表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

第二章

https://twitter.com/OlympusTarbot

作者のツイッターこちらです!

「樋山!お前何でこんなもん作ったんだ!」

僕は怖くて目線を部長の顔から逸らす。

「でも部長も先日OK出したでは…」

「いつそんなOK出したんだ。ダメじゃないか、嘘を言って。俺はそんなものにOK出すわけね゛ーだろ?!」

いつもこうなんだ、この人。

自分の言い出したことなのに、都合が悪かったら全て否定してくる。

「まぁいいから作り直せ。」

「……」

「お前、同期見てみろ。皆おめぇよりは出来ている。」

「……」

「てめぇなんざ他の会社行こうとしてもどこも要らねぇんだよ。うちだけだからな、感謝しろ。」

……


轟く叫び声、響く台パンの音。僕は鬱憤の中から目を覚ます。

悪い夢を見た。昔の夢だ。

まだちゃんと働いてた頃のこと。

出張の予算を全部事前でこまめに計算しても、結局自腹で行かされることは多々あった。

何か不満があったらすぐ子供みたいに音量を上げるし。

あの人、他人を貶し、自分のありがたみを誇示したかっただろう。

そんな人でも、退職と言い出したら、「おい、どうした。何か職場に不満あったのか?」「あれはあんたのためで言ってるんだよ」とか優しく振る舞おうとする。

多分脳内では自分は優しい上司だと格付けしているのだろう。一体どんな教育を受け、どんな子供時代を送ってきたら、こんな都合のいい脳味噌になるんだ、解せない。

目が覚めても、しばらくはそのまま寝転んでいた。

できるだけ嫌な夢の残留を、脳内から消し去ろうとした。

スマホを見る、11時14分。6時間しか寝てなかった。

外はとっくに晴れ渡っているが、紺色のカーテンを突き刺すことはどうやらお日様にもできなかったみたい。

僕がカーテンを開けない限り、この部屋はずっと夜のまま。

その暗さには安心する。

「…」

スマホを弄り出す。

小花ちゃんの新しいツイット、二次画像、昔の放送の切り抜きを見る。それが僕の日課。僕の一日はツイッターとyoutube動画で始まり、ツイッターとyoutube動画で終わる。

それを1時間2時間くらい見るのは(つね)。むしろそれをせずに人生送れる気がしない。ニートの日常はいつも閑でありながら、ストレスに挟まれている。

幸い、時間だけはたっぷりある。起きれる気分になるまでスマホを弄ればいい。

うちのババアも昔は小言を言っていたが、今となってはすっかり諦めている。

だから起こしにくることも、飯で呼びにくることもなくなった。おかげで自由に寝て起きれる。

「ふ…」

今日も小花ちゃんの魔法のおかげで、やる気出てきた。一日何もしない人間だけど。

ようやく起きれる。

いくらニートと言っても、流石に部屋を半歩も出ずカビみたいに生えているわけではない。歯磨きはするし、家族との会話も…うぅ、極たま~にする。

ババアは僕を健常な人間に戻すの諦めたけど、別に僕という息子を産まれなかったことにはしていないみたい。

…ジジイは半ばそうしてるけど。

今考えれば無理もないことだ。ジジイは何かあったらすぐ正論を突き付けて来るし、僕も何か言われたらすぐ怒る。

…一体何が間違ってんだろう……

でもせっかく気分を回復したし、今はそんなことを考えるべきではない。

「おお、今日は随分起きるの早いじゃん。」

ババアはババアでそれなりに意地張っている、いつもみたいに冷やかしに来る。

「うう…せっかくだし、昼飯は外で食うわ。」

「ああ、じゃあ今作る。」

「適当でいいわ。」

「豪華なもん出す気元々ないよ。」

どれだけ喧嘩しただろう。今はお互い折り合いを付けて、痛い所に突かない言葉を選んでいる。

『カチッ。パシャ!パンパン』

厨房のざわつきを無視し、僕は今立っているリビングを見渡す。

日の当たりのいい所だ。暖かさに溢れるこの場所は、子供の時から見慣れていた。

ジジイはいつものように仕事に行ってる。この歳でよく頑張るなーって考えたら、それもそうか。

こんな息子じゃなきゃ、今二人は年金で老後生活を楽しめたのに。

笑える。

笑えないが、笑える。

「ほらよっ。」

野菜と卵を炒めた物が目の前に出された。

どんな感傷もババアの飯の前では無力だ。そう思えるうちに、どうやらニートで鬱病になって自殺するという結末は、まだ僕からは遠いみたいだ。

「炊飯器にご飯あるよ。」

「おぉ…」

ババアは僕の顔を覗き込む。

「後で干した服を畳むの手伝ってくれ。買い出しもあってあたしゃちょい忙しくってよ。」

「ああ、午後はちょっと時間あるからな、分かった。」ご飯を貪る最中、僕はさり気なく答える。

「ハァ…」ババアも椅子に座って、天井を眺めながらため息を吐く。

そしてまたこっちに目をやる。

「昔お隣の出川(いでがわ)さん、」

「?」

何を言い出すのかと思って、僕も視線をババアに向ける。

「まだ覚えてる?」

「……

 んんん…ちょっとだけ」

「またこの付近に引っ越して来たんだって。近所から聞いた。」

「ほお」

「あそこの娘さん、昔よく一緒に遊んでたじゃん。」

「…流石にそこまでは覚えていないよぉ。」

「場所分かったら挨拶しに行こうと思って。」

「僕は行かないよ。無理だよ。」

近所に息子を公開処刑させる気か。

「ああ、わかってるよ。言ってみるだけさ。」

もぐもぐ、僕の口は咀嚼を止めなかった。

「…ああ、もう」

そしてババアは、また天井を眺め始めた。

約束通り、夜に第二章更新!

勤勉な自分に拍手!ぱちぱちぱち。

明日第三章をアップする予定!(夜かも)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