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引きこもり虫とテスト

 神宮寺さんが帰った後は期末テストですよ。

 今いつかって? 七月上旬ですよ。蒸し暑いですよ。暑いの苦手。書庫は冷房完備もされてないし。わざわざ自分の部屋から扇風機持ってこなきゃいけないし。


「今回こそは風柳に勝つ!」

「ケアレスミスがある限り僕には勝てないよ月海」


 頑張れ。跡取りは成績優秀も求められちゃうもんね月海。

 私はとりあえず読書するのに差し支えのない点数取るから。

 高校に入ってからは単位制に変わってるから勉強を怠ればすぐに留年。

 だから今まで遊びほうけてた人もこの時期は勉強シーズンに入る。

 だから私をいじめる人も少ない。

 月海のせいもあるんだろうがそこは無視。


「でも何で高二になって家庭科がなくなるのよ。専門学校行くまでになまっちゃうでしょうが」

「全員が被服系に行くとは限らないからね。でも工芸はあるでしょ?」

「編み物ばっかで洋服とか作らせてくれないの」


 洋服作れんの!? へえ、売り物にできんじゃん。

 あ、なんだかんだ言って私が着てる服の半分以上は月海が作ってるものか。細かいとこは御子柴おばさんがやってるけど。

 そんなことより華ちゃんに過去問貸してあげないと。高一はビビるくらい主要科目多いもんね。教科が枝分かれしてるもんね。


「凛音。国語わかんない。この人何が言いたいの?」

「それを考えるのが国語なんだけど」


 根本的なところからかい。

 それでよく文系に入ろうと思ったな。古文もあるぞここ。

 今年は筆記を多用させる先生だぞ。


「でもほんとにかっこよかったね神宮寺さん。男でも憧れる美形だよ」

「あんたは無理だから諦めな風柳」


 玉砕。女子力高めでも見た目は平均的だからね風柳。

 決して悪いわけではないんだけど。

 いや神宮寺さんがゲイでない限り無理だがな。


「いいもん。月海はテストで痛い目見ればいいよ。ケアレスミスばんばん取ってね」

「むかつくわー」


 高校生の男の子が「もん」とか言わない。

 はいはいそうだね。

 ほら、十分も経ってんのにまだ二問しか解けてないよ。

 徹夜慣れてない人は大変でしょうが。

 その後、華ちゃんも加わって主要教科全てをほぼほぼ完璧に仕上げたのだった。




「それでは現国の試験開始!」


 先生の合図で一斉にプリントが表にされる。

 これ速攻で寝る人いるよね。何してんの。もう諦めてるの? もっと熱くなれよ!

 現国の範囲は中島敦の『山月記』と評論。それに漢字問題が三十点分。

 応用もあるけどそれは後回しでまずは一番取りやすい漢字から。

 うちの学校では三十点未満が赤点となるが、つまり他の箇所を全て間違えたとしても漢字が全問正解だとしたらそれで赤点回避ということだ。

 そう易々と取れたらおかしいけどね。だって普段の学生が使わないような漢字が多数だよ。

 だから私は漢字から行うことにしてる。

 えーっと安寧(あんねい)既存(きそん)女郎花(おみなえし)……うわ、出題者いじわる。読みが少ない! しかも女郎花とか「おんなろうはな」なんて言うやつ現れるよ絶対。

 そんなこんなで色々ツッコミながら解いていく。


「終わり。そこまで」


 終わった終わった。

 次は……地学か。そこかしこから聞こえてくる落胆の溜息はこの際無視だ。

 P波にS波。初期微動、カルデラ……横文字がぁぁぁぁ!! 教科書叩きつけたくなった。

 こんな感じで数学、社会、英語──四日間、地獄の五十分を耐え抜いたのだった。




「よーしテスト返すぞ。順番に取りに来い」


 黒板に最高と最低、平均点が書かれる。

 現国三点かよ。読みしかあってなかったのか? いや「女郎花」を読める確率は少ない。記号問題を当てずっぽうだな。

 で、私は……お。漢字は満点だ。

 それから引くと記述とかマークで五十三点分か。計算はご自由に。恥ずかしくもない。

 他も平均超えだったし、まあこんなものでしょ。問題は月海。イライラオーラを出すな。また風柳に負けたんかい。


「後一点。読みさえあってれば」


 そっちね。ご愁傷さま。ん? 


「……ちっ」


 お馴染み佐藤くんに睨まれた。舌打ちされた。

 だから何したよ私!

 教えてくれないとこの私でもモヤモヤするんだぞ。


 よし。聞いてみよう。


「佐藤くん」

「……あ?」


 好感度ひっくっ!! 舌打ちも無視もまた困る。だけどこんなとこで怒鳴られても嫌だし。


「今日屋上に来てくれない? 私だけで月海とかは連れてかないから」

「あ? なんで……」

「あなたが睨んでる理由を知りたいから。じゃあね」


 来るか来ないかはこの際置いとく。

 とにかく私は事情を月海と風柳に話し、放課後一人で佐藤くんを待った。

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