15
「男……?」
「はい……。」
雨宮さんの表情を見る限り冗談ではないみたいだ。
でも、なんで急にそんなカミングアウトを?
それに男って……。女子校に男って問題じゃないか。
僕が言える立場じゃないけど。
男か……。
「驚きますよね……。すいません。」
「あぁ……。うん……。」
「どうか私が男なのを皆にばらさないでもらえないでしょうか?!」
「ええ……。」
バラさないで欲しいなら、何で僕にカミングアウトしてきたんだろう……。不思議だ。
僕が言うのもなんだけど、女性にしか見えないし。僕みたいにボロを出す事がなければ、バレなそうだけどな。
「ダメでしょうか……?」
「いくつか質問していい?」
「はい。」
「正直、私から見て雨宮さんは女性にしか見えないんだけど、何で性別をカミングアウトしてきたのかな。正直言われなければ気づくことなかったと思うよ。」
「そうでしょうか……。女装するのも初めてで、女の子みたいにするって言っても分からなくて……。どうしていいのか分からなくて……。うぅ……。」
ええ?泣いた?どうしよう……。泣かせちゃったのか……。
「ごめんごめん。泣かないで。落ち着いてくれるかな……。」
「すいません……。」
この子にはこの子なりの事情があるのかな……。
「久遠さんは凄く良い人そうで、理事長の知り合いって事もあって、協力してほしいと思ったんです。皆さんを騙すのは勿論悪い事だと思ってます。それでも、出来る限り問題を起こさず生活したいんです。久遠さんにだけは真実を伝えて協力して頂ければと思い……。」
「そうなんだ……。」
「久遠さんが仲良くしたいと言ってくれたのは、凄く嬉しかったのですが、自分は男なので、その気持ちが凄く申し訳なく。」
僕の性別がバレてる可能性も考えてたけど、そういう訳でもないみたいだ。
「そっか。私が皆に性別をバラしたらどうするつもりだったの?」
「その時はその時です。学校を退学するでしょう。」
「なるほど。」
僕が女の子だったら、どうしてるんだろう。普通、男の子と一緒だなんて難しいだろう。
それでも、僕なら彼を助けれるのかな。
「分かった。協力してあげる。その代わりに、条件があるけど良い?」
「なんでしょう……。」
「男と女の子だから、限度はあるけど仲良くはしてほしいかな。後は私が困ってたら助けて欲しいかな。」
「え?それだけですか?」
「うん。どうする?」
「ぜひお願いします!」
「よろしくね。」
握手を交わした。
「私なんかが女の子手を触っても良いんでしょうか……。性別を知ってる久遠さんぐらいは、触れない方がいいのでは。」
「私は気にしないよ。勿論、体をベタベタ触られるのは嫌だけど、これぐらい普通だよ。」
「そうですか……。」
「雨宮さんは何か困ってることある?私も事情を知ってるんだから、出来る限り協力してあげたいしな。」
「困ってることですか……。来てばっかなので分からないことだらけですね……。」
「それもそっか。生活してる内に分からない事があったら聞いてね。何でも答えるから。」
「ありがとうございます。」