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引きこもり虫の目覚め

 保健室に着いて靴を脱ぐとグロ映像が脳内に流れてきました。

 踏まれた方の右足首はどす黒い赤で二倍に膨れ上がってるし全体重が一瞬乗っかった左足は骨が折れてるみたいだったし。


「病院に連絡しないと。根尾さん、ちょっと待っててね」

「はい」


 保健の先生が急いで応急処置を済ませてくれたからグロ映像を目に映さなくて良かった。


「にしてもこれだけ重傷とは」

「どうして平然としてられたんだ」


 そう言われてもね。

 痛みには強い方だし破瓜の痛みに比べたらゲフンゲフン。


「凛音!」


 ん? なんで月海と風柳が。あ、もう授業終わったんだ。

 グロ映像を見てたせいで現実逃避しておりました。


「傷はどうだった?」

「なんともないよ」

「俺の予想だが完璧に治るまで二ヶ月くらいかかると思う」

「殺す」


 超物騒な言葉が聞こえた気がしたんだけど気の所為だよね。ね?


「月海、駄目だよ殺すなんて」


 そうだ風柳。もっと言ってやれ。月海はいつも過激なんだよ。


「たっぷり絶望を与えてどっかのハゲデブにでも送り込もう」


 そうだそう……待ってそっちの方がタチ悪い!

 とりあえず落ち着かせないと……ってなんであんたも乗り気なんだよ佐藤くん!

 君は一番の常識者であるはずでしょう。


「はいはいちょっと待ちましょうね皆さん。いくら友達が傷つけられたからってそんな乱暴なことを若い子達が言ってはいけませんよ」


 温厚なる保健医の先生。あなたが頼りです。


「でも先生」

「確かに気持ちはわかりますが怪我した本人がそういうのは決めるものです。ね? 根尾さん」


 あ、そういうパターンだったの? 保険医の先生ももしかしてそっち側? 

 いやぁ全然気づかなかったなぁ。

 ははは。はぁ。


「まずこの足治したいし病院には早く行きたいし復讐はその後じゃ駄目?」


 作戦その一、先延ばしにさせる。


「その間にもできるよ」


 ああ。じゃあ。作戦その二。


「凛音暴力きらぁい」

「頑張って考えてそれか」

「そう思ってんならその考えを消せ」


 人を落とすなんて考えちゃ駄目ですよ月海ちゃん。

 でも本当に私が復讐したくないことを伝えると渋々諦めてくれた。

 理解が早い人達で助かった。


「さあ根尾さん。車用意したから乗って。救急車は呼べないけれど」


 でしょうね。慣れていれば松葉杖で過ごせるような人に救急車なんてね。

 あ、でも車までどうやって行こう……はい、そうですよね。

 お姫様抱っこですよねやだやだ。




 診断結果。佐藤くんの予想より私の予想よりよっぽど酷かった。

 右足の骨は思い切り複雑に折れてリハビリもしなきゃいけないらしい。

 しかも完治は難しいからしばらくは杖ありの生活。

 左足は骨折はしてるけどギリギリ一ヶ月くらいでまともに動くそう。

 でも凄いね女王様。あの一瞬で私に後遺症を残すとは。


「凛音。やっぱりあんたが止めようが何しようが私はあの女を陥れるわ」

「いややめなよ。そんなことしたって……」

「妹がこんなになって平然としてられるって言うの!? ねえ!」


 ああうん知ってるよ。月海が本当に私を愛してくれてるんだって。

 私だって姉替わりの月海がこんなになったら怒りでどうにかなりそうだし。


「ねえ月海。そりゃ気持ちがわからない訳じゃないしむしろよくわかる方だと思うよ。だけどだからこそ月海にはこんなことして欲しくないの」

「なんでよ」

「置き換えてみてよ。もし私が月海が傷つけられたから復讐でその仇を討とうって傷つけた人を陥れたら月海はどう思う?」

「……」


 お、月海が少し揺らいだ。

 よし、もう一押し。


「私は月海がそれだけ愛してくれてるのが嬉しいよ。いつだって……お母さんが死んだ時だって月海は一番に私といてくれたし」

「それは当たり前でしょ」

「当たり前だからこそそれをあんな電波女に崩されたくないの」

「え?」


 え? って何?


「凛音が悪口みたいなこと言うなんて」


 あ、そっち? そういえば透さんに会ってから色んなことに目覚めたよね私。

 本にしか興味がなかった問題児って言われてたのに……って話ズレてるし。


「とにかく私は月海に汚いことをして欲しくないの。いい子だからじゃないよ。単純に家族が大好きだから。ね?」

「……でもあいつが謝らずにまた凛音を傷つけるのは見たくない」

「うん大丈夫。それはそれでちゃんと考えてるから」

「考えて?」


 あくまで私は月海にやって欲しくなかっただけ。

 わかる? 裏を返せば私ならやってもいいの。

 目には目を、歯には歯をってね。月海が前にやったことだよ。


「とりあえず転校早々で悪いけど先にやって来たのはあっちだしね。一週間後くらいにやっちゃおうかな? 勿論私と月海だけでね」

「り、凛音? なんか凄い楽しそうだけど」


 そうかな。

 でも何だか想像すると笑いが止まらなくて――あ、動いてないんだわ。


「月海。今から言うことを聞いてね。皆には秘密だよ」

「はい」


 さっさと終わらせちゃおうね。女王様は主役じゃないんだから。

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