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26 美人なお姉さんは奇想天外

 翌日の月曜日。

 今日学校が午前中で終わったので早く家に帰ると、なぜかそれを察した朱里さんが俺の家にインターホンを押してきた。


 野生の勘すごいなぁなんて思いながら朱里さんをいつも通り家に上げ、二人でコーヒーを飲む。

 そんな何気ない時間を過ごしているとき、ふと思った。


「そういえば僕、朱里さんの家行ったことなかったですよね」


「あぁー確かにね。私の家入りたい?」


「んーまぁ、僕の家だけってのはフェアじゃないですよね」


 それに、朱里さんの家はどうなっているのか想像がつかない。

 おそらく、興味があるのだろう。


「あらら照れちゃって~素直にきたいって言えばいいのになぁ」


 にんまりとした表情で俺を見てくる。


「……入らせてください」


 羞恥心よりも、好奇心が勝った。


「そっかぁ。私の家に興味があるのかぁーふぅーん」


「興味があるなんて一言も言ってませんよ」


「えっ違うの?」


「…………」


 そんな純粋な目で見られたら、嘘がつけるわけがない。

 ほんとに朱里さんは巧妙だなと思う。


「……少しだけ、興味があります」


「へぇ~そうなんだぁ~興味あるんだぁ~」


「少しだけですよ」


「もぉ~直哉君は照れ屋さんだなぁ」


 そういいながら俺のわき腹をつついてくる。

 やはり俺は攻められるのがダメだなと思う。朱里さんは心底楽しそうな顔をしているが、こっちからすれば地獄だ。

 恥ずかしさのあまり息が詰まりそう。


「じゃあいこっか。でも、そんなにいいところじゃないけどね? でも、私のベッドの匂いをかぐことは特別に許可してあげるよぅ」


「そんなことしませんから!」


 朱里さんでもあるまいし、そんなことをできるわけがない。

 

 そんなこんなで、俺の部屋を出て隣の朱里さんの家に入った。

 言わなくてもわかると思うが、女子の部屋に入るのはもちろん人生初めての経験。

 入っちゃいけないような感じがあって、入るのを少しためらったけど、何とか入ることができた。


 入った瞬間、朱里さんのいい匂いが鼻に飛び込んできた。

 ただ隣の家ってだけなのに、雰囲気が全然違う。


「さぁー入った入ったー」


 朱里さんの背中についていく。

 

 端的に言って、朱里さんの家は俺の家とそこまで景色が変わらなかった。

 最低限の家具と、あとは服がクローゼットに入りきらなかったのか部屋の中にちらほら見えるくらい。


「ほんとなんもないでしょ?」


「そうですねー」


 もう一度部屋を見渡す。

 

 朱里さんの部屋は、いかにも女の子らしい部屋か、こんな風に無機質で機能性だけを重視した部屋かのどっちかだと思っていたのでおおよそ予想通りではあった。

 ただ、なぜこんなにもいい匂いがするんだ?


「さっ、今すぐベッドにダイブしてクンカクンカしていいんだよ? むしろ推奨‼」


「しませんよ。そんな変態みたいなことできるわけないじゃないですか」


「ってことは……私変態ってこと⁈」


「今気づいたんですね。でも安心してください。変態の域超えてますから」


「えぇー……じゃあもう変態でいいから押し倒してもいいかな?」


「なんで開き直ってるんですか」


 俺がそう言うと朱里さんはけらけらと笑った。

 全く、相変わらずである。そろそろ学習してほしいんだけど、たぶんこの流れを楽しんでるんだろうなと思う。

 

 でもおかげでさりげなく受け流すスキルを体得した。

 こんなスキル朱里さんにしか使えないけど。


「コーヒーにする? お茶にする? それとも……わ・た——」


「お茶で」


「……きぃぃぃ‼ 最近の直哉君がつまらないよぉ~!」


 ぷりぷりしてキッチンへと向かっていく。

 

 こんな明らかにおかしい会話に対応できるようになっている自分がなんだかむなしかった。


 数分後、キッチンからコップを二つ持って朱里さんがやってきた。

 そして、なぜか目の前でそのコップの中に入っているお茶を飲み干し、コップを机に置いて俺の膝に座る。



「はい。私です!」



「……は?」


「はい! 私です!」


「……え?」


 まさかのオーダー無視。

 あまりにも予想の斜め上回答に、「は?」か「え?」しか出てこない。


「早くいただいちゃっていいんだよ! ほら、私だよ‼」


 俺はあきれたようにため息をついて、放置しておいた。

 するとさらに機嫌を損ねたのか、俺の膝の上でじたばたし始める。


「私来たんですけど~! ちょっと無視しないでよ~!」


 ぶっ飛んだ行動に、俺はため息をつくしかできなかった。




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