17
「で、さっきの事は本当なの?」
鬼気迫った顔で玲奈が聞いてくる。
「本当の事だと思うよ。」
「ふーん。」
「まぁまぁ。お姉様も多分分からない事だらけでしょうし、そんなに機嫌を悪くしなくても……。」
「別に普通よ。」
「既に普通じゃない気がするっすけどね。」
玲奈は僕の状況に納得がいってないみたいだ。
「私のご飯一口あげるから機嫌直してよ。ね。ほら、あーん。」
僕が食べていたイチゴと生クリームのサンドイッチを玲奈の口元をへ運んだ。
「そんなんで私の機嫌が直るはずが……。もぐもぐ。」
「やっぱり機嫌悪かったんすね。」
「お姉さまのサンドイッチ……。羨ましい。」
「ふん。」
「ちょっとは機嫌治ったみたいっすね。」
「よかった。」
「あの……。なんかごめんなさい。私のせいで何かあったみたいで……。」
雨宮さんは物凄く申し訳なさそうにしていた。
僕的には、こちらの事情に巻き込んでしまったみたいで凄く申し訳ない。
「別に貴方が悪い訳じゃないのよ。こちらこそごめんなさい。」
「せっかく関われたことだし、皆も雨宮さんと仲良くしてあげてね。新しい生活で分からない事だらけだと思うから。」
「お姉さまがそういうなら……。」
「自分は別にいいっすよ。雨宮さんよろしくっす。」
「あ……。よろしくお願いします。」
「玲奈もお願いね?」
「しょうがないわね。これからよろしく。」
皆優しくてなによりだ。僕の自慢の友達たち。
「ねぇ……お姉さま?」
「ん?なに?どうしたの?」
「私にも一口もらえないでしょうか?」
「なに?そんなにお腹空いてるの?紬にしては珍しいね。食べていいよ。」
サンドイッチが乗っているお皿を紬の方に動かす。
「お姉さまそうじゃなくて……。」
「え?」
サンドイッチ食べたかったんじゃないのかな。紬甘いの好きだし。
「一花。そうじゃなくて、一夏に食べさせて貰いたいのよ。」
「えへへ……。」
「ああ、そういう事……。」
「お姉さま、お願いします。」
「そう言われたら断れないね……。いいよ。ほら、あーん。」
「あーん……。」
紬が目を瞑ってサンドイッチに口を開けて近づいてきた時、僕の手からサンドイッチが消える。
「あーん……。ってあれ……?お姉さま……?私のサンドイッチはどこに……。」
「あはは……。」
「二人共ずるいっすよ。自分を差し置いて一夏にあーんしてもらうなんて。だから、これは自分のっす。」
「あー!!!凜ったらずるいですよ!私が食べさせて貰うはずだったのに!!」
「抜け駆けしようとした罰っすよ。」
「ねー!私の返して―!ねー、凜ったらー!」
「もう食べちゃったっすもん。返せないっすよ。」
「ねー!早く口から出して―!」
「いやいや……。もう食べちゃったすよ……。吐いてほしいの……?」
「もうそれでもいいからー!」
「それはやめとこうよ……。ほら、紬。食べさせてあげるから……。」
「お姉さま―!」
紬が半泣きの状態で僕に抱き着いてくる。
「ちょっと近いってば……。ほら。」
「あはは。皆さん仲良いんですね。」
僕たちの日常を見ながら雨宮さんは微笑んでいた。