引きこもり虫と文化祭2
さあやってまいりました文化祭。
一日目は言うことなし。ただ写真撮られて――女子はミーハー女子に、男子は面白半分又はガチのゲイに。私は来んなオーラを佐藤くんと見せつけてやった――予想以上に売り上げが伸びて品切れになって急いで次の分を発注したり。
今のところうちは出し物の中で二位らしい。凄い凄い。メンタルはやられてるけどね。
「皆お疲れ様。明日羞恥心に勝って一位を目指そう」
「「「おー!!」」」
おー……あ、そうだ。私の衣装は執事さん。
無表情でまこちゃんと華ちゃんの間の子だからまあ端正な顔立ちはしてるのでクラスの女子から。
「死神のくせに何でイケメンなのよ」
「死神じゃなくて女でもなかったら……うぐぅぅぅ!」
死神っていうかね。生まれつきなの。仕方ないでしょ。
ん? 何月海……。
「ちょっと」
「な、何よしにが……根尾!」
「……君みたいな美人な人を他の野郎に見せたくない」
その女子は思いっきり鼻血を出して緊急搬送。保健室にね。
てかこれキザ野郎が『星色夜空』で真理を口説いた言葉。まあ親友を前にして見事玉砕されたんだけどね。はっ、ざまあ。
そしてそれを言った私も軽く胸にトゲが。
あ、それはさておきこれは月海がニヤニヤしながら何か口説けと言われたから咄嗟に思いついた言葉ね。
「さあさあ女生徒さん。今なら無料でイケメン凛音の生ボイスが聞けますよ!」
クラスメイトは少したじろいだが、私が風柳の指示通りに座って少し足を――股を?――開いて流し目を送ってみたら我先にと寄ってきた。
で、それを麗子姉さんに言うと大爆笑。
「酒のつまみにできるわ」とかほざいてた。勿論三家の女には効きませんぜ。
むしろ「凛音、病院行くか?」ってガチの心配された。
そして待ちに待った(?)二日目。
一般公開なのでチケットさえ持っていれば入れる。
家族はいらないけど神宮寺さんは必要。
友達? いないっつってんだろーが。
皆が来るのは午後。神宮寺さんがお仕事終わりにって話し合ったら私達のシフトど真ん中。月海だな。これやったの絶対月海だな。
余談を言うと私のこのイケメン――なのか?――顔は生徒のお母さんだけに留まらず他校の生徒や受験のために見学に来ている方々までもを釘付けに。
頼む離れてくれ。このまんまじゃばあさんになっても姉さん達にからかわれる。写真を撮るな!
そして神は無情にも何だかよくわからないハーレム状態の中で家族を連れてきてしまった。
「あはははは! ウケる! あの凛音がイケメン扱いとか。待ち受けにして大学で知らせるわ!!」
「んなことしたら殺す。ねえ何で華ちゃんとかもいんの?」
「仲間外れは嫌だから」
「そうよ音。私達だってからかいたい……じゃなくて妹の大事な高校生活を見てみたいのよ」
「黙れオネエ」
「オネエじゃないから! 月海が着せてくれただけだから!」
「いや、お前はオネエだ真」
言い忘れてたけどまこちゃんは何故か女装癖があって吉宗兄さんとデートしてる。
心底嫌そうだけどね兄さんは。
でもこれがまた似合ってんだわ。そこらの芸能人よりも美人なんだわ。
私達もしかして性別逆にされたんじゃない? って今では思うぐらい。
「とりあえず食ったら出てけ」
「凛音ちゃんストレス溜まり過ぎて軽くメンタルやられちゃってるわねぇ」
「凛音。食ったらって言うんだったら中に入らせて? 後その黒いオーラをどうにかして」
「久しぶりだねこんなに感情表してるの。こういう時って六条家より怖くなる前兆じゃない?」
好き勝手言ってくれるね平和主義を名乗る平和破壊者。
