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第2話 召喚されたらクライマックスな場面に遭遇



「くそっ!」

「ふはははは! お前ら人間の力はこんなものか!」

「ちくしょうが!」

「効かぬ、効かぬぞ! その程度の剣で我を倒そうなぞ……」

「これでどうだ!」

「む、こうるさいハエがいるようだな。だが、残念ながら我を傷つける事は敵わんな?」


「くっ……渾身の魔法が弾かれるなんて」

「まだなのクラリッサ?! このままじゃ!」

「……おかしい、勇者召喚はもう既に、成功しているはずなのに!」

「なんだと!? だったら何故、勇者は現れん!」

「ゼルマ、手伝ってくれ! 俺一人じゃもたない!」


「不甲斐ないわね! それくらい一人で持ち堪えなさい……よ!」

「ふふふ、二人で来たとて同じ事。いつまで我の攻撃に耐えられるかな?」

「くっ、魔法だけでなく剣まで使いこなすとは……! クラリッサ、もう一度だ。もう一度勇者召喚を! 俺達だけじゃ……」

「もうできないのサムエル! 勇者召喚は一度きりの切り札よ! 一度使えばもう次は無いわ!」


「だったら、何故勇者は来ないんだ!」

「私にもわからないわよ! でも、召喚に失敗したなんて事はあり得ないわ!」

「言い争ってないで、援護してくれサムエル!」

「アンドレ! くそっ!」

「ふはははは! 効かぬ、効かぬぞ!」


「あのー?」


「うるさいわね! 今別の事に構ってる暇はないの! ……勇者召喚が駄目なら、別の召喚を……!」

「何者を呼び出しても、無駄な事。我に敵う者なぞおらぬわ!」

「きゃあ!」

「ゼルマっ! くそ、サムエル頼む!」


「あのー、すみません?」

「あらあらまぁまぁ」


「アンドレ、矢に魔法を込めて撃つ、合わせろ!」

「わかった!」

「何をコソコソ話しておる……さっさと諦めたらどうだ?」

「ここまで来て諦められるか! 悪は滅ぼすのみ! はぁぁぁぁ!」

「魔王を倒して、俺は名声を得るんだ! 没落した我が貴族家再興のために!」

「私だって……莫大な報奨金を手に入れて、悠々自適に暮らすんだから!」

「召喚士として……名前を後世に残したいのよ!」

「無駄な事を……人間の夢という奴か? かくも儚いものよなぁ……?」


「えーっと、どうしようか?」

「そうねぇ……」


「行くぞ、サムエル! ゼルマ! クラリッサ!」

「「「応!」」」


「すみませーーーん!」


 香梨奈さんの叫びで、クライマックスに盛り上がっていた全員の動きがピタリと止まった。

 召喚されてる途中だ、と言った神様の声が聞こえなくなった後、光に包まれて気付いたらここにいた俺達。

 どうやら、真剣に戦っている様子だけど……俺の声を聞いても、誰も聞く耳もたなかったのに香梨奈さんお声には反応した……もっと大きく叫ばないといけなかったか?


「何だ、お前達は。この者達の仲間か?」

「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」


 俺達がいるのは、戦ってる人達の後ろ……大きな広間の一番後ろだ。

 背中側には扉があるから、多分、入り口になるんだろうな。


「だったらなんだ? 何故ここに来た?」

「何故と言われましても……」


 広間の一番奥、豪奢な椅子の前に立つ大男。

 黒いマントを羽織り、頭からは左右に大きな角が生えているのが見える……本当に地球じゃないんだな、ここ。

 その大男が、俺と香梨奈さんを睥睨するように見て、言葉を掛けて来る。

 間にいる男女の4人は、こちらを見ながらポカンとしている……邪魔したかな?


「えーと、何故だか知りませんが……召喚とやらで呼ばれたみたいで……」

「何だと!?」

「何ですって!」

「勇者、勇者が現れたのか!」

「やっぱり成功していたのね! でも……何で二人……?」

「勇者とな……? しかし、我に通用するとは思わんがな……」


 移動している最中、神様の声で召喚されたと言っていたから、それは間違ってないだろう。

 俺が、この場にいる人達に召喚された事を伝えると、ポカンとしていた4人組がにわかに騒ぎ出した。

 ……勇者……ってなんだ?


「ふ……勇者の力とやら、試してみよう!」

「危ない!」


 突然、奥の大男の姿が掻き消え、香梨奈さんの前に現れた。

 確か……クラリッサさん、だっけ?

