引きこもり虫と新キャラ
高校三年生。それは大学に進学するための最終難関。
二学期からは本格的に受験勉強に入るため学校行事を楽しめるのはきっと一学期だけでしょう。
志望校? こう見えてしっかり決めておりますよ。
でなきゃ今まで何して生きてたんだよ状態になりますからね。
「あなたが透様を誑かしてるメス猫ね! さっさと消えなさいよ!」
で、私は今どういう状況に陥ってるのですか?
始業式で紹介されたそれはそれは美人な女の子が教室中に響き渡る声で喧嘩売ってきてんですけど。
流石の私だって驚きますよ。
「ちょっと聞いてんの!? あなたが私の透様を変えてしまったせいで今までの見目麗しい透様が可笑しくなってしまったの! それもこれも全部コネで婚約者になったあなたのせいよ! さっさと透様と婚約破棄して目の前からいなくなってよ!!」
まじで誰? 透様って神宮寺透さんであってる? それ以外に知り合いがいないんだが。
ていうか敬語を使いなさい後輩さん。こう見えても最高学年よ。
「ちょっと凛音。こいつ誰」
月海が寄ってきて間に入ってくる。
考えてみたんだけどこの子の声がでかすぎてクラス中の視線を集めちゃってんだよね。
私もよくわからん。
しかも受験でピリピリしてるから大半には睨まれてんだけど本人は全く気付かず。
幸い去年のように私に飛び火してはいない。
「二年に転校して来た子。名前は忘れたけど」
「天龍寺琴音さんだよ凛音」
風柳も割って入ってくる。
ごめんね私達人の名前覚えるの苦手なの。
苦手っていうより覚える気がないの。
「ちょっと泥棒の分際でどうして無視ができるの!? あんたなんて問題児扱いされてるのにそういうのも気にしない木偶の坊なんでしょ? ああきっとあなたのご兄弟も嫌がってるわ。あんたを捨てないのは虐待とかそういうのが怖いからなのよきっと」
「変な言いがかりつけられてんだけど」
「僕達が嫌で凛音と一緒にいるわけじゃないのに」
温厚さんな風柳まで気を悪くしている。
なるほど。つまりこの子は私だけを嫌っているとそういうわけですか。
こういう場合って無理に何か言うとああ言えばこう言う形式だよね。
無視しておこう。そっちの方が楽だ。
「図星過ぎて言葉もないのかしら? じゃあ心優しい琴音がアドバイスしてあげる。透様と婚約を破棄したいって言うの。言えないなら手伝ってあげる。だって琴音は優しいもの」
あ、わかった。
この子世の中で言う電波ちゃんだ。脳内がお花畑なんだ。
華ちゃんとはまた違った頭おかしい子だ。
(そうでしょ月海?)
(正解。マジでウザイ。後で家族会議よ)
(はいはい)
どうだ家族で培った以心伝心能力。
いやまあ今自慢したって誰得状態だけどね。
「根尾。ちょっといいか」
「ああ佐藤くん。何?」
「透様の婚約者の分際で他の殿方と喋るなんてとんでもない痴女ねあなた! どうして琴音を選んでくれないのかしら透様は」
私が喋る度に喚く。
こう言えば玩具みたいね。不良品の。
「そうだ携帯貸しなさいよ! 透様の履歴は全部消してあげ……」
「うるさいのよあなた!!」
おおう月海。そんなに大声を……あれ、月海じゃない?
「今の状況わかってるの? 私達は勉強で忙しいってのにあなたのせいで気が散って仕方がないのよ」
なんとここの委員長でした。
私を死神呼ばわりしないでいじめにも加担しない数少ない同級生の一人です。
おさげに眼鏡なんて超優等生の鑑。
「な……っ! あなた琴音が誰か知ってて言ってるんでしょうね! 琴音のパパはあの……」
「お金持ちなら嫌ってほど目の前にいるのよ! そんなに目立ちたいなら全校生徒の前で喚き散らせばいいんじゃないの」
そう言って委員長は踵をかえし自分の席に戻ってしまった。
うんわかってるよ。敵ではないけど味方でもないんだよねあなた。
それにお金持ちに悪意を感じたのは私だけでしょうか?
根尾家は人より少し裕福なだけだよ。
「……っ! 今からパパに来てもらうわ。それであなたの親が働いてる会社潰して」
「何やってるんだ」
廊下から怒鳴り声が。ああそうだ言い忘れていました。
今年も担任は熱血嶋先生。皆覚えてるかな?
差別無し。けじめはつける。正義のヒーローさんですよ。感謝はしてる。けどごめん。熱血は苦手なんだ。
「これからホームルームを始めるんだ。さっさと席に着けお前ら」
「ちょっとまだ話は終わってな……」
「お前は出ていけ!」
流石に竦み上がってしまった女王様を置き去りにして先生はドアを閉めた。
私も月海と風柳に手を引かれて席に着く。
「ああもう最初っから嫌な目にあった。ああいうのって明日からもネチネチ追い回して来るタイプだよ」
「神宮寺さんに関しての子だよね。従兄弟かな」
「そうだとしてもねちっこ過ぎるでしょ。気にすること無いからね凛音」
「うん気にしてないけどね」
「「でしょうね」」
高校三年生。まさかの濃いキャラ登場です。