ああここは教室前の廊下です。お客さんが並んでて彼らはもう少しかかりそうです。
「かーえーれ。かーえーれ」
「心の声をぶちまけない」
「つか職場に戻れや妹様」
風柳と月海が来ました。
え? 今佐藤くんともう一個の班――八人体制で行っております――四人のみ? あ、やべ恨み買う。
「風柳も月海もよくお似合いで」
「そりゃあ私が衣装担当ですから~? どんないかつい人でも華麗な女の子にしてみせますわ。というわけで神宮寺さんカモン!」
「え?」
今まで桃李兄さんに教えてもらって空気になってた神宮寺さんに火の粉が飛び散る。
凄いよ。兄さん並の空気だったよ。
「かっわいー女の子にしてあげるからカモン。そして男にチヤホヤされるがいいさ。リア充が」
「君達ストレス抱えてるんだね」
ごめんよ神宮寺さん。学生は学生なりに頑張ってんだわ。
「じゃあそろそろ戻ります。恨み買ったら私色んな意味でめちゃくちゃにされそうなので」
「されちゃえー。貞操奪われてきちゃえー」
「死ね」
麗子姉さんにトレイをぶん投げる。
見事にキャッチアンドリリース。だからってバレーボール形式でやんないでくれ。キャッチが大変だわ。
「なあ根尾」
「何?」
「男三人のうちどれがどれだ?」
「ごめん。五人いるんだわ。コスプレ染みた人が私の兄、それに引っ付かれてるのが吉宗兄さん、のほほんと一番年長が正宗兄さん、一番まともなのが神宮寺さん。後空気に溶け込んでたけど影が薄いのが桃李兄さん」
「……とりあえず神宮寺さんって人がまともってことは覚えとく」
できれば吉宗兄さんも覚えといてあげて。あの人がクールになったのあのキャラが濃すぎる末っ子に産まれたからもあるから。
順番回ってくんのはや! じゃない、皆あの美男美女オーラに負けたのか。だよね。皆悪くて中の上顔だもんね。わかるよその気持ち。
え? お前もそのうちの一人? まっさかー……女の私はそうじゃないんだよ。男だからそうなってんだよ。
「神宮寺さんに女装させるまでここから立ち去らない!!」
「焼きそばぶっかけてやろーか」
「何で喫茶で屋台のもの出してんの?」
仕方ないでしょ食べたいもの提案したら唐揚げとかたこ焼きとか居酒屋喫茶になったんだよ。
「凛音ちゃんお酒はぁ?」
「あると思うなら一旦警察行きな愛子姉さん」
それか精神科に行きな。神宮寺さんはもう相手しなくていいからね……。
「吉宗ちゃ~ん。まこ、お腹空いちゃった~あーんして♡」
「凛音、凛華。こいつどうにかして……」
「「無理」」
即答。ついに華ちゃんまで死んだ目に。
「働けっつってんだろーが凛音!!」
そんなパニックが起こりましてシフトが終わった後は早々に終わるまで出禁にされました。
その間私達は別行動することに。最初からそうしてくれよ鬼畜兄弟ども。
何の気を利かせてるのか私は神宮寺さんと二人きりで回ることに。吉宗兄さん後で塩送ってあげる。
「……何か慌ただしい感じだったね」
「面目ない。あの兄弟がいなければもっと大人しいです」
私は衣装のまんまなので端から見ればイケメン二人が廊下を歩いていることになる。手なんて繋いだらやばい噂が流れるわ。
「凛音さん。意外と男装似合うんだね」
「……褒め言葉?」
「一応?」
疑問形?
「疲れましたね。神宮寺さん行きたい所は?」
「特にないけど。君は……ないよね」
「ご名答。ではこちらに」
神宮寺さんを人気のない無人の教室へ誘導した。
二人きりで文化祭を楽しむために。
何を楽しんだかは、ご想像にお任せを。




