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29 ロマンチックな告白ってなんだ

「ロマンチックな告白ねぇ……」


 渚の部活前の少し空いた時間を使って考える。ただそれなりに時間は経っているため、これ以上ここにいたら部活の時間にならないか? と思ったのだが、どうやら活動は緩いらしい。

 

「そうなんですよ。やっぱり一世一代の告白になると思うので、いいものにしたいじゃないですか」


 その言葉玲央からも聞いたな。

 ここまで思考が似ていると、ほんと早く付き合ってくれと思うしかない。


「うーん……実際告白したことないからわからないんだけど……幼馴染なら、思い出深い場所で告白するのはどうだろうか」


「……確かに。それありです。もらいです」


「それはよかった」


 ほっと胸をなでおろす。

 この手の相談において俺の助力は皆無なのでどうにか助けになっただけでも良かった。


「そして一番の問題である告白の言葉なんですけど……先輩、実験台になってくれません?」


「その言い方は危険な行為をする感じがぷんぷんだぞ」


「ある意味危険な行為ですね。私告白なんてしたことないのでどんな暴挙に出るかわかりませんから」


「告白で暴挙に出たら武道系女子高校生として世の人を守った方が良い」


「先輩までそんなことを! 私はただの恋する乙女ですよ!」


 ではなぜ拳を力強く握っているんだ?

 もしかしたら無意識のうちかもしれない。いろいろと言葉を慎重に選んでいかないと。


「ではとりあえずスタンダードな告白から」


「お、おう」


 俺が許可をする前に、どうやら実験が開始されるらしい。

 なんだか緊迫した雰囲気に、実験とはいえ緊張が走る。


 渚は座ったまま俺を上目づかいで見てきた。



「先輩。好きです」



「……いいんじゃないか? というか、気持ちが伝わればもはや告白の言葉なんてなんでもいいと思うぞ」


「そうですかね。私としてはもう少し工夫をしたいんですけど……では、アレンジバージョンでいきます」


「お、おう」


 今度は立ち上がって、俺の目の前に立ち、膝をついた。

 すっと手を差し伸べ、俺をうるうるとした瞳で見つめる。



「僕と駆け落ちしないか」



「それはあまりにも違いすぎる。というか一人称僕じゃないだろ」


「……すみませんこれはネタです」


「真面目に考えろ」


 もっと余裕がないのかと思っていたが、渚はリラックスしている様子。

 何やらふざけ始めているし、実際俺をおもちゃに遊んでいるんじゃないか? とさえ思う。


 それにここで結論は出なさそうなので、ここらで話を完結させることにした。


「恋愛経験のない俺が言うからあれなんだが、渚の告白は玲央に響くと思う。さっきのスタンダードバージョンで、俺でもちょっとドキッとしたくらいだからな」


「そう……ですかね」


「そうだ。だから、あれでいいと思うよ俺は」


 確かに話を完結させようとは思っているが、これは俺の本心だった。

 そもそも恋愛経験のない俺が考えたところでロマンチックな告白なんて思いつくわけないのだが、俺はシンプルイズベストだと思うのだ。


 なので、これが俺ができる助言の最高級だった。


「それに、ロマンチックな告白がしたいなら思い出深い場所で告白するだけでもロマンチックじゃないか? 夕方とかにしたらもう十分だと思う」


「……確かに。ある意味言葉に凝るよりも雰囲気で伝えて、最小限の言葉を言う。それにあたりは夕日に染まってて……ロマンチックです!」


「だろ?」


 我ながらいい意見を出せたと思う。

 その状況を想像すれば、映画にありそうなワンシーンだった。俺はもしかしたら何気にロマンチストなのかもしれない。


 いや、それは思い上がりだな。

 

 ただ、渚が目をキラキラさせて「これだこれ!」と嬉しそうに呟いているので、何よりだ。


「先輩ありがとうございます! 私、なんだか告白が楽しみになってきました!」


「そうか。ほんと俺は応援してる」


 応援しているといっても、両想いなのだから心配することは何もないのだが、それは言わない。言ったらずるいからな。


「じゃあ部活行ってきますね! 先輩ありがとうございました!」


「おう。頑張ってこい」


 体育館に向かっていく渚を見届けて、俺も帰るかと腰を上げる。


 その時、スマホが振動した。

 何かと思えば玲央からメールが来ているようで、まさかな、と思う俺だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] なるほどレオからも同じ感じで相談されて 「「好きです!」」 「「あれ?」」 「……あいつのせいだ」ってなるんですね。はい。
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