12
授業が終わり、四人で部屋に集まる。
改めて僕の話をする機会だ。
「皆……ごめんね。」
「正直びっくりしたし、ショックはあったっすけど……。まぁ、いいんじゃないっすか?」
「本当にそうなのかな……。」
「私は本当にそう思ってますよお姉さま!お二人がお姉さまの在学を認めないと言うのであれば、それは仕方ない事だと思いますけどそうではなかったみたいなので。」
「うん……。」
「私は正直色々考えたわ。真実を皆に伝えるとかどうかとか。一夏を学校から辞めさせるかどうかとか。ショックだったし。それでも、一夏がいなくなるって考えたら胸がモヤモヤして。いてほしいっていうのは本心よ。」
「ありがと……。」
「私もっすよ。もう大事な友達っす!まぁ、男女っていうことで今までとは少し変わるかもしんないっすけど、友達っすよ!」
「凜……。凄く嬉しい。」
何て友達思いの子達なんだろうか。本当に友達に恵まれている。
「お姉さまは男だとしても私のお姉さまですよ!」
「それはどうなんだろう……。でも、ありがとう。」
彼女なりの励ましなんだろう。
「それにしても三人が理事長室に来た時は驚いたよ。」
「最近暗かったっすけど、今日は一段と雰囲気が違ってたんすよねー。」
「何か切羽詰まった感じと言うか……。これから重大な決断をしようって感じですかね?」
「私も何か変だなって思って見てたんだけど、分からなくて。だから、二人に正直に話して手伝ってもらったの。」
「そうだったんだ……。」
そんなに表情と言うか雰囲気に出てたんだ……。自分じゃ全然気づかなかったな……。
「いや~危ないとこだったっすね!もうちょっとタイミングがずれてたら一夏のこと逃がすとこだったっすよ。」
「あはは……。自分で言うのもなんだけど、確かにそうかも。お昼休みが終わるころには学校からいなくなってただろうし。」
「お姉さまも悩んでるのであれば相談してくださったらよかったのに……って思いましたけど、中々言える内容ではないかもですね。」
「まぁ……そうだね。」
いかに信用してようが気軽に相談できる内容ではない。信頼関係があればあるほど、言えない内容かも。
「同室で気づかなかった私も私かもしれないけどね。それにしても、今見ても女性にしか見えないわ……。」
「本当にそうっすね。東雲さんから聞いたときはびっくりしたっす。にわかに信じがたい事だったので。」
「そうですねー。ただ、理事長室で確信に変わりましたね。」
「そうっすねー。自分はまだ半信半疑っすけどね……。本当に男なんすか……?」
「うん……。正真正銘の男かな……。」
僕でも、この三人の中の誰かが実は男でしたって言われても、どう信じたらいいか分からないかも。
「そういえば何で分かったんすか?逆に今まで男だって気づいてないのに何切っ掛けで?」
「確かに!私も気になります!何があったんでしょう?」
その話題は凄く気まずい。どう話そう……。
「それは……。」
「私と一夏がいやらしい事してたからよ。」
「「え?!」」
柚と凜は凄く驚いていた。当たり前かもしれない。内容が内容なだけに……。
「やらしいことって……」
「キスとかですか?!」
柚は凄い清純なのかも。凜は何となく察してそうだけど、柚は察してないな……。
「それ以上っていうのかな……?」
「まじっすか……?え、でもそれ以上ってそういう事っすよね……?やる前から分かってたんではないっすか?」
「説明するのは恥ずかしいけど……。僕が玲奈の体を触って終わりの予定だったんだけど、僕の体を玲奈が触ってって感じかな。」
「触るってどういうことですか?」
「いや、その……。」
「男の子の大事な部分が大きくなってたのよ。」
「……?」
柚はまったく分かってない様子だった。本当に分かってないのかな……。
「何となくはわかったっす……。」
凜は顔真っ赤になって両手で顔を隠していた。
「それから僕と玲奈の様子が普段と変わったかな。」
「確かにそれは驚くっすね。っていうか、東雲さんと一夏って本当にそういう関係だったんすか?!」
「まぁ……。」
「そうね。キスとかしまくってたわね。」
「キス……。お姉さまとキス……。」
「自分も一夏とキスはしたっすけどね?!」
「凜?!」
どういうカミングアウト……?!何故このタイミング?!
「一夏本当なの?」
「まぁ、うん……。」
「私はしたことなかったです……。」
「そうだね……。」
「ってことは一夏と東雲さんはこれからも正式にお付き合いするって事っすか?!」
「え……。」
僕が判断できる事なのか分からず、玲奈の様子をうかがう。
「一夏はさ、私の事好きなの?男と女の関係で。」
「どうなんだろう……。好きと言えば好きだけど……。」
「なら、二人の事は?」
「男女の関係って言うと難しいけど……好きかも……。」
「ふーん?」
中々煮え切らない答えを出す僕に不審な視線を玲奈は向けてくる。
「嬉しいですお姉さま!」
ニコニコとした笑顔を僕に向けてくれる柚。
「まぁ、悪い気はしないっすね。」
凜も満更ではないといった様子。
「しょうがないわね。一夏が真っすぐに私の事を好きって言えないなら、一時保留といったところかしらね。」
「一時保留?」
「二人には言ってなかったけど、私と一夏は一応女の子同士として付き合おうって話し合ってたの。で、こんなことになってしまったわけだけど、一夏が私を選んでくれるまでは付き合う前と同じ感じって事で。」
「それって別れるっていうのと違うの?」
「別れるって言ったら何か寂しいじゃない。私は一夏の正体が分かった今でも好きよ。でも、一夏は素直に私を選べないみたいだから。」
今でも僕の事を好きでいてくれてるんだ……。意外だ……。
「それなら自分にもチャンスがあるってことっすか?!」
「それは一夏次第ね。月見さんの事も好きらしいからチャンスはあるんじゃない?」
「私もですか?!」
「秋月さんもあるんじゃない?」
「なるほどっすね……。」
「え、二人とも僕の事好きなの……?」
「一夏……あなた鈍感ね……。二人とも一夏の事大好きに決まってるじゃない。」
「え……。」
知らなかった……。いや、好意を持たれてたのは何となく知ってたけど、女性としてかなって思ってた。
「自分は男と分かった今でも一夏の事好きっすよ。」
「私もですよお姉さま!」
「そっか……。」
「まぁ、これから一夏が誰を選ぶかが楽しみね。ねぇ?一夏?」
「ああ……うん……。」
「勿論私ですよね?!」
「いやー、それはどうかと。一夏!自分っすよね?!」
こうして僕の女子校生活は何とか続くことになった。
第一章が終わった感じです。
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