『やっぱこばなちゃんかっわいいぃぃぃぃ』
って、うふふふふぅ…褒めても何も出ないと思うよ??でも嬉しい!」
〈いいのいいの、声聞けただけでも毎日の元気の源になるから〉と、追加でコメントも書いた。
就職してた時期は実家から通勤してたから、貯金はそれなりにある。それを使ってスパチャしている限り、親は何も文句付けて来ない。
「そう?こばな、力になれた?それはよかったぁー」
毎回毎回500円ずつ投げているけど、小花ちゃんみたいなマイナーな個人勢VTuberは、大手みたいにコメント欄がマッハで飛んでいくようなことはないから、それなりにコメントを拾ってくれる。
「ではプレイしていきたいと思いますぅぅ。
はーーじめるはぁじまるよ~」
生配信を追っているリスナーは基本的にいつも同じメンバーばっかりなので、一年も経ってればそれなりに話しやすい。
プレイ中は配信の様子だけじゃなく、コメント欄での会話や挨拶も多々飛び交う。
僕らはそうやって彼女のゲームプレイを見守り続けていた。
「あっ初見さん~こんばなは~」
決してプレイングがうまいわけでもないけど、プレイ中もコメント欄を見てくれるのはとても親近感湧く。
「いや~配信開始して一年くらいは経つけど、未だに時々初見さんが来てくれるのはありがたいです。」
〈ええ~じゃあ僕らみたいな古いリスナーはもういらないんだ~?〉
ここは意地悪しとこう。
「いやいやいやいや、当然いつも見に来てくれた皆にも感謝してます!
そう…だからぁ、っ!!」
ここでポロっと操作しているキャラが落下した。
「ッあああ死んだ。死んだよぉ…
ちょっとちょっと、うぅぅ意地悪しないで~~。ファンの皆は平等で大切だから~」
「ああぅ、ここからやり直さないと行けないのか…」
こういう時の反応が一番かわいい。いわゆる『こば虐』ってやつ。
〈ふぅぅwこば虐助かる〉
〈助かる助かる(肯定)〉
「うぅ…意地悪なファンしかいないなぁこれ。灯台下くら…じゃなくて未来が暗いな…」
そう言いつつ、諦めず難関に挑戦していく姿が強かで好き。
〈うごkがクソ雑だなおい〉
「うわわぁ…初見さんまでこば虐覚えたよぉぉ…どうしよう。」
〈また同じとろこでしんでるかよ、ざこざこ〉
「うぅぅ…」
さっきから、あの初見さんが何か小花ちゃんを叩いているけど…こりゃ荒らしか?
他のリスナーも雰囲気が変だと気づいて、喋らなくなった。
この一年ではほんの少し、1人や2人しか見たことないけど。まあ小花ちゃんがマイナーのおかげもあって、いつもほぼ同じメンバーでわいわい配信してたからな。
〈見て見て、あらしだよ小花ちゃん!〉
「…うえぇ?ARASHI?…このゲームにARASHIも出て来るのか?特にファンじゃないけどぅぅ…」
〈荒らしだよ荒らし!〉
〈は?死ねよお前ら〉
「え…ええ、本当にたまーーにしか見ないですね、荒らしなんて…」
〈ブロックw!ブロック!〉
〈ブロックしようこばなちゃん〉
〈だれがあらしだよクソぶす〉
「ええと…すみませんねあらしさん、流石にコメント欄での喧嘩はよくないので…
ブロックしちゃいます。」
言葉遣いから見ると、まだ精神年齢が低いと感じる。だけど流石に看過はできん。
「ああでも見に来てくれたのは嬉しいので…ありがとう」
〈は しね〉
という遺言を残したまま、荒らしさんは遠い彼方へと飛んでいきました。
〈めでたしめでたし〉
〈というか言葉にセンスを感じるwww〉〈草〉〈草〉
「ええっと…非常事態でしたが、こばなもビックリしましたーー!
あぁでもぉ、死体蹴りはやめようね、皆。」
半笑いでそれを言うのは些か説得力に欠けると思うだがね。
まぁ、そういうたまに見えてくる腹黒な部分も含めて、小花ちゃんの強かさは、好き!
〈お強いwwww〉
〈それは草〉
……
そんなこんなで、予想外の事もあったが、今日の配信も無事終わった。
パソコン画面右下を覗いてみたらすでに夜9時過ぎ。
椅子から立ち上がり、身体をグッと伸ばして、リラックスリラックス。
脳は相変わらずまだ余韻に陶酔しているが、さすがに喉が渇いた。
何か飲み物持って来よう。時間あるし、ゲームをやろう。
ニートにとって、夜はまだ長い。
そしてその日は何事もなく、いつもの時間で眠りについた。
でも問題は翌日の午後、僕がまだベッドでスマホをいじってる時に起きた。
『【速報】Vtuberの秋野小花中の人、セクシー写真流出』
という記事のタイトルを見た瞬間、思考がクラッシュする。
「ハッ?」
目玉が飛び出しそうなのに、口はそれしか発せなかった。
ネットのカオスを垣間見よう。
明日は外出で多分更新しない。