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引きこもり虫と王子様

 三次元……というかこの世の中に興味のない私でもわかる。

 神宮寺透はイケメンだ。

 インドア派と見えるが程良い健康そうな肌、癖のないさらさらの黒髪に女の子かと思う程長い睫毛(まつげ)を持っている二重の目。

 着物がまたお似合いですねはい。

 そんな人と見合いなんて場違いだと普通の人なら恥ずかしがるのだろうけど生憎私にはそういう趣向はありません。


「はじめまして根尾さん。神宮寺透です」

「あ、はじめまして、根尾凛音です。よろしくお願いします」


 あらら先に挨拶されちゃった。

 名刺も出されて。礼儀知らずですみませんね。

 それにしても神宮寺さんの斜め後ろにいる人──執事さんかな?──も凄い美形なんだけど。

 六条さんは私に何を求めてるんだ? 

 なんでこんな人と仲良くなってしまったのさ。

 てか父さん、あんたは写真見たんだろう? 何で固まってんだよ。


「……父さん。父さんも名乗ってください」

「はっ!! り、凛音の父の根尾近臣(ちかおみ)です。この度は我が娘を候補としていただきま、真に感謝してもしきれないというか……」


 父さん、緊張しすぎ。

 神宮寺さん困って苦笑しちゃってんじゃん。

 これで印象悪くなって月海に目つけられたら一生恨むからね。


「そ、そのなんと言うか凛音は人付き合いがあまり得意ではないので迷惑をかけますでしょうがどうぞよろしくお願いします。で、では早速二人でご歓談を……」

「え?」


 逃げるなぁ!! チキンがぁ!! ノンブレスで言うくらいの体力はあんだろうがぁぁぁ!!

 まこちゃん、華ちゃん! 父さんを連れ戻してこい! 

 あ、まこちゃんが視線に気づいてくれた。


「すいません本当に。父が帰ってくるまで何かお話でも」

「あ、そうですね。凛音さんご趣味は?」

「読書です」


 引きこもりになる程ね。


「そうなんですか。僕も読書は好きですよ。まあ小説家なんで嫌いだったらあれなんですけどね」


 イケメンの割に気さくな人だな。

 ああでも麗子姉さんが男は外見で騙されちゃいけないって言ってたし。

 一体何があったんだ姉さん。


「凛音さんは今年十七になると聞きました。僕は今二十二なのですが年の差というものはあまり気にしない方なのでしょうか? 見合いの話を聞いてくれるなどと思っていなかったので」


 年の差も何も私に拒否権を与えてくれませんでしたよあいつら。気にしないのは事実ですが。最近は年の差婚とか流行ってるしね。


「そうですね。私は容姿や年齢などは(いと)いません」


 読書ができればいいからね。


「それでは……っと、僕の質問ばかりですね。凛音さんも何か聞いておきたいことはありますか」

「では、神宮寺さんは家事もしない、夫に尽くさない、ただひたすら引きこもって本を読んでいる女性と結婚したいですか」

「はい?」


 カミングアウトを速攻させていただきました。どうせいつかはバレる。それなら変な期待を抱かせる前に。


「引きこもるのは良くないと思いますよ。日向にあたりながらの読書の方が断然気持ちがいいです。それと夫に尽くさないというのは遠出をしたり一緒の時間を優先したりということでしょうか」

「まあそんなところです」


 返答が思っていたのとちょっと違う。

 流石に結婚したら最低限のことはしますよ。

 そんな二十四時間読書してるわけでもありませんし。

 本を持ち込んでいいのなら同じ部屋で寝てもいいですし。

 にしても日向ぼっこしながらの読書か。確かに気持ちよさげだが。家は郊外だから工事だなんだとうるさいんです。


「で、それを踏まえて結婚したいですか?」

「はい、でなければ申し込もうとしませんよね?」


 今肯定した? 

 えーっと私の性格知った上での言葉なんだろうね。うん。


「僕は面倒くさい性格ですがあなた以上に僕の理想の相手はいません」


 もうついてけないよ。

 面倒くさいの? でも理想なの? 本読ませてくれない系の面倒くさいは嫌いよ?


「……ちょっとお待ちください。噂でご存知でしょうか? 私は三家の中で問題児扱いです。読書以外は何も感銘致しません。家事だって放棄します。数週に一回……いえ、もしかしたら数日に一回はあなたを放棄します。絶対」

「知ってますよ。それも六条家の旦那様から聞いているので」


 え、全部知っての見合い? 

 どうしよう混乱してきた。いや序盤から混乱してるけど。

 とりあえず深呼吸。スーハースーハーヒッヒッフー……よし。


「神宮寺さん、お聞きしてもよろしいですか?」

「はい」

「私を選んだ動機を教えてくださいませ」

「え? ああそうですね。一方的ですもんね。わかりました。ではあなたのことを知る前のことからお話させていただきます」

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