10
朝起きて昨日の出来事を思い出す。
僕はとうとう取り返しのつかない事に手を出してしまったんじゃないだろうか……。
ついに性欲に負けてしまった。それに玲奈と付き合う事になってしまった。
勿論嫌なわけではない……。後ろめたい事があるからどうしようかって思うだけで。
これからの事考えないとだめだな……。いずれにしろ正体がバレる日が来る。その日までに何か考えないと。
横で呑気に寝ている玲奈の寝顔を眺める。
ほんと可愛い顔してるな。この可愛い寝顔を守り続ける事が出来るのかな。
「二人共おはよっすー!」
後ろから元気な声が聞こえてくる。
「おはよー。今日も元気だねー。」
「当り前っすよ。元気が一番っすからね!」
「確かにそうかも。柚もおはよ。」
「おはようございますお姉さま!」
「皆おはよー。」
朝の挨拶を終え食堂へと向かっていく。
「今日は一段とイチャイチャしてるっすね。」
「あはは……。まあ、ね……。」
玲奈は朝起きた時から僕にくっついたままだった。今も僕の腕につかまりながら歩いている。
「ずるいです!私も私も!」
「ダメよ。」
僕に飛びついてきた柚を払いのける玲奈。
「なんでですかー?!」
「一夏は私と付き合ってるって事になってるんだから秋月さんがくっついてたらおかしいでしょ。」
「それはそうかもっすね……。」
「だから秋月さんは一夏じゃなくて月見さんとくっついてるべきなんじゃない?」
「え……。」
凜の方を見ながら顔を少し赤くして照れる柚。
「くっつくっすか?」
「せっかくですし、そうしましょうか……。」
照れながらもくっつく二人。
「二人とも随分とお似合いよ。いいじゃない。二人もイチャイチャしてたら文句ないでしょ。」
「そういうものかな……。」
「そうよ。」
「流石にちょっと照れるっすけどね。」
「はい……。」
そんなこんなで授業が終わり、玲奈と部屋に戻っていく。
「二人とも随分と仲良くなってたね。」
「そうだね。ちょっと意外だったけど、元々相性も悪くなさそうだったしね。」
あれからの二人は今迄よりも少しイチャイチャ気味だった。お互い少し意識しているような感じっていうのかな。微笑ましかった。
「あの二人も私達みたいな関係になってたらどうする?」
「私達みたいな関係って……。」
「ちゃんとした恋人って事よ。ね、一夏……。ん……。」
「んん……。」
玲奈は僕の前の方から顔を近づけてきた。そうして自然とキスをする。
「もしかしたらあり得るかもね。私達もなってるんだし。」
「そうだよね。そうなったらあの二人の事も応援してあげなきゃ。」
この後もテレビを見ながらイチャイチャして過ごした。
「ちょっとシャワー浴びてくるわねー。」
「うんー。」
玲奈がシャワーを浴びに行き一人きりの空間になる。
先ほどまで凄く幸せな空間に居ただけに一気に色々な考えが頭をよぎる。
最悪の事を考えて色々な手段をとれるようにしとかないと……。
お祖父ちゃんに連絡をする。
「お祖父ちゃん?今大丈夫?」
「大丈夫じゃ。どうした?」
「もしさ、僕が学校辞めるってなったら転校とかって出来るのかな。」
「何か起きたのか?」
「何も起きてないんだけど……。」
少し嘘をつく。
「もしもの時の為にさ、一応の策として何か知っておいた方がいいかなって。」
「なるほど。まぁ、ワシの知り合いのとこの学校に転入させる事ぐらいだったらできるかもな。問題が起きてなかったらの話じゃが。」
「問題が起きた後だと難しい?」
「問題にもよるが、まあな。」
「そっかー。」
「まぁ大丈夫じゃ。最悪学校を辞める事になっても大学に行く道はいくらでもある。ワシもその時は協力するから心配するな。」
「ありがと。ま、学校を辞める事にならないようにがんばらなくちゃね。」
「そうじゃな。」
「ありがと。切るね。また。」
んー。もしもの時も一応何かあるって感じかな。そうならないよう気を付けないといけないけど。
「一夏……?」
「え……?」
気がつくと玲奈が浴室の方から僕の方を見ていた。
まずい。電話の内容を聞かれたかもしれない。問題なのはどの辺りを聞かれてしまってたかだけど……。
「学校を辞めるってどういう事……?誰と話してたの……?」
なんとも言えない所を聞かれていたみたいだ。
「ちょっと知り合いと電話してただけだよ。」
「学校を辞めるって言うのは?」
「……。話の流れでさ、勉強しなさすぎて進級できなかったりしないようにしないとねって事だよ。今の所辞める予定とかはないから。」
「ほんと?」
「うん。本当だよ。信じて。」
「そう……。いなくなったりしちゃ嫌だよ。」
「うん。」
「ねえ……。キスして。」
「いいよ。こっちおいで。」
「うん。」
玲奈は羽織ってたタオルを床に置きながら向かってくる。
「んん……。もっと強く抱きしめて。」
「こう?」
「うん……。ずっと一緒にいてよね。」
「いてあげるよ。大丈夫だから。」
「うん……。好きよ。」
「私も。」