 そう呼ばれてた人が叫ぶが、それに構わず大男は、腕を香梨奈さんの前にかざした。


「あらあらまぁまぁ……」

「ふ、私の動きにも反応できないとは……勇者とやらは随分と暢気なのだな? せめて苦しまぬよう、消し飛ばしてやろう! ダークネスボルト!」

「香梨奈さん!」



 突然目の前に現れた大男に、香梨奈さんは戸惑ってかいつもの口癖を言うばかり。

 大男が叫び、かざした手から黒い稲妻のようなものが放たれる!

 香梨奈さんの名を呼んで、手を差し伸べるが、無情にもその稲妻は香梨奈さんを飲み込んでしまった。


「ふははははは、勇者なぞこの程度。やはり私に敵う者などいないの……だ?」

「あらあらまぁまぁ」


 香梨奈さんを飲み込んだ稲妻は、突然巻き戻したように香梨奈さんから離れ、笑っていた大男の方へ向かった。


 ズガァァァァァン!


「ぬわぁぁぁぁ!」


 稲妻が大男に触れた途端、凄まじい轟音と爆発が起こり、大男を弾き飛ばした。

 驚いたのは、爆発の衝撃が全て大男の方へ向いていた事だ。

 ……爆発に指向性を加えるのって結構難しい事だったと思うけど……これも魔法なのかな?


「魔王の魔法を跳ね返しただと!?」

「凄いわ、これが勇者の力……」

「これなら勝てるぞ!」

「禁断の勇者召喚……成功して良かった……」

「おい、クラリッサ!」

「召喚で力を使い果たしてたのね!」

「寝かせておけば良いだろう。こちらには勇者がいるのだからな!」


 香梨奈さんが稲妻を跳ね返し、大男を弾き飛ばした事で、戦っていた4人が沸き上がった。

 ……1人気絶したようだけど、大丈夫かな?


「あのー、大丈夫?」

「香梨奈さん!?」


 香梨奈さん、一応その大男は香梨奈さんの事を攻撃して来たんだけど?

 しかし香梨奈さんは、そんな事もおかまいなしに、大男の所へとことこと無防備に近付いて声を掛けている。

 大男は、爆発の衝撃で飛ばされ、大の字になって壁にめり込んでいた。

 ……壁って、あんな風に引っ付く事ができるんだなぁ。

 床から数メートル離れた場所にめり込んで、落ちて来ない大男を心配する香梨奈さん。


「ふっふっふっふ……我の魔法を跳ね返すとは。さすがは勇者、という事か……。しかし!」

「え?」

「我は魔法だけでは無いぞ!」

「きゃあ!」

「香梨奈さん!」

「魔法が跳ね返されるのであれば、剣で切り刻んでくれよう!」


 壁に張り付きながら笑い出した魔王は、引っ付いていた体を壁から引き剥がし、心配して様子を見ていた香梨奈さんの前に降り立ち、あろうことかその腕で殴り飛ばした。

 マントや着ている服は、爆発の衝撃でボロボロになっているが、破れた隙間から覗く筋肉質な体には、傷一つ付いていない。

 そんな太い腕で香梨奈さんを……!

 しかも魔王は、どこからか剣を作り出し、それを香梨奈さんに向けて振り上げた!

 慌てて駆け寄ろうとするが、俺の足じゃ間に合わない……。


「身体強化(極限)!」


 ふと頭に浮かんだフレーズ。

 それを脳内で唱えると共に、口にも出して叫んだ。

 その瞬間、体が突然軽くなり、1秒もかからず数メートルの距離を移動した!


「香梨奈さんに……触れるなぁぁ!」

「何!? ぐあ!」


 走ったそのままの勢いで、剣を振りかざしていた大男の頬をグーで殴る。

 声を上げながら、俺の拳を頬に受けた大男は、その場から吹き飛ばされ、空中できりもみ回転をしながら、広場の奥にある椅子へと激突した。


「香梨奈さん! 大丈夫!?」

「……いててて……なんとか大丈夫よ」

「良かった……」


 大男を殴り飛ばしてすぐ、香梨奈さんへと駆け寄る。

 殴られたように見えたけど、かすっただけなのか、傷一つ付いてない香梨奈さんはすぐに立ち上がった。

 とは言え、さすがに痛かったのだろうね、顔をしかめてる。


「おい、魔王を殴り飛ばしたぞ……?」

「ええ。なんて力なのかしら……」

「回転もすごかったな……30回転はしてたんじゃないか?」

「……勇者召喚……むにゃむにゃ……」


 俺が大男を殴り飛ばした事に対して、呆然としながら話してる人達。

 俺も、あんな威力が出るとは思わなかったからなぁ……自分でもびっくりだ。




読んで下さった方々、皆様に格別の感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


作品を続ける上で重要なモチベーションアップになりますので、どうかよろしくお願い致します。

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