CASE3アリアナ・クリスタリア
朝、レイはいつものようにポストを開けると、今日は手紙が入っていなかった。
クーニャの使い魔であるカラスのハナが、手紙を持ってくる時間も過ぎている。
レイは手ぶらのまま、朝食のメニューを考えながら家に戻る。
「パンケーキに目玉焼き、後はサラダと昨日作ったプリンでパフェにしよう!」
メニューも決まり、器具と食材を用意して調理を始める。
クーニャが起きる時間まであと一時間。
キャベツの千切りからホイップクリームまで、手際よく進めていく。
途中鼻歌を歌いながら盛り付けていると、二階の部屋のドアが開いた。
「レイ、おふぁよ〜。」
アクビをしながらクーニャが下りてくる。
いつもは銀色の長い髪をポニーテールにしているが、今日は長い髪を下ろしている。
寝グセを魔法で直したのか、セットされた髪はキラキラしていた。
「クーニャ様、おはようございます。朝食のご用意ができてます。」
眠い目を擦りながら、コクリと頷くとクーニャは席につく。
そこに出来たての朝食が1つまた1つと置かれる。
「クーニャ様、本日の依頼はありません。」
彼女が食べ始めたのを見て、レイはハッキリとした声で伝える。
「なら、今日は道具のメンテナンスの日だな。」
クーニャはぼーっとした顔で食べながら言う。
いまいち目が覚めない彼女を見て、レイは冷蔵庫からパフェ用のグラスを取り出す。
「本日のデザートは、昨日作りましたプリンを使ったプリンパフェですよー!」
クーニャのかろうじて開いていた目が、パチッと開かれたのを見て、レイは微笑み、パフェを作る。
プリン、バナナ、イチゴ、キウイフルーツにホイップクリームが彩りよく入っている。
いつの間にか朝食を食べ終えていたクーニャの前にパフェが置かれる。
朝食の食器を流し台に持って行った帰りに、パフェ用の長いスプーンを渡すと、クーニャは待ってましたと言わんばかりに食べ始めた。
「ああ、そうだレイ、今日は預かってる記憶の整理もするから、保管室には近寄らないようにな。」
保管室、二階のクーニャの部屋の左隣にある部屋で、彼女が依頼で関わった人達の記憶が保管されている。
記憶を返す時、記憶の玉は眩い光を放つ。
記憶の魔女以外の者がその光を浴びると、その者が生まれてから今までの記憶が消え、返ってきた記憶が光を浴びた者の記憶に書き換わる。