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引きこもり虫と入学式

「お~とちゃん! 見て見て可愛い?」

「ああ可愛い可愛い」


 華ちゃんそれ今日で何回目? 五時に叩き起こされてこっちはいい迷惑だよ。

 今日は新一年生の入学式。家族の私やまこちゃん。月海達も来るらしい。

 六条家の人たちは就職活動真っ最中だから来れないらしいけど。その代わり後でたくさんお祝いしてもらう。


「高校に入ったら、まず友達作って、勉強もたくさんして、優しいお兄さんみたいな彼氏も欲しいな」


 華ちゃん、生憎だけど彼氏は私以外のお兄さんお姉さんが許さないよ。

 いや、私は別に妹がどうでもいいんじゃなくて恋愛に興味がないだけだけど。

 でも華ちゃんが誰かと付き合うのはまだ早いよ。


「おはよう根尾さーん! 凛華、入学おめでとう」

「おめでとう」

「ありがとうるーちゃん、ふうちゃん」

「桃李兄さんは?」

「大学に用があるから後で来るって」


 大変だな大学生。

 華ちゃんは私がいじめ(?)られていることを最初から知ってる。

 だけどこの子もこう見えて強い子だから多分一人でも行けると思う。

 でも流石に妹がいじめられるのは姉からしても複雑だし。


「月海、これからは私じゃなくて華ちゃんを見ててくれない? 私のせいでいじめられるのはちょっと……」

「ああ、大丈夫じゃない? 中学の頃もあんたの妹だっていじめられそうになった時に数人の男子を病院に送ったって言うよ」


 何してんの華ちゃん!? お姉ちゃんの知らないうちに凶暴化してしまったの!? 純粋無垢でお姫様だった私の華ちゃんは一体どこに……。


「着いたよ」


 キラキラしてるね、華ちゃんの目。

 多分もう何言っても記憶に残んないだろうな。

 中学と高校なんて制服が変わるくらい何がそんなに楽しいんだろう。

 一年はそのまま指定されたクラスへ。保護者は体育館へ。在校生も一応保護者扱い。だから華ちゃんとはしばしのお別れ。




「只今より、第七十五回豊泉高校入学式を行います。皆様ご起立ください」


 始まった。眠気に耐えないと。真面目な時こそ眠くなる作用。

 校長の話。PTA会長の話。

 ああ眠い。寝るな月海。うとうとするな風柳。私はこんなにも耐えてるんだぞ。


「それではこれより生徒呼名に移ります」


 来た! これが終われば帰れる!!

 起きろ月海。起きろ風柳。華ちゃんが呼ばれるぞ。


「──三十一番、根尾凛華」

「はい!」


 途端にざわめく保護者席。まあ二年に私という「死神」がいるから無理ないよね。結構有名らしいよ。いやん。有名人。

 それに動じない華ちゃんも凄い。同級生の視線も痛いだろうに。凛としてるのか恐怖を知らない姉兄に育てられたせいで図太くなったのか。

 式も終了し、後は各クラス毎に分かれてホームルームが行われる。私達は華ちゃんのいる三組へと向かった。




「初めまして。三組の担任をする飯島(いいじま)と言います。これから一年よろしくお願いします」


 いかにも新任で元気な感じの若い女先生ですね。

 多分この人なら華ちゃんを任せられるだろうな。

 ……もしかしてこれもコネとかじゃ無いだろうね。にしてもさっきから私を見る目が敵対心剥き出しなんですけど。

 何ですか? そんな睨まなくたってあなた達の可愛い子どもに手をだそうだなんて思ってませんよ。

 しかもそれに乗っかっちゃうのが月海なんだよなー。

 月海、睨んじゃだめ。

 悪評が高い私に警戒するのは親の務めってもんなんだよ。


「それではプリントをお渡しいたしましたのでこれで終わりです。さようなら」


 早い早い。入学式が長かった分を考慮してくれたのかな。すぐに終わったね。結局桃李兄さん来なかったけど。いや来てたのかもしれないけど兄さんって目の前にいても気づかないくらい影薄いから。




「凛華の入学を祝って……かんぱーい!」

「「「かんぱーい!!」」」


 ……かんぱーい。

 大学生は結構忙しいのによくまた十人で集まれたね。え? 同級生に押し付けた?

 まあ華ちゃんのお祝いなら我慢するけど私読書したいんだよな~。華ちゃんのお祝いを優先するけど。


「今日も合わせてだけど昨日はどうだった? 三人とも同じクラス?」

「同じクラスだよ麗ちゃん。後性懲りもなくまだ凛音をいじめる奴がいたからとりあえず恥かかせておいた」

「流石私の弟子のるなちゃーん」


 いつ師弟関係結んだのさ。

 何年か前から異様に仲良くなってるなとは思ってたけど姉妹関係飛び越えて師弟関係結んでたのか。


「「へえ。いじめね?」」


 あ、やばい。正宗兄さんと愛子姉さんがいるの忘れてた。

 尋問(じごく)が始まる。


「凛音、誰にいじめられたんだ」

「凛音ちゃぁん、どんないじめにあったのぉ」


 ちょ、怖い。二人ともその笑顔取り除いて。年中無表情の私より怖い顔してるから。目が笑ってない笑顔ほど怖いものはない。特にここの悪魔にプラスしたらあかん。


「正宗、愛子、今は凛華の祝いなんだからそういうのは……」

「いい吉宗ちゃぁん? こういうのは若いうちから摘んどかないといけないのぉ、地獄を与えてやらなければいけないのよぉ。だから教えなさぁい凛音ちゃぁん」


 いややだよ。別に気にしてないんだし。何よりこの人たちに教えたら末路は決まってるから。自業自得だとしても可哀想だから。

 おじさんこの人達止めてー!! 妹じゃ歯止め効かなーい。


「それより折角十人揃ったんだからさ、教えてよ凛音」

「何を?」

「み・あ・い」


 語尾にハートをつけたような言い方はやめなさい。

 麗子姉さん恋バナ好きだもんね。

 そして話の切り替えがとても上手い。

 流石は二人の妹。


「何が聞きたいの?」

「イケメンだった?」

「うん」

「愛想尽かされなかった?」

「うん」

「……今度会う?」

「うん」


 なんか時が止まった。

 え、なんで? 見合い成功させろっつったのあんたらじゃん。

 私は至極真面目に見合いをして友達になっただけだよ。


「その人の写メはないの?」

「あるよるーちゃん。隠し撮りしてたから」


 盗撮なんてどこで覚えたの華ちゃん。

 まあよく綺麗に撮れてるもんですね。

 将来は写真家ですか? そうですか違いますか。


「超イケメンじゃん! 彼氏にしたい!」

「ダメよ麗子ちゃぁん。凛音ちゃんのなんだからぁ」


 物みたいに言うのやめなよ愛子姉さん。

 慈愛のまなざしをこちらへ向けないでください。なんか痒いです。

 そういえば。見合いと言えば神宮寺さん、小説家ってことは本もたくさんあるのかな?

 楽しみだなあ神宮寺さんの自宅。

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